【完結】一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方

櫻屋かんな

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その16. 解禁の勧め

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 ついむっとして反射的に心の中でつぶやくと、健斗は慌てて二人から視線を逸らす。

 デパ地下で美晴の元彼との再会直後、混乱に乗じて手をつなぐことが出来た。一夜の戯れからひと月ちょっと。少しずつ積み上げていった信頼関係で、ようやく直接触れることを許してもらえるようになったのだ。出来ればここからさらに距離を縮めて行きたいところだったが、ことごとくタイミングが合わずに、あれから二週間も会うことが出来なかった。そして今、ようやく美晴に会うことが出来たにも関わらず、なぜか余分なものがついている。

「女の子相手に嫉妬か、ケンケン?」

 その言葉にビクリとして、陽平に視線を向ける。

「残念ですが、私も今日は美晴さんを離しませんよ」

 なぜか新菜に高らかに宣言され、説明を求めるようにもう一度陽平に視線を向ける。陽平はそんな健斗を面白がるように、ニヤニヤと笑って見返していた。

 そもそも今日のこの会は、陽平に美晴の後輩を紹介するという目的で開催されたのではないだろうか。そっち方面での働きを放棄して、なぜこの状態を彼が楽しんでいるのか、健斗には理解不能だ。

「新菜ちゃん、分かったからそろそろ歩きだそう」
「はーい」

 美晴に声をかけられ、新菜がようやく腕を離す。そうして四人は公園へと向かった。



 バーベキュー会場につくと、受付で予約を確認し、料金を払って場内に入る。健斗のイメージでは河原やキャンプ場に食材を持って集まり、設営地を作って火を起こすという流れだったが、バーベキュー会場というだけあって、そんな諸々は全て事前に準備がされていた。指定されたテーブルにはコンロや食材が綺麗に並べられている。飲み物は敷地の一角にあるドリンクコーナーに取りに行くシステムだ。

「本当に、手ぶらで大丈夫なんだな」
「手軽に楽しみたいからね」
「そういうもんか」

 なにもかもお膳立てされてのバーベキューが果たして面白いのか、正直言うと健斗にはピンと来ない。普通に焼肉屋に行っても良かったのではないかと思うのだが、周りの客のはしゃぐ声や公園の向こうの湾岸の景色、青い空を見回して、その考えを改めた。屋外の開放感だけでも、確かに気分は盛り上がってくる。

「健斗、グリルの火起こし出来る? 出来なければスタッフ呼ぶけど」

 陽平に聞かれ、あっさりとうなずいた。

「大丈夫。出来る」

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