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第一章 前世の記憶

 ~前世、六歳 帝都の学園へ入学する~

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 帝都の学園に、僕はアレクと入学した。
 僕とアレクは同じ馬車で通い、学園にいる間は勉学に励む時から食事の時までいつも一緒だった。
 彼は優しく穏やかな人だった。気が付くと、その瞳は僕をいつも見ていた。
 その黄金の瞳は、言葉にせずとも雄弁に僕に愛を囁いていた。
 六歳の僕はそれを感じていた。

 いつも僕に優しい彼だったが、時々不満の声を漏らすことがあった。
 学園の図書館で魔法書に没頭していた時は、その本を取り上げようとした。
 僕が怒ると、彼は僕の頬に優しく口づけし、そうしながらもその本を僕の手が届かない棚にしまおうとする。
(彼は護衛騎士に命じて、僕の手が届かない一番上の棚にそれをしまうのだ。大人気ない!!)

 そういうことが何度も続くと、さすがに僕も苛々してしまう。

「どうしてそういう意地悪をするのさ」

「君が僕をないがしろにするからだ」

「本を読むことがどうしてないがしろにするということになるのさ」

「本を読みすぎだ」

「読みすぎじゃない」

「読みすぎだ」

「読みすぎじゃない」

 以下、エンドレスである……

 このことについては本当にわかりあえなかった。
 学園のない日は、屋敷にひきこもって大好きな魔法書(『魔法大全』第三巻を入手した)を読んでいると、屋敷にまで彼はやってきて、『魔法大全』を取り上げ、僕を馬車に乗せて皇宮へ連れていく。
 休みの日くらい好きにさせろよと叫ぶ僕の口を、彼は自分の唇で塞いだ。

 初めての口づけに、僕は目を丸くしていると、彼は舌を僕の口に入れ、僕の舌を追いかける。
 
「ん……んー」

 息苦しくて逃げようとする僕の後頭部を押さえつけ、決して逃がしはしない様子だった。
 同じ六歳児とは思えない、バカ力だった。

 口を離した時、僕は恥ずかしくて苦しくて、ゼイゼイと全身で息をついていた。
 彼はペロリと自分の唇を舐めると言った。

「君の唇は甘いね」

 そして、皇宮に着くまで、彼は何度も何度も僕の唇を奪い、抵抗する僕をそのバカ力で抑え込む。着いた時には僕はぐったりとしていた。
 その様子に驚いた女官達が、僕の寝室をしつらえ、その日、僕は初めて皇宮に泊まることになってしまった。
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