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第1章 騎士団長と不吉な黒をまとう少年
第5話 一枚の絵
正面玄関の大きな花瓶に、僕はボルトから受け取ったバラを活けた。
執事のハンスも、白バラの見事さに満足そうにうなずいている。
考えてみると、屋敷に飾られている花は、白が多い。
それをハンスに尋ねると、ハンスは、ヴェルディが白が好きだからだと告げた。
そして、その日初めて、ハンスにヴェルディの部屋の奥にある小部屋にも白バラを活けるように頼まれた。
ヴェルディの自室の奥には、小部屋があって、そこには入らないように命じられていた。
ヴェルディの大切にしているものが置かれているからだと。
その部屋に初めて入らせてもらえるのだ。
「ルース君は、ヴェルディ様の専用従者ですからね。もう、あの部屋に入っても良い頃合いだと思います」
「……部屋には何があるんですか?」
「絵があるんですよ」
部屋の寝室の奥に小さな扉がある。鍵はかかっていない。
執事のハンスに連れられて、初めてその扉を開けて、部屋の中を見た僕は、驚いた。
窓のない小さな部屋だった。
正面には一枚の絵が掛けられている。
王立学園の制服を着ている若者たちが何人か集まっている絵だった。
懐かしい。
そう、王家の王子に頼まれて、わざわざ絵描きを入れて絵を描いてもらったことがあった。
当時、仲の良かった学生同士で集まったんだ。
そこには若きヴェルディもいたし、王家の王子達もいる。そして、前世の銀髪の僕の姿もあった。
絵の前には白い布のかけられた小さな祭壇があり、そこに銀製の花器があった。
僕は花器に水を注ぎ、持ってきたバラを活ける。
「前神官長のルーディス様は、自身の肖像画を一枚も残していなかったそうです。それで、この絵だけが彼の生前の姿を残していると聞いています」
僕は顔をハンスに向けた。
(え?)
「この絵は、第三王子ロベルト様が所有していました。ヴェルディ様はどうしてもこの絵が欲しいと言って、事変始末の褒賞にこれを望んだのです」
(え?)
僕は驚いて、そう、口をぽかんと開けていた。
褒賞に、わざわざ僕の絵を望んだ?
そこまでして、僕のことを悼んでくれたの?
ちょっとびっくりだ!!
僕が死んだ後は、さっさと僕のことなんて忘却の彼方へ追いやって、幸せな結婚生活でも送っているのかと思っていたのに。そこまであの事件の影響に囚われているとは思わなかった。
その後、ハンスから、定期的にこの小部屋を清掃して、花を活けるように言われた。
僕はうなずき、小部屋を後にした。
ヴェルディも彼の妹のロザンナも、過去に囚われている。
そう、まるで、それはいなくなってしまった僕のせいだというように。
十五年前に死んだ男のことを、どんなに仲が良かったとしても、いつまでも引きずることはいいことではない。
僕が望むのもおかしな話だったが、ゆっくりとでも、忘れてくれるといいのにと思った。
執事のハンスも、白バラの見事さに満足そうにうなずいている。
考えてみると、屋敷に飾られている花は、白が多い。
それをハンスに尋ねると、ハンスは、ヴェルディが白が好きだからだと告げた。
そして、その日初めて、ハンスにヴェルディの部屋の奥にある小部屋にも白バラを活けるように頼まれた。
ヴェルディの自室の奥には、小部屋があって、そこには入らないように命じられていた。
ヴェルディの大切にしているものが置かれているからだと。
その部屋に初めて入らせてもらえるのだ。
「ルース君は、ヴェルディ様の専用従者ですからね。もう、あの部屋に入っても良い頃合いだと思います」
「……部屋には何があるんですか?」
「絵があるんですよ」
部屋の寝室の奥に小さな扉がある。鍵はかかっていない。
執事のハンスに連れられて、初めてその扉を開けて、部屋の中を見た僕は、驚いた。
窓のない小さな部屋だった。
正面には一枚の絵が掛けられている。
王立学園の制服を着ている若者たちが何人か集まっている絵だった。
懐かしい。
そう、王家の王子に頼まれて、わざわざ絵描きを入れて絵を描いてもらったことがあった。
当時、仲の良かった学生同士で集まったんだ。
そこには若きヴェルディもいたし、王家の王子達もいる。そして、前世の銀髪の僕の姿もあった。
絵の前には白い布のかけられた小さな祭壇があり、そこに銀製の花器があった。
僕は花器に水を注ぎ、持ってきたバラを活ける。
「前神官長のルーディス様は、自身の肖像画を一枚も残していなかったそうです。それで、この絵だけが彼の生前の姿を残していると聞いています」
僕は顔をハンスに向けた。
(え?)
「この絵は、第三王子ロベルト様が所有していました。ヴェルディ様はどうしてもこの絵が欲しいと言って、事変始末の褒賞にこれを望んだのです」
(え?)
僕は驚いて、そう、口をぽかんと開けていた。
褒賞に、わざわざ僕の絵を望んだ?
そこまでして、僕のことを悼んでくれたの?
ちょっとびっくりだ!!
僕が死んだ後は、さっさと僕のことなんて忘却の彼方へ追いやって、幸せな結婚生活でも送っているのかと思っていたのに。そこまであの事件の影響に囚われているとは思わなかった。
その後、ハンスから、定期的にこの小部屋を清掃して、花を活けるように言われた。
僕はうなずき、小部屋を後にした。
ヴェルディも彼の妹のロザンナも、過去に囚われている。
そう、まるで、それはいなくなってしまった僕のせいだというように。
十五年前に死んだ男のことを、どんなに仲が良かったとしても、いつまでも引きずることはいいことではない。
僕が望むのもおかしな話だったが、ゆっくりとでも、忘れてくれるといいのにと思った。
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