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外伝 はじまりの物語  第二章 彼の願いは

第九話 勇者の最期の願い ~鈴木陸の思い

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 いよいよこの日、元の世界へ戻るために、大広間で待機していた僕達。
 三橋友親が、カルフィー魔術師に連れ出されていったと聞いたコリーヌ王女が、急いで友親を迎えに向かった。それに「私も様子を見て来るわ」と委員長まで走っていってしまった。

「なんかみんな、過保護だなー」

 そうユキは言っている。
 ニコニコと笑って僕の傍らに立ってくれている。

 沢谷雪也

 この世界で知り合い、友人になった少年だった。
 今は単なる友人の関係だけど、元の世界に戻ったら、もっと仲良くなりたいと密かに僕は願っていた。

 僕もユキに笑いかける。

 次の瞬間、背後に何かが現れた。



 身体を走る熱い痛み。
 それだけだった。
 立っていられずに倒れると、すでにユキも床に倒れていた。

 ユキの身体が二つに分かれているのを見て、彼が死んだことを知った。
 そして佐藤が僕に向かって剣を突き刺して、身体が貫かれたその時、僕が思っていたことは。

 ただ、ユキのことだけだった。



 


 一緒に元の世界に戻ろうと決めていた。
 願いはそれだけで、戻った彼に、僕は会いに行くと決めていた。

 でも、彼が死んでしまったら意味はない。
 そう、意味はない。



 だから望んだんだ。

 神さま
 どうか

 どうか彼を生き返らせて下さい。

 彼と出会えたこの短い間、僕はとても幸せでした。

 でも、彼は
 僕と出会わなければ死ぬことなんてなかった
 巻き込まれた被害者
 それが彼だった。



 僕と出会わなければ良かった。

 佐藤の言葉は、真実でもあった。

 僕と出会わなければ、召喚に巻き込まれなければ、彼は死ぬことはなかった。

 でも一方で、僕は血の海の中で、心のどこかが叫んでいた。

 彼に会いたい
 また彼に会いたいと
 そう心が二つに引き裂かれそうなほど

 願っていた。





 また会いたいと願いながら
 僕に
 会わなければよかったと

 その二つの相反する想いが
 彼の転生にどう影響したのか
 僕は知らなかった。
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