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その3. コンビニの君
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美晴を初めて見かけたのは二ヶ月前。社員食堂のメニューに飽きたという陽平に連れられて、会社から少し離れた大き目のコンビニに行った時のことだった。
普段行くコンビニとは系列が違うため、商品も目新しい。すっかりテンションの高まった陽平のトークにうなずきながら選んでいたら、視線を感じた。
「おい、柿村。俺達はしゃぎ過ぎ」
そう言いながら視線の元を目で追うと、女性がこちらを見て微笑んでいた。肩までの黒くてさらさらとした髪の毛。少し垂れ気味の目元。ぽってりとした唇の端が上がって、柔和な雰囲気を醸している。
本当は、騒がしい陽平と健斗の二人をただ眺めていただけだったのかもしれない。だが健斗には、彼女の眼差しは天使の微笑みと同等に感じられた。その見た目と無愛想な表情から、今まで怯えられたりせいぜい愛想笑いをされたことはあっても、見知らぬ女性から優しい表情で見られた経験などなかったからだ。
あの笑顔が見たくて、翌日も一人でコンビニへと向かった。彼女はいなかった。そしてその翌日も。彼女をもう一度見ることができたのは、きっかり一週間後の水曜日だった。陽平によって『コンビニの君』と名付けられた彼女を見るため、さらにその次の週の水曜日にコンビニへと行ったが、その週は会えなかった。ランチタイムにもかかわらずコーヒーだけ飲んでいることから、コンビニに来るのはその時次第なのだろう。
とはいえ諦めきれない健斗を面白がった陽平が同行すると言い出し、毎週水曜日はコンビニ買い出しが習慣となったのがひと月前。そこからは、なぜか毎回彼女を見かけるようになった。彼女の座るイートインコーナーに一番近いおにぎりのコーナーで、いかにも平和な具の話で盛り上がる。そうして警戒心を起こさせないようにしながら、そっと姿を盗み見るのだ。やっていることはまるで思春期の学生だ。二十五歳にもなるというのになにをやっているのかと自分でも思わなくもないが、でも止められなかった。週に一回彼女の姿を見ることが健斗にとってささやかな、そして最大の楽しみとなっていた。
そしてそんな自分に訪れた幸運のアクシデント。そのきっかけがこの眼の前にいる陽平のちょっかいだと思うとなんだか微妙な気持ちになるが、今はそんなことにこだわってはいられない。
「陽平、この近辺でお前が勧める店とかない?」
「なんでお互いの会社のある場所で、わざわざ飯食おうとするかなぁ」
普段行くコンビニとは系列が違うため、商品も目新しい。すっかりテンションの高まった陽平のトークにうなずきながら選んでいたら、視線を感じた。
「おい、柿村。俺達はしゃぎ過ぎ」
そう言いながら視線の元を目で追うと、女性がこちらを見て微笑んでいた。肩までの黒くてさらさらとした髪の毛。少し垂れ気味の目元。ぽってりとした唇の端が上がって、柔和な雰囲気を醸している。
本当は、騒がしい陽平と健斗の二人をただ眺めていただけだったのかもしれない。だが健斗には、彼女の眼差しは天使の微笑みと同等に感じられた。その見た目と無愛想な表情から、今まで怯えられたりせいぜい愛想笑いをされたことはあっても、見知らぬ女性から優しい表情で見られた経験などなかったからだ。
あの笑顔が見たくて、翌日も一人でコンビニへと向かった。彼女はいなかった。そしてその翌日も。彼女をもう一度見ることができたのは、きっかり一週間後の水曜日だった。陽平によって『コンビニの君』と名付けられた彼女を見るため、さらにその次の週の水曜日にコンビニへと行ったが、その週は会えなかった。ランチタイムにもかかわらずコーヒーだけ飲んでいることから、コンビニに来るのはその時次第なのだろう。
とはいえ諦めきれない健斗を面白がった陽平が同行すると言い出し、毎週水曜日はコンビニ買い出しが習慣となったのがひと月前。そこからは、なぜか毎回彼女を見かけるようになった。彼女の座るイートインコーナーに一番近いおにぎりのコーナーで、いかにも平和な具の話で盛り上がる。そうして警戒心を起こさせないようにしながら、そっと姿を盗み見るのだ。やっていることはまるで思春期の学生だ。二十五歳にもなるというのになにをやっているのかと自分でも思わなくもないが、でも止められなかった。週に一回彼女の姿を見ることが健斗にとってささやかな、そして最大の楽しみとなっていた。
そしてそんな自分に訪れた幸運のアクシデント。そのきっかけがこの眼の前にいる陽平のちょっかいだと思うとなんだか微妙な気持ちになるが、今はそんなことにこだわってはいられない。
「陽平、この近辺でお前が勧める店とかない?」
「なんでお互いの会社のある場所で、わざわざ飯食おうとするかなぁ」
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