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第二十二章 愛を確かめる
第十話 都からの連絡
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(アレは一体何者だ)
ラーシェの身体から、ようやく震えが収まったのは、彼らが金髪の若者を連れて部屋を出ていった後のことだった。
それまでは幼い子供のように怯えきって、ラーシェは彼を恐れる気持ちがなかなか収まらなかった。
黒い髪に茶色の瞳の、どこか凛とした十代半ばほどの少年だった。
仔犬が先導のように部屋に飛び込んで来た後に、やって来た少年。
彼の一瞥で、瞬間、心臓がその手に握られたような、なんとも言えぬ悪寒がした。
彼に逆らうことは許されない。頭を垂れるべき、畏怖してしかるべき存在だった。
ラーシェが知る、相手を威迫できるほどの高位魔族といえば、古えからの吸血鬼であるレブランである。でも、あれほどの圧は、そのレブランにも感じたことのないものだった。
(アレは一体誰なんだ。何なんだ)
魔を帯びていることを感じたために、間違いなく彼は魔族だろう。
だけどその正体が分からない。さぞや名のある魔族であることは分かる。
吸血鬼族? それとも悪魔族?
だけど、悪魔族が地上に顕現している話は聞いたことがない。
(この僕が、こんな怯えきってしまうなんて)
苛立ちから、震えているラーシェを介抱しようとしていた召使の男をぞんざいに手で押す。裸体に服をまといつつ、苛立ちに舌を打つ。
せっかく連れてきたあの若者も、連れ去られてしまった。
裸に剥いて、いよいよ楽しもうかというところで彼らが取り返しに来たのだ。
返す返すも腹立たしい。
宿で好き勝手に楽しむ気持ちも失せ、ネリアの待つ別荘に戻った時、彼の帰宅を待ち構えていたネリアはラーシェに淡々とした口調で報告したのだった。
「都から、連絡が来ました。都に魔獣が再び現れて、大きな被害が出たということです。そして負傷者の中に、ハデス騎士団長が含まれています」
どうして彼が来ないのだろう
そう思って、彼のことを僕は疑い始めていた
自分のことををないがしろにしているのではないかと、怒っていた
僕は
僕のことを誰よりも愛していると言ったあの男を、疑ってはいけなかったんだ
ラーシェの身体から、ようやく震えが収まったのは、彼らが金髪の若者を連れて部屋を出ていった後のことだった。
それまでは幼い子供のように怯えきって、ラーシェは彼を恐れる気持ちがなかなか収まらなかった。
黒い髪に茶色の瞳の、どこか凛とした十代半ばほどの少年だった。
仔犬が先導のように部屋に飛び込んで来た後に、やって来た少年。
彼の一瞥で、瞬間、心臓がその手に握られたような、なんとも言えぬ悪寒がした。
彼に逆らうことは許されない。頭を垂れるべき、畏怖してしかるべき存在だった。
ラーシェが知る、相手を威迫できるほどの高位魔族といえば、古えからの吸血鬼であるレブランである。でも、あれほどの圧は、そのレブランにも感じたことのないものだった。
(アレは一体誰なんだ。何なんだ)
魔を帯びていることを感じたために、間違いなく彼は魔族だろう。
だけどその正体が分からない。さぞや名のある魔族であることは分かる。
吸血鬼族? それとも悪魔族?
だけど、悪魔族が地上に顕現している話は聞いたことがない。
(この僕が、こんな怯えきってしまうなんて)
苛立ちから、震えているラーシェを介抱しようとしていた召使の男をぞんざいに手で押す。裸体に服をまといつつ、苛立ちに舌を打つ。
せっかく連れてきたあの若者も、連れ去られてしまった。
裸に剥いて、いよいよ楽しもうかというところで彼らが取り返しに来たのだ。
返す返すも腹立たしい。
宿で好き勝手に楽しむ気持ちも失せ、ネリアの待つ別荘に戻った時、彼の帰宅を待ち構えていたネリアはラーシェに淡々とした口調で報告したのだった。
「都から、連絡が来ました。都に魔獣が再び現れて、大きな被害が出たということです。そして負傷者の中に、ハデス騎士団長が含まれています」
どうして彼が来ないのだろう
そう思って、彼のことを僕は疑い始めていた
自分のことををないがしろにしているのではないかと、怒っていた
僕は
僕のことを誰よりも愛していると言ったあの男を、疑ってはいけなかったんだ
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