転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第二章 竜騎兵団の見習い

第二話 寮での生活のはじまり

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 一行の乗る竜達が、竜騎兵団の拠点の建物の前の離着陸場に到着した。
 すぐさま拠点の建物から、見習いの竜騎兵達が現れて、キビキビと王子達が竜の背から下りるのに手を貸す。
 そのうちの一人に案内されて、王子達は騎兵団長の元へ赴(おもむ)いた。

 季節は雪解けの春を迎え、そこかしこで雪が融けて茶色の地面を覗かせている。
 それでも外はまだまだ寒く、吐く息も白い。動き回っていないと手足が凍りつきそうな気がした。
 拠点の建物の最上階にある団長室では、暖炉の火が赤々と燃えてはぜていた。室内の温度はとても暖かく、案内されて入ったアルバート達はほっと表情を緩めていた。
 騎兵団長ウラノスは、アルバート王子を迎え笑顔を見せていた。

「無事に到着したようで何よりです」

 副騎兵団長エイベルが、ウラノスの傍らに立つ。
 
「エイベル副騎兵団長に迎えに来て頂きました。お忙しい中、有難うございます」

「いえ、とんでもございません」

 副騎兵団長も微笑みを浮かべてそう言う。
 綺麗な男であるからして、彼が微笑みを浮かべると辺りが華やいだ気すらした。

 そしてウラノス騎兵団長が尋ねた。

「また紫竜はその袋の中ですか」

「はい。そうです」

 ぐっすりと袋の中で寝入っている紫竜を、アルバート王子が優しく起こすと、小さな竜は薄く目を開けて、ひょいと袋から顔を覗かせた。
 その可愛らしい幼竜そのものの様子に、ウラノスもエイベルも視線を和ませて小さな竜を見つめながらも、脳裏では冷静にその小さな竜の状態を考え込んでいた。

 アルバート王子は、事前にウラノス騎兵団長ら上層部に報告していた。
 紫竜が魔法の力によって、その身体を大きくも小さくも出来るのだと。
 その時は、騎兵団長らは半信半疑で報告を受け取っていた。
 竜がその身体の大きさを魔法で大きくも小さくも変えられるなど、今まで聞いたことがなかったからだ。

 しかし、実際こうして目の前に現れた紫竜は、アルバート王子がこの竜騎兵団の拠点から生まれたばかりの紫竜を連れていった時から、全く成長していないような姿であった。
 これは一年経っても小さく成長していないままなのか、それとも王子が報告したように、紫竜が魔法で身体を小さくしているのだろうか。騎兵団長らの問いかけの眼差しに、アルバート王子は答えた。

「今、紫竜は魔法を使って身体を小さくしています。その方が移動が容易いからです。王宮からここに来るまでの間、紫竜を大きく成長させて飛ばすことも考えたのですが、まだ距離があるので不安でした」

 それに紫竜は「ピルルピルピルルル(俺だってやれば出来る。飛んで来られる)」と強く主張していたが、アルバートはその言葉を訳さなかった。

「竜が成長の魔法を使えるなんて聞いたこともありませんでした」

 ウラノス騎兵団長が言うと、王子も頷いた。

「ええ。でも、その魔法が使えないと僕も竜騎兵になることが出来ません」

 確かに、目の前の小さな小さな紫竜の体に竜騎兵が跨るなど考えられないだろう。
 それを思えば、必要に迫られて開花した能力と言える。

「紫竜は必要に応じて身体を大きく成長させたり、このように小さくさせることも出来ます。ご覧の通り、小さい姿の時は、僕がこうして簡単に持ち運ぶことができます。軽くて小さくてどこへでも連れていけます。紫竜は袋の中では、いつも大人しくしています」

 紫竜は袋の中で、アルバート王子の立て板に水のような、流れるようなスラスラとした言葉を聞いていると、自分が通信販売の商品のようにでもなった気分だった。さしずめ王子は口のうまい販売員か。

「そのため、お願いしていた件につきましては、是非ともご許可頂きたいと思っています」

 その言葉に、ウラノス騎兵団長はエイベル副騎兵団長と視線を交わして言った。

「前向きに検討し、その結果次第で許可を出させてもらおう」

「宜しくお願いします」

 

 そしてその後、王子達は自分達が暮らす事になる寮へと案内された。
 見習い寮は、木造四階建てのガッシリとした建物だった。およそ四十名近い見習い達が暮らすその寮は、入口の観音開きの木製の扉を開けると開放的な空間のエントランスになっており、入ってすぐ、階段下に緑色の竜の置物が置かれているのが目に入る。それはとてもよく出来た彫像で、球を掴んだ竜が翼を広げ飛び立とうとする姿だった。

 アルバート王子は王国の第七王子とはいえ、王族である。
 寮の一番上の部屋を用意され、その部屋には護衛を務めるバンナムの寝台も用意された。
 王子と護衛騎士バンナムの二人部屋である。
 そして王子は事前に、紫竜も同じ部屋で一緒に暮らすことを願い出ており、それについても許可が下りていた。
 だから、今まで通り紫竜は王子の寝台の上で一緒に眠ることが出来る。
 それを聞いて、紫竜は嬉しくて「ピルピルピルルルル」と歌うように鳴いていた。
 その紫竜を、寝台で横になったアルバート王子は抱き上げて、高い高いをしながら言った。

「先ほどはウラノス騎兵団長に、僕の座学の時には、お前も一緒に授業を受けられないかと頼んでいたのだ」

「!!」

「お前はとても賢いから、僕と一緒に授業を受けても理解できると思う。他の生まれたばかりの竜達と一緒に過ごすのは、お前も辛かろう」

 他の竜達よりも体の小さな紫竜のことを思い、騎兵団側は今年の春に孵化したばかりの竜達と紫竜を共に過ごさせて教育していくことを考えている。そもそも、今年十歳になり見習いとして入った王子も、平仄を合わせるように、今年見習いになる者達と授業を一緒に受けるのだ。紫竜だけが昨年春に同じように孵化した竜達と授業を受けるわけにはいかない。
 しかし、紫竜の成長を考えると、ピーピー生まれたての竜の雛と全く同じに育てるというのもおかしいだろう。
 
 紫竜は他の竜達とは違う。成長の速度も違い、魔力の使い方も違う。
 騎兵団側もこれからどう紫竜を育てていくべきか、試行錯誤の様子だった。

「袋の中に入れて、お前は話を聞けばいい。いいかい、温かくて気持ちが良いからと言って、眠ってはならないよ」

「ピルピルル!!(授業の時はちゃんと起きているよ!!)」

 そう小さな竜は言い張る。だが、ルーシェとて前世の記憶の中、学生の頃は机にもたれかかって眠りそうになっていたことが何度もあった。
 
「まぁ、袋の中で潜っていれば、他の人間にはバレないけどな」

 そう言って、王子はクスクスと笑い声を上げて、小さな竜の鼻先に口づけを落とした。
 
 

     *


 昨年春の孵化交流会で孵化し、将来の竜騎兵たる少年を選んだ子竜は、紫竜を合わせて五頭であった。
 ルーシェが慌てて卵を嘴で突っついて割った孵化交流会では、当初から予定されていた竜の卵三つとルーシェの卵一つの四つが孵化し、その後開かれた交流会では一つの卵が孵化した。
 毎年春に行われる孵化交流会では、大体三個から六個ほどの卵が孵化して主である竜騎兵の見習いの少年を選ぶことになる。
 五個以上の卵が孵化した年を、竜騎兵達は「当たり年」と呼んでいた。
 アルバート王子が卵を孵化した昨年の孵化交流会も「当たり年」であった。

 十歳から十六歳までの少年達が、竜の卵の前を歩くことを許されている。若すぎてもその後の竜騎兵となる訓練に差しさわりが出てしまう。かといって年を取り過ぎていても問題があるということで、孵化交流会に参加する子供達にも年齢の制限があった。
 過去、少女の竜騎兵がいなかったわけではないが、それは極めて稀なケースになっており、竜騎兵は男性がなるものとされている。
 よって、アルバート王子が入寮した竜騎兵の見習い達は、十歳から二十二歳までの少年から若者までが在寮していた。
 各年三名から六名という少なさである。
 現在入寮している見習い達の総人数は、二十六名であった。
 竜騎兵団の竜騎兵の総数は、見習い含めて百二十名ほどだと聞いている。そう聞くと、竜騎兵自体が非常に少ないように思えるが、一人の竜騎兵と竜の戦力は、千人の歩兵に匹敵すると言われている。
 北方地方の広大な土地とその国境線の見回りをその少ない人数でカバーしているのだ。

 アルバートは紫竜を寝台の上に置くと、荷物を解きにかかっている護衛騎士バンナムの傍らにしゃがみこんで、一緒に荷を解き始めた。
 今まで王宮では、女官や侍従達が王子の全ての世話をしてくれていた。
 こうした荷物の整理から、着替え、食事の世話まで、アルバートは何もしなくても身の回りは自然に整えられていた。
 しかし、これからは違うのである。

 王宮にいた時から、アルバートはバンナムから見習い達の寮での生活を聞いていた。
 竜騎兵達は身の回りの支度を自分の手で行い、そして当番で食事を作るという(掃除や洗濯は見習いがやるらしい)。それを免除されるのは騎兵団長や、騎兵副団長、騎兵隊長、騎兵副隊長といった役職につく者達くらいである。当然アルバートはこれから、そうした食事当番にもなって食事を作ったり掃除をしたりするだろう。
 そのことをアルバートは理解していた。実際、王宮では食事を作るやり方や、掃除の仕方までもバンナムや女官達から手ほどきを受けていた。
 
 今まで王子として育てられてきた少年が、これから厳しい見習い生活をしていくのである。
 覚悟して来たとはいえ、大変なことも多いだろうとバンナムは思っていた。

 荷物を箪笥や棚にしまうと、アルバートは自分で竜騎兵の見習い達が着る制服に着替えた。
 その制服は冬服で、若草色のズボンと上着である。厚手の生地であるが、やはり少し肌寒さを感じる。慣れるまでに風邪をひかないと良いがと内心王子は思っていた。
 そして足元は膝まで覆うブーツである。手袋とゴーグルも支給されている。竜に乗る時に使えるように、しっかりとした作りであった。

 寝台の上で転がっていたルーシェは、それらをまとう王子のそばまで近づくと、興味津々の様子で王子を見上げていた。

「ピルルピル」

 何かせがむように言う小さな竜の前で、王子は制服を着ると一回くるりと回って見せた。
 すると紫竜は小さな人間の子供のように、手を叩いて喜んでいたのだった。
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