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第42話 出発
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「え!外には戻れない!?どういう事ですか!?」
目覚めたエンデに、今の状況をかいつまんで説明する。
「そんな……」
ここはダンジョンの深層ではない。
というのが俺の出した結論だ。
地形がまるで違うし、出て来る敵の強さも明らかに別次元だからな。
何故そんな意味不明な状態になったのか?
パッと思いつくのは、転移系のトラップだ。
ダンジョンのトラップは魔物同様、一定周期で復活すると言われている。
なので誰かがかかったトラップが、たまたま復活して即発動した。
これなら察知で気づけなかったのも筋が通る。
……まあ確率的に考えると、あれな気もするが。
あと、結構なサイズである工房ごと飛ばされたというのも引っかかった点ではある。
少なくとも、道中いくつかあったトラップにそこまで大規模な物はなかった。
「取り敢えず、ここに留まっていても仕方がないんで。エンデさんの体調がいい様なら、脱出に向けての探索に出発しようと思うんですが?大丈夫ですか」
「あ……はい。私は大丈夫です」
エンデさんの顔色は優れない。
まあ当然か。
転移でパーティーが全滅し、救助して貰ったらまた転移で出口が分からない状態だからな。
「安心してください。魔物は処理できるレベルですし、2か月分ぐらいの食料はあるんで。きっと問題なく脱出できますよ」
「アドル師匠は出鱈目に強いんで、見たらビックリしますよ」
「ああ、それは俺も保証する。師匠は化け物だ」
「だれが化け物だ。誰が」
「ふふ……」
俺達の軽いやり取りを見て、エンデが笑う。
「二人とも、アドル君の事本当に信頼しているのね。こんな状況だってのに、全然緊張してないんだもの」
「自分で言うのもなんですけど、俺は超優秀です。だからエンデさんも、俺を信じて付いて来てください。絶対守って見せますから」
本当に自分で言うのも何だが状態だ。
だが、それで彼女の余計な不安が和らぐのならいいだろう。
「ありがとう。貴方を信頼するわ。でも……あたしも冒険者のはしくれだもの、自分の身位自分で守って見せる。だから私も一緒に戦います」
彼女にも冒険者としてのプライドがあるのだろう。
守られるだけを良しとはしない様だ。
実際は引っ込んでいてくれた方が助かるのだが……
「分かりました。じゃあこれを使ってください」
まあギリギリだったとはいえ、深層を単独で生き抜いた人だからな。
そこそこ強力な武器さえ渡しておけば、全く戦えないって事もないだろう。
それでも無理そうなら、流石に下がっていてもらう事になるが。
「武器なら自前のが……」
「まあまあ。受け取って魔力を流してみてくださいよ」
渡そうとした武器をエンデは遠慮しようとするが、ベニイモがそれを手に取り彼女に押しつけた。
「魔力を?」
「直ぐに意味が分かりますよ」
ベニイモはエンデの質問には答えず、悪戯っぽくウィンクする。
なんだか楽しそうだ。
「――っ!?これは……」
彼女は手にした剣を驚きの表情で凝視した。
材質自体は鋼だが、効果はかなりのものが付いていある。
しかも2つも。
早々お目にかかる武器ではないだろう。
「信じられない……父さんの持つ魔剣並じゃない!」
「師匠が作った物なんですよ!」
何故かベニイモは自慢気だ。
手伝ったってんならともかく、それ作った時、お前はいなかった訳だが?
「これを……貴方が?」
「ええ、まあ」
「ベニイモさん達がアドル君の事を凄い凄いって言ってたけど、本当に桁違いなのね」
「アドル師匠は、勇者ソアラ師匠の相棒ですから!」
「はぁ……」
彼女が俯き、暗い表情で何故か小さく溜息を吐く。
「どうかしたんですか? 」
「ああいや……人を羨んでもしょうがない事だけど、私にも貴方みたいな才能があったらなって……そう思わずにはいられなくて。変な事言ってごめんなさいね」
エンデさんはどうやら、才能や資質に思う所がある様だ。
まあ話を聞く限り、彼女は結構平凡な能力だったらしいからな。
父親の事を考えると、常に比較されて辛い思いをしてきたのかもしれない。
「気にしないでください」
努力すれば……などと気安く言葉をかけるつもりはない。
努力するのは大前提で、その上で才能の有る者が明確な結果を残す。
世の中なんてそんなもんだ。
しかも俺は神から最上級の資質を授けられている。
そんな人間が、彼女に気安くかけて良い言葉ではないだろう
「たとえ才能は無くても……捨てられない願いがあるなら、努力するしかない」
タロイモが真剣な表情で、口を開いた。
恐らく、それはエンデさんだけでなく、自分自身に向けられた言葉でもあるのだろう。
その瞳には、強い意志の光が宿っている様に見える。
「そう……ね。愚痴っててもしょうがないわよね。こんな強力な武器を貸して貰えたんだもの、折角だからがっつりレベルを上げて強くなって見せるわ」
「そうですよ!頑張ってレベル上げをしましょう!」
最大の目的は脱出路の発見なのだが、何かレベル上げがメインっぽい雰囲気になってしまったな。
まあ経験値が美味しいから、可能な限りレベル上げはするつもりではあったが。
「じゃあ出発するとしようか」
俺は工房を消滅させ、出発する。
目覚めたエンデに、今の状況をかいつまんで説明する。
「そんな……」
ここはダンジョンの深層ではない。
というのが俺の出した結論だ。
地形がまるで違うし、出て来る敵の強さも明らかに別次元だからな。
何故そんな意味不明な状態になったのか?
パッと思いつくのは、転移系のトラップだ。
ダンジョンのトラップは魔物同様、一定周期で復活すると言われている。
なので誰かがかかったトラップが、たまたま復活して即発動した。
これなら察知で気づけなかったのも筋が通る。
……まあ確率的に考えると、あれな気もするが。
あと、結構なサイズである工房ごと飛ばされたというのも引っかかった点ではある。
少なくとも、道中いくつかあったトラップにそこまで大規模な物はなかった。
「取り敢えず、ここに留まっていても仕方がないんで。エンデさんの体調がいい様なら、脱出に向けての探索に出発しようと思うんですが?大丈夫ですか」
「あ……はい。私は大丈夫です」
エンデさんの顔色は優れない。
まあ当然か。
転移でパーティーが全滅し、救助して貰ったらまた転移で出口が分からない状態だからな。
「安心してください。魔物は処理できるレベルですし、2か月分ぐらいの食料はあるんで。きっと問題なく脱出できますよ」
「アドル師匠は出鱈目に強いんで、見たらビックリしますよ」
「ああ、それは俺も保証する。師匠は化け物だ」
「だれが化け物だ。誰が」
「ふふ……」
俺達の軽いやり取りを見て、エンデが笑う。
「二人とも、アドル君の事本当に信頼しているのね。こんな状況だってのに、全然緊張してないんだもの」
「自分で言うのもなんですけど、俺は超優秀です。だからエンデさんも、俺を信じて付いて来てください。絶対守って見せますから」
本当に自分で言うのも何だが状態だ。
だが、それで彼女の余計な不安が和らぐのならいいだろう。
「ありがとう。貴方を信頼するわ。でも……あたしも冒険者のはしくれだもの、自分の身位自分で守って見せる。だから私も一緒に戦います」
彼女にも冒険者としてのプライドがあるのだろう。
守られるだけを良しとはしない様だ。
実際は引っ込んでいてくれた方が助かるのだが……
「分かりました。じゃあこれを使ってください」
まあギリギリだったとはいえ、深層を単独で生き抜いた人だからな。
そこそこ強力な武器さえ渡しておけば、全く戦えないって事もないだろう。
それでも無理そうなら、流石に下がっていてもらう事になるが。
「武器なら自前のが……」
「まあまあ。受け取って魔力を流してみてくださいよ」
渡そうとした武器をエンデは遠慮しようとするが、ベニイモがそれを手に取り彼女に押しつけた。
「魔力を?」
「直ぐに意味が分かりますよ」
ベニイモはエンデの質問には答えず、悪戯っぽくウィンクする。
なんだか楽しそうだ。
「――っ!?これは……」
彼女は手にした剣を驚きの表情で凝視した。
材質自体は鋼だが、効果はかなりのものが付いていある。
しかも2つも。
早々お目にかかる武器ではないだろう。
「信じられない……父さんの持つ魔剣並じゃない!」
「師匠が作った物なんですよ!」
何故かベニイモは自慢気だ。
手伝ったってんならともかく、それ作った時、お前はいなかった訳だが?
「これを……貴方が?」
「ええ、まあ」
「ベニイモさん達がアドル君の事を凄い凄いって言ってたけど、本当に桁違いなのね」
「アドル師匠は、勇者ソアラ師匠の相棒ですから!」
「はぁ……」
彼女が俯き、暗い表情で何故か小さく溜息を吐く。
「どうかしたんですか? 」
「ああいや……人を羨んでもしょうがない事だけど、私にも貴方みたいな才能があったらなって……そう思わずにはいられなくて。変な事言ってごめんなさいね」
エンデさんはどうやら、才能や資質に思う所がある様だ。
まあ話を聞く限り、彼女は結構平凡な能力だったらしいからな。
父親の事を考えると、常に比較されて辛い思いをしてきたのかもしれない。
「気にしないでください」
努力すれば……などと気安く言葉をかけるつもりはない。
努力するのは大前提で、その上で才能の有る者が明確な結果を残す。
世の中なんてそんなもんだ。
しかも俺は神から最上級の資質を授けられている。
そんな人間が、彼女に気安くかけて良い言葉ではないだろう
「たとえ才能は無くても……捨てられない願いがあるなら、努力するしかない」
タロイモが真剣な表情で、口を開いた。
恐らく、それはエンデさんだけでなく、自分自身に向けられた言葉でもあるのだろう。
その瞳には、強い意志の光が宿っている様に見える。
「そう……ね。愚痴っててもしょうがないわよね。こんな強力な武器を貸して貰えたんだもの、折角だからがっつりレベルを上げて強くなって見せるわ」
「そうですよ!頑張ってレベル上げをしましょう!」
最大の目的は脱出路の発見なのだが、何かレベル上げがメインっぽい雰囲気になってしまったな。
まあ経験値が美味しいから、可能な限りレベル上げはするつもりではあったが。
「じゃあ出発するとしようか」
俺は工房を消滅させ、出発する。
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