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第2章 騎士団長と神の怒り
第15話 祝福を受けし騎士団
神官長ルーディスの姿が消えた後、騎士達は騎士団長ヴェルディの元にわっと集まった。
「あれは、あれはなんですか」
「ルーディス神官長の幽霊ですよね。団長は取り憑かれているんですか」
「おまっ、失礼なことを言うな。きっと団長をお守りする守護霊となられているんだ」
皆口々に好き勝手なことをいいながら、騎士団長の周りで喋っている。
団長は疲れた顔をしていた。
「……いいか、命令する。今見たことは、王都に戻ってからも口にするな。わかったな」
「どうしてですか」
「あんなすごい浄化をしたのですから、報告すべきでしょう」
「マリア王女が聖女として立っている中、前聖人のルーディス神官長の亡霊が現れて、東地域の浄化を行ったとか、それを報告したらどうなると思う。陛下は面白くないだろう」
「…………あ」
「いいな、報告を上げることを禁じる」
彼は厳しい顔でそう言った。
それから、ひどく苦しい顔で、言葉を絞り出すよう、こうも言った。
「あとで、皆に護りの品を配る。希望しない者は申し出てくれ。歓迎する」
「希望しない方がいいんですか」
「……護りの品は、ルーディス神官長の遺髪だ。いらないだろう、そんなもの。だから希望しない者は言ってくれれば」
「ええぇぇ、前神官長って、聖人認定受けた人ですよね。御利益抜群じゃないですか!! 団長それ持っていたから、さっきルーディス神官長が幽霊みたいに出てきたんでしょ。もちろん僕はもらいます!!」
副官のリステルは、飛び跳ねるようにして手を挙げていた。
「僕、みんながいらないなら、神官長の髪の毛、たくさんもらいますよ!!」
それには、ヴェルディ騎士団長の額に青筋が立っていた。
「一人、一本だ。絶対にそれ以上はやらん」
結局、騎士団の騎士達は全員希望した。
ヴェルディ団長は震える手で、惜しむように神官長の髪を分け与えていた。
断腸の思いという感じだった。
不思議なことに、ルーディス神官長の遺髪を持った騎士の剣は浄化の力を帯び、魔獣は今までよりも遥かに容易に倒せるようになった。
更に、ルーディス神官長が現れた時の光で、東地域は遥か遠くまで浄化されたようで、土地の穢れは払われていた。
魔獣の発生も大幅に減少した。取り残された魔獣を倒した後、騎士団は王都に戻ることを決めた。
東地域に派遣されたヴェルディの騎士団は無事に任務を果たすことができたのだったが、他地域に派遣された騎士団の中には壊滅しているものもあった。
補給が切れ、魔獣の群れに蹂躙された騎士団が多かった。
王都へ向かっていたヴェルディ達の騎士団も、救援要請を受ければそちらに向かい、他騎士団と合流した。
そうした中、ヴェルディ達の騎士団の騎士の剣が、浄化の力を持つことは驚きをもって迎えられた。
南地域に派遣された騎士団の、イーブリン騎士団長はヴェルディの騎士団の救援要請をしたものの一人だった。
彼は栗色の髪をした壮年の男で、ヴェルディの手を握り感謝の言葉を告げた。
「いやはや、本当に助かった。貴公の助けが無ければ、間違いなく全滅の憂き目にあっていただろう。ありがとう」
「間に合ってよかったです」
王都へ向かうルートに近い騎士団は、ヴェルディ達も急行することができたので救うことができたが、そうでない、北地域に派遣された騎士団は全滅しているという話だった。
イーブリン騎士団長は前王の弟の息子にあたり、侯爵家に婿入りしている。今までも何度か交流したことがある、感じの良い騎士だった。
「しかし、貴公の騎士団の者達の剣は、浄化の力を持つようだが、あれはどうやってできたのだ」
「……祝福を受けることができたのです」
「どうやって? 我々の剣も是非ともその祝福を受けたいと思っているのだが」
ヴェルディは心の中で血の涙を流していた。
もう、手許にあるルーディス神官長の遺髪もだいぶ少なくなっているのだ。
これ以上、分け与えたくない。
もう与えたくないんだ。
だが、そういうわけにはいかないだろう。生き残った騎士団は全滅した騎士団の地域に赴き、そこの魔獣を討伐しなければならない。
その頃には従者達に命じて、ヴェルディは守り袋を作っていた。遺髪を入れたその守り袋を十数点、イーブリン騎士団長に手渡した。
「……これで」
言葉少なに、目を伏せてヴェルディは守り袋を手渡した。
イーブリン騎士団長と騎士達は感謝の言葉を捧げたのだが、ヴェルディは悲しそうな目でそれを見つめていた。
もう、彼の手元に残る遺髪は、数本にまで減っていたのだった。
「あれは、あれはなんですか」
「ルーディス神官長の幽霊ですよね。団長は取り憑かれているんですか」
「おまっ、失礼なことを言うな。きっと団長をお守りする守護霊となられているんだ」
皆口々に好き勝手なことをいいながら、騎士団長の周りで喋っている。
団長は疲れた顔をしていた。
「……いいか、命令する。今見たことは、王都に戻ってからも口にするな。わかったな」
「どうしてですか」
「あんなすごい浄化をしたのですから、報告すべきでしょう」
「マリア王女が聖女として立っている中、前聖人のルーディス神官長の亡霊が現れて、東地域の浄化を行ったとか、それを報告したらどうなると思う。陛下は面白くないだろう」
「…………あ」
「いいな、報告を上げることを禁じる」
彼は厳しい顔でそう言った。
それから、ひどく苦しい顔で、言葉を絞り出すよう、こうも言った。
「あとで、皆に護りの品を配る。希望しない者は申し出てくれ。歓迎する」
「希望しない方がいいんですか」
「……護りの品は、ルーディス神官長の遺髪だ。いらないだろう、そんなもの。だから希望しない者は言ってくれれば」
「ええぇぇ、前神官長って、聖人認定受けた人ですよね。御利益抜群じゃないですか!! 団長それ持っていたから、さっきルーディス神官長が幽霊みたいに出てきたんでしょ。もちろん僕はもらいます!!」
副官のリステルは、飛び跳ねるようにして手を挙げていた。
「僕、みんながいらないなら、神官長の髪の毛、たくさんもらいますよ!!」
それには、ヴェルディ騎士団長の額に青筋が立っていた。
「一人、一本だ。絶対にそれ以上はやらん」
結局、騎士団の騎士達は全員希望した。
ヴェルディ団長は震える手で、惜しむように神官長の髪を分け与えていた。
断腸の思いという感じだった。
不思議なことに、ルーディス神官長の遺髪を持った騎士の剣は浄化の力を帯び、魔獣は今までよりも遥かに容易に倒せるようになった。
更に、ルーディス神官長が現れた時の光で、東地域は遥か遠くまで浄化されたようで、土地の穢れは払われていた。
魔獣の発生も大幅に減少した。取り残された魔獣を倒した後、騎士団は王都に戻ることを決めた。
東地域に派遣されたヴェルディの騎士団は無事に任務を果たすことができたのだったが、他地域に派遣された騎士団の中には壊滅しているものもあった。
補給が切れ、魔獣の群れに蹂躙された騎士団が多かった。
王都へ向かっていたヴェルディ達の騎士団も、救援要請を受ければそちらに向かい、他騎士団と合流した。
そうした中、ヴェルディ達の騎士団の騎士の剣が、浄化の力を持つことは驚きをもって迎えられた。
南地域に派遣された騎士団の、イーブリン騎士団長はヴェルディの騎士団の救援要請をしたものの一人だった。
彼は栗色の髪をした壮年の男で、ヴェルディの手を握り感謝の言葉を告げた。
「いやはや、本当に助かった。貴公の助けが無ければ、間違いなく全滅の憂き目にあっていただろう。ありがとう」
「間に合ってよかったです」
王都へ向かうルートに近い騎士団は、ヴェルディ達も急行することができたので救うことができたが、そうでない、北地域に派遣された騎士団は全滅しているという話だった。
イーブリン騎士団長は前王の弟の息子にあたり、侯爵家に婿入りしている。今までも何度か交流したことがある、感じの良い騎士だった。
「しかし、貴公の騎士団の者達の剣は、浄化の力を持つようだが、あれはどうやってできたのだ」
「……祝福を受けることができたのです」
「どうやって? 我々の剣も是非ともその祝福を受けたいと思っているのだが」
ヴェルディは心の中で血の涙を流していた。
もう、手許にあるルーディス神官長の遺髪もだいぶ少なくなっているのだ。
これ以上、分け与えたくない。
もう与えたくないんだ。
だが、そういうわけにはいかないだろう。生き残った騎士団は全滅した騎士団の地域に赴き、そこの魔獣を討伐しなければならない。
その頃には従者達に命じて、ヴェルディは守り袋を作っていた。遺髪を入れたその守り袋を十数点、イーブリン騎士団長に手渡した。
「……これで」
言葉少なに、目を伏せてヴェルディは守り袋を手渡した。
イーブリン騎士団長と騎士達は感謝の言葉を捧げたのだが、ヴェルディは悲しそうな目でそれを見つめていた。
もう、彼の手元に残る遺髪は、数本にまで減っていたのだった。
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