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番外編 2

春の試飲会 (5)

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「瑛士、こちらは鳴瀬さんと白石さん。お酒を知りたいって今回参加されました」

 なんとか自分の役目を果たして、お猪口に残ったお酒を飲み干した。ん?  役目?  役目ってなんだ。なんかもう、結構頭の中がぐるぐるしているなぁ。

「私、お水もらいにいくね」

 限界を感じ、一息つきたくて輪から抜け出す。紹介したのだから、あとはもう瑛士に任せた。

 鈴木さんが見つからずに蔵元の営業さんにお水をお願いしたら、なぜかグラスに大吟醸まで注いでもらった。恐縮しつつ受け取って輪に戻ると、すでに瑛士は二人に馴染み、和やかな会話が続いている。瑛士と鳴瀬さん、どちらも人当たりがよくて対人スキル高いから、こういう場で安心して任せられる。

 瑛士と白石さんが話している姿にほっとして、グラスに口を付けた。うん。やっぱり大吟醸は美味いなぁ。そして、三つ揃えスーツの瑛士はやっぱり様になっていて、格好良い。

「べた惚れですね」

 そんな声が聞こえて、横目でちらりと隣を見た。鳴瀬さんもニコニコしながら瑛士と白石さんを眺めている。それにも関わらず、その台詞。

「ええまぁ」

 お恥ずかしながらも、べた惚れです。自分の彼氏を見てこんなドキドキしている姿を他人に指摘されるって、なんて羞恥プレイだ。

「あ、そっちじゃなくて」
「そっちじゃない?」

 ん? なんのことだ?

「いや、そっちがというよりもっと、いや、……いいんじゃないですかね」

 途中まで説明しようとしたのに急にその気が無くなったらしく、雑に切り上げられてしまった。気が付くと、瑛士と白石さんもこちらを眺めている。私と鳴瀬さんも二人を眺めていたので、おあいこだ。

「遠藤さんと大浦さんのお陰で楽しくお酒が飲めました」

 お酒で頬が染まった白石さんが、満足そうな笑顔でそう言ってくれた。ああ、やっぱり可愛いなぁ。

「こちらこそ、構っていただきありがとうございます」

 一人で飲むのも好きだけれど、こうしてこの場で出会った人と楽しく語り合いながら飲むお酒も、好きだ。

 その後も試飲会が終わるまで四人で楽しく飲み、最後はメールアプリで互いを登録し合って、お開きとなった。大阪に行ってしまうけれどこっちに来たときにはまた一緒に飲みましょう、との鳴瀬さんの言葉に再会を約束し、二人とは店の前でお別れする。

「はい」

 いつものように手を差し出され、指を絡めて握りあった。もうポケットの中には手は入れない。

「暖かくなったね」
「そうだね」

 そうして春の宵を感じながら、瑛士のマンションへ向かって歩き出した。



.。o○○o。.。o○○o。..。o○○o。

カメオ出演
紺原つむぎ 様作
【最後までして、鳴瀬さん! -甘党編集と金曜22時の恋愛レッスン-】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/362611170/153713052
より、鳴瀬 祐希 様、白石 琴香 様

ありがとうございます!
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