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第二章 希望を求めて
第五十八話 vs厄災②
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「「さあ、早く私を殺して」」
言葉と同時に厄災は間合いを詰め、拳を振るう。
俺はその拳を弾き、反対から飛んでくる蹴りを腕で受け止めつつ相手を蹴り飛ばす。
先程までは防御で手いっぱいだったが、結界を背にした効果が如実に結果として現れる。2対一の戦いに慣れてきたのも大きい。
これならいける。
前後に挟まれさえしなければ対応可能だ。
それに相手は思っていた程強くない。
不意で喰らわせた必殺の一撃。
それを受けて無傷だった厄災を見た時は勝てる気が全くしなかったが、冷静に考えるとあれは恐らく分裂した物の一体だったのだろう。
これならば――
「勝てる!!」
厄災へと体当たり。
弾かれた厄災は自ら張った結界へと激突し動きが止まる。
「ブレスだ!1体始末するぞ!!」
これはチャンスだ。
蹴り飛ばした厄災がもう直ぐ傍まで戻って来ていたが、ダメージ覚悟でまずは一体始末する。
≪了解だ。だが戦いながらでは100%の威力は出せんぞ≫
「兎に角ぶち込める最大威力で構わない!」
単体で見た場合の相手の能力は此方よりもかなり低い。
フルパワーでなくともいける。
仮に倒せなくとも、少なくとも大ダメージは与えられる筈だ。
戻ってきて纏わり付く厄災を捌きながら、ブレスのエネルギーをヘルに集約させる。その間動きがかなり鈍ってしまうが何とか凌いだ。
「喰らえ!黒龍砲!」
厄災に向けてブレスを放つ。
その際、もう一体の蹴りをもろに腹に貰うが根性で堪えきった。
来ると分かっていればどうって事はない物だ。
放たれたエネルギーは最初の半分にも満たない物であったが、厄災を飲み込み結界へと押しつぶし、爆裂する。
閉ざされた空間の中に凄まじい衝撃と爆風が吹き荒れる。
半分程度の威力でこれでは、もし全力で放っていたら自分も大ダメージを喰らいそうだ。そう言う意味ではフルパワーでなくて良かったとも言える。こういうのを怪我の功名って言うんだっけかな。少し違うか?
「後一体」
蹴りを入れた後反撃を警戒してか、俺から直ぐに離れた厄災を睨みつける。
ブレスを喰らった方は跡形も無く消し飛んだ。
一対一なら負ける要素はもうない。
「油断するにはまだ早い」
!?
「「それでは私には勝てない」」
厄災の背からもう一体同じ姿が現れ、声を同調させる。
分裂しやがった!?
「糞が……」
確かに3体に分裂できるなら、4体に分裂出来てもおかしくはない。
だがそうなると疑問が残る。
何故最初から2体では無く3体で戦わなかったのかという事だ。
個の戦闘力は俺の方が上だ。
だが恐らく三対一で襲い掛かられれば勝機はほぼない。
相手の手数が1,5倍になればとてもブレスを拭く余裕など無かっただろうし、何より攻撃を捌くのが無げー過ぎる。
遊ばれてるって事か?
だとしたら厄災はまだまだ分裂できるという事になる。
それは正直……
ちょっときつい……
というか絶望的だ。
≪主よ。あれは分裂では無く恐らくスキルだ。奴が分裂する瞬間何らかのスキルの発動を感じた。本体さえ倒せれば問題無い筈≫
本体!?
そうか!本体を倒せばいいのか!!
諦めかけていたが、ヘルの言葉に光明が差す。
全く頼りになる奴だ。
≪分身を生み出した本体は追跡してある。どうする?≫
「決まってる!」
俺の言葉と同時にヘルがエネルギーを集約し始めた。
厄災は俺の事を舐めきっているのか、ゆっくりと弧を描く様に俺を挟み込もうと動いてきている。まるでブレスを撃ってくれと言わんばかりの隙だ。
「今度こそ終わりだ!黒龍砲!」
此方の動きに反応して突っ込んでくる。
が、遅い。
相手が突っ込むよりも早くブレスは放たれ、敵を消し飛ばす。
直撃だ!これで!
そう思った瞬間――
「ぐっ……がぁっ!?」
頬に強い衝撃が走り、脳が揺れ。
脇腹を蹴り飛ばされてて吹き飛ぶ。
その際何度も結界に体をぶつけ、その度に電撃に撃たれたような衝撃が体を襲う。
「ぐぅ……どうなってやがる……」
痛みを堪え。
何とか体制を立て直した俺の目に厄災が映る。
2体の厄災が……
「くそっ!?本体を倒したんじゃなかったのか!?」
≪間違いなくあれは本体だったはず≫
なら何で相手は生きてて。
しかも分裂してるってんだ!?
「私のスキル最高の友達は私の分身では無く」
「私自身」
「「そこに本体も分身も無い」」
自分自身を生み出すスキルだってのか。
つまりどちらかを倒しても、残った方が再びスキルで自分を生み出してしまうって事か。
対策があるとすれば2匹同時撃破だが……
再び相手は大きく弧を描く様に此方を挟み込もうとしてくる。
明かに同時撃破を警戒している。
更に付け加えるなら、態々ゆっくり此方を取り囲むのは――
≪ブレスを無駄打ちさせて消耗させる作戦だろう≫
せめてブレスが連発できれば何とかできたかもしれないが。
それが出来ない以上、このまま消耗戦に持ち込まれてやられる映像しか頭に浮かんでこない。
「ちっ」
上がったり下がったり上がったり下がったり。
コロコロ変わる心理状況。
ストレスとイラつきから舌打ちが口を吐く。
≪どうする……主よ≫
ヘルもこの状況が絶望的だと判断したのだろう。
声のトーンがが先程までとは明らかに違う。
それは半分負けを覚悟した負け犬の声だった。
「どうするかだって!?決まってるだろう!!」
天に祈る!!
彩音先生早く助けに来てください!!!
マジお願いします……
こうして俺は倒す事を諦め、時間稼ぎに腐心する事を決めるのだった。
言葉と同時に厄災は間合いを詰め、拳を振るう。
俺はその拳を弾き、反対から飛んでくる蹴りを腕で受け止めつつ相手を蹴り飛ばす。
先程までは防御で手いっぱいだったが、結界を背にした効果が如実に結果として現れる。2対一の戦いに慣れてきたのも大きい。
これならいける。
前後に挟まれさえしなければ対応可能だ。
それに相手は思っていた程強くない。
不意で喰らわせた必殺の一撃。
それを受けて無傷だった厄災を見た時は勝てる気が全くしなかったが、冷静に考えるとあれは恐らく分裂した物の一体だったのだろう。
これならば――
「勝てる!!」
厄災へと体当たり。
弾かれた厄災は自ら張った結界へと激突し動きが止まる。
「ブレスだ!1体始末するぞ!!」
これはチャンスだ。
蹴り飛ばした厄災がもう直ぐ傍まで戻って来ていたが、ダメージ覚悟でまずは一体始末する。
≪了解だ。だが戦いながらでは100%の威力は出せんぞ≫
「兎に角ぶち込める最大威力で構わない!」
単体で見た場合の相手の能力は此方よりもかなり低い。
フルパワーでなくともいける。
仮に倒せなくとも、少なくとも大ダメージは与えられる筈だ。
戻ってきて纏わり付く厄災を捌きながら、ブレスのエネルギーをヘルに集約させる。その間動きがかなり鈍ってしまうが何とか凌いだ。
「喰らえ!黒龍砲!」
厄災に向けてブレスを放つ。
その際、もう一体の蹴りをもろに腹に貰うが根性で堪えきった。
来ると分かっていればどうって事はない物だ。
放たれたエネルギーは最初の半分にも満たない物であったが、厄災を飲み込み結界へと押しつぶし、爆裂する。
閉ざされた空間の中に凄まじい衝撃と爆風が吹き荒れる。
半分程度の威力でこれでは、もし全力で放っていたら自分も大ダメージを喰らいそうだ。そう言う意味ではフルパワーでなくて良かったとも言える。こういうのを怪我の功名って言うんだっけかな。少し違うか?
「後一体」
蹴りを入れた後反撃を警戒してか、俺から直ぐに離れた厄災を睨みつける。
ブレスを喰らった方は跡形も無く消し飛んだ。
一対一なら負ける要素はもうない。
「油断するにはまだ早い」
!?
「「それでは私には勝てない」」
厄災の背からもう一体同じ姿が現れ、声を同調させる。
分裂しやがった!?
「糞が……」
確かに3体に分裂できるなら、4体に分裂出来てもおかしくはない。
だがそうなると疑問が残る。
何故最初から2体では無く3体で戦わなかったのかという事だ。
個の戦闘力は俺の方が上だ。
だが恐らく三対一で襲い掛かられれば勝機はほぼない。
相手の手数が1,5倍になればとてもブレスを拭く余裕など無かっただろうし、何より攻撃を捌くのが無げー過ぎる。
遊ばれてるって事か?
だとしたら厄災はまだまだ分裂できるという事になる。
それは正直……
ちょっときつい……
というか絶望的だ。
≪主よ。あれは分裂では無く恐らくスキルだ。奴が分裂する瞬間何らかのスキルの発動を感じた。本体さえ倒せれば問題無い筈≫
本体!?
そうか!本体を倒せばいいのか!!
諦めかけていたが、ヘルの言葉に光明が差す。
全く頼りになる奴だ。
≪分身を生み出した本体は追跡してある。どうする?≫
「決まってる!」
俺の言葉と同時にヘルがエネルギーを集約し始めた。
厄災は俺の事を舐めきっているのか、ゆっくりと弧を描く様に俺を挟み込もうと動いてきている。まるでブレスを撃ってくれと言わんばかりの隙だ。
「今度こそ終わりだ!黒龍砲!」
此方の動きに反応して突っ込んでくる。
が、遅い。
相手が突っ込むよりも早くブレスは放たれ、敵を消し飛ばす。
直撃だ!これで!
そう思った瞬間――
「ぐっ……がぁっ!?」
頬に強い衝撃が走り、脳が揺れ。
脇腹を蹴り飛ばされてて吹き飛ぶ。
その際何度も結界に体をぶつけ、その度に電撃に撃たれたような衝撃が体を襲う。
「ぐぅ……どうなってやがる……」
痛みを堪え。
何とか体制を立て直した俺の目に厄災が映る。
2体の厄災が……
「くそっ!?本体を倒したんじゃなかったのか!?」
≪間違いなくあれは本体だったはず≫
なら何で相手は生きてて。
しかも分裂してるってんだ!?
「私のスキル最高の友達は私の分身では無く」
「私自身」
「「そこに本体も分身も無い」」
自分自身を生み出すスキルだってのか。
つまりどちらかを倒しても、残った方が再びスキルで自分を生み出してしまうって事か。
対策があるとすれば2匹同時撃破だが……
再び相手は大きく弧を描く様に此方を挟み込もうとしてくる。
明かに同時撃破を警戒している。
更に付け加えるなら、態々ゆっくり此方を取り囲むのは――
≪ブレスを無駄打ちさせて消耗させる作戦だろう≫
せめてブレスが連発できれば何とかできたかもしれないが。
それが出来ない以上、このまま消耗戦に持ち込まれてやられる映像しか頭に浮かんでこない。
「ちっ」
上がったり下がったり上がったり下がったり。
コロコロ変わる心理状況。
ストレスとイラつきから舌打ちが口を吐く。
≪どうする……主よ≫
ヘルもこの状況が絶望的だと判断したのだろう。
声のトーンがが先程までとは明らかに違う。
それは半分負けを覚悟した負け犬の声だった。
「どうするかだって!?決まってるだろう!!」
天に祈る!!
彩音先生早く助けに来てください!!!
マジお願いします……
こうして俺は倒す事を諦め、時間稼ぎに腐心する事を決めるのだった。
応援ありがとうございます!
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