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第一章 俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい
第14話 なんの編集もまだしてませんよ
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「これ、ルンさんこれ見てください」
東京の会社に戻ってから、映像を撮っていたカメラマンが、パソコン画面を指さした。
そこには、一コマ一コマ動きが止まった細かな編集画面がある。
勇者君が岩の前に立ち、岩を真っ二つにしたあのシーンだ。
コマの一つ目は何も持っておらず、次の瞬間、唐突に右手に長い剣が握られている。そして次のコマがブレてよくわからなくなって、次のコマで岩に長い縦線が入る。その次のコマで縦線が広がり岩が二つに分かたれていく。
「……なんの編集もまだしてませんよ、コレ」
「…………勇者君の剣は突然出てきてるの?」
顎に手を当て、食い入るようにルンは画面に見入る。
「そうです。本当、突然右手に握っているんですよ。おかしいでしょう。剣を取り出す動作もなく、そこに急に現れているんです」
嬉しそうに笑い声を上げ、ポーズをとる勇者の映像を見て、ルンは頭を掻いた。
「上の連中は、知っていたわけか。こういう勇者だってこと。これを……ユーチューブにアップしてどうするんだ」
「話題にはなるでしょうけど、まぁ特撮と思われるでしょうね」
「だよな。おい、俺達棒立ちじゃねぇか。編集でカットしろよ」
「わかってますよ。ビックリしすぎですよね。ハハハ」
岩が二つに割れた後、ポーズをとって拍手をする三人の少年少女とは別に、スタッフとキングスブラザーズの二人は呆然と立ち尽くしていた。
傍から見ると、おかしくなるほど呆然としている。
「……で、上にも映像見せたんだろう」
「はい。今回、映像撮ったらすぐに会社に送るように言われていたので」
「それでどうしろと言っていた?」
「安藤さんが、“勇者君が岩を斬るよ”というコーナーを作ろうと言ってました」
安藤というのは、プロデューサーだった。
「ほら、あのテレビ番組で池を洗う奴あったでしょ? 池を洗ったら何が出てくるかという番組でしたが、これはちょっと趣向を変えて『全国各地で困っている岩とか石を壊します』という奴で」
「……それ、面白いのかよ?」
「電話で話したんですけど、事前に岩を斬るからみんな見に来てねという告知を入れるらしいです。あと、ライブでやって、実際の驚きの音声も入れるということで」
「……」
「とりあえず、二、三回それでやってみて様子を見てみようといっていました」
「いやぁ、さっそく俺のコーナーができるなんて思わなかったな」
学校へ行くなり、光はご機嫌にゼノンと麗子ちゃんに言った。
また三人で、人気のない階段の踊り場にいる。
「ヒカルの素晴らしさが皆に伝わったんだと思うよ。さすがだよ、ヒカル」
相変わらずヨイショする竜騎士のゼノン。
聖女の麗子はなんとも言えない表情で、光を見て言った。
「まぁ、見世物として扱われる方がいいのかな。マジで勇者だという話になると、いろいろと面倒になりそうだしね」
「面倒って?」
「国に囲われるとかね。だって考えてもみてご覧なさい。あなた達、やろうとしたら何でもできるのよ。人を殺すことだって簡単にできる」
「んなことしねぇよ」
「あなたがしなくても、そうしろと言い出す人が出てくるかも知れない。戦争だって、光君とゼノン君がいたら、だふん簡単に勝てると思う」
「んなことしねぇよ」
「だから、光君がしないと言っても、そうしろと言い出す人が出てくるのよ。そうなると、すごく面倒くさいことになると思うわ。だから今のまま、バラエティ的な勇者様でいいのかも知れない」
「バラエティ的勇者様って、すげぇパワーワードだな!!」
ガシッと麗子は光の肩を掴んで言った。
「とにかく、身バレは絶対にしないようにしなさい。絶対よ!!」
東京の会社に戻ってから、映像を撮っていたカメラマンが、パソコン画面を指さした。
そこには、一コマ一コマ動きが止まった細かな編集画面がある。
勇者君が岩の前に立ち、岩を真っ二つにしたあのシーンだ。
コマの一つ目は何も持っておらず、次の瞬間、唐突に右手に長い剣が握られている。そして次のコマがブレてよくわからなくなって、次のコマで岩に長い縦線が入る。その次のコマで縦線が広がり岩が二つに分かたれていく。
「……なんの編集もまだしてませんよ、コレ」
「…………勇者君の剣は突然出てきてるの?」
顎に手を当て、食い入るようにルンは画面に見入る。
「そうです。本当、突然右手に握っているんですよ。おかしいでしょう。剣を取り出す動作もなく、そこに急に現れているんです」
嬉しそうに笑い声を上げ、ポーズをとる勇者の映像を見て、ルンは頭を掻いた。
「上の連中は、知っていたわけか。こういう勇者だってこと。これを……ユーチューブにアップしてどうするんだ」
「話題にはなるでしょうけど、まぁ特撮と思われるでしょうね」
「だよな。おい、俺達棒立ちじゃねぇか。編集でカットしろよ」
「わかってますよ。ビックリしすぎですよね。ハハハ」
岩が二つに割れた後、ポーズをとって拍手をする三人の少年少女とは別に、スタッフとキングスブラザーズの二人は呆然と立ち尽くしていた。
傍から見ると、おかしくなるほど呆然としている。
「……で、上にも映像見せたんだろう」
「はい。今回、映像撮ったらすぐに会社に送るように言われていたので」
「それでどうしろと言っていた?」
「安藤さんが、“勇者君が岩を斬るよ”というコーナーを作ろうと言ってました」
安藤というのは、プロデューサーだった。
「ほら、あのテレビ番組で池を洗う奴あったでしょ? 池を洗ったら何が出てくるかという番組でしたが、これはちょっと趣向を変えて『全国各地で困っている岩とか石を壊します』という奴で」
「……それ、面白いのかよ?」
「電話で話したんですけど、事前に岩を斬るからみんな見に来てねという告知を入れるらしいです。あと、ライブでやって、実際の驚きの音声も入れるということで」
「……」
「とりあえず、二、三回それでやってみて様子を見てみようといっていました」
「いやぁ、さっそく俺のコーナーができるなんて思わなかったな」
学校へ行くなり、光はご機嫌にゼノンと麗子ちゃんに言った。
また三人で、人気のない階段の踊り場にいる。
「ヒカルの素晴らしさが皆に伝わったんだと思うよ。さすがだよ、ヒカル」
相変わらずヨイショする竜騎士のゼノン。
聖女の麗子はなんとも言えない表情で、光を見て言った。
「まぁ、見世物として扱われる方がいいのかな。マジで勇者だという話になると、いろいろと面倒になりそうだしね」
「面倒って?」
「国に囲われるとかね。だって考えてもみてご覧なさい。あなた達、やろうとしたら何でもできるのよ。人を殺すことだって簡単にできる」
「んなことしねぇよ」
「あなたがしなくても、そうしろと言い出す人が出てくるかも知れない。戦争だって、光君とゼノン君がいたら、だふん簡単に勝てると思う」
「んなことしねぇよ」
「だから、光君がしないと言っても、そうしろと言い出す人が出てくるのよ。そうなると、すごく面倒くさいことになると思うわ。だから今のまま、バラエティ的な勇者様でいいのかも知れない」
「バラエティ的勇者様って、すげぇパワーワードだな!!」
ガシッと麗子は光の肩を掴んで言った。
「とにかく、身バレは絶対にしないようにしなさい。絶対よ!!」
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