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第48話 信頼
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「師匠に忠誠を誓います!」
ベニイモがそう宣言する。
彼女がこんな真似をしているのは、俺のスキルの説明をしたせいだ。
――エリクシル・血紅。
それは俺に忠誠を誓う物に、エリクシルクラスへの覚醒を齎す力だった。
覚醒した者は現在就いているクラスの特色――習得出来るスキルやステータス――をそのまま引き継ぎつつ、その上で強力な三つの特典を手に入れる事になる。
一つは、習得経験値が2倍になるという物だ。
まあその内1割は主である俺に捧げられるため、実質は1.8倍ではあるが。
二つ目は、レベルの上限が150になる。
通常勇者スキルでしかできない限界突破効果を、エリクシルクラスは素で兼ね備えていた。
そして三つめが、全ステータスが1,5倍になるという効果だ。
これはマスタリー系とは別物扱いで、最終的な数値が上がるという物になる。
そのため、マスタリーを追加するのとは比にならない程のパワーアップを見込む事が出来た。
さて……効果はさておき。
何故彼女が俺への忠誠を口にしたのか?
それを説明しよう。
それはエリクシル・血紅の使用条件にある。
このスキルの発動対象は、忠誠を誓った者のみとされていた。
だからベニイモはスキルの恩恵を受けるべく、俺に忠誠を誓ったのだ。
勿論、この条件は単に口にするだけでは満たされない。
心の底から、俺に対する忠誠を誓わなければならないのだが……
まあ結論から言うと、俺のスキルはベニイモに反応していた。
どうやら、本気で彼女は俺に忠誠を誓っている様だ。
「師匠!共に魔王を倒しましょう!」
「ベニイモ。エリクシルクラスになったら、俺の命令には絶対に逆らえなくなるんだぞ?その意味が分かってるか?」
強力なエリクシルクラスには、大きなリスクが伴う。
それは忠誠を誓った主の命令が、絶対になってしまう事だ。
もし万一俺が死ねと命じれば、彼女は拒否する事すら出来ずに自害する羽目になる。
自分の命さえ勝手にされてしまう。
それは彼女にとって、余りにも大きすぎるリスクと言えるだろう。
勿論そんな事をする気はないが、俺は弱い人間だ。
我が身可愛さに、ベニイモを犠牲にしない絶対の保証なんてない。
だから何も考えずに忠誠を口にした彼女を、俺は優しく諭した。
のだが――
「はい!私は信じてますから!アドル師匠の事を!」
――彼女から返ってきたのは、とびっきりの笑顔だった。
「ベニイモ……」
俺の事を信頼しきった、曇りのない瞳。
それはかつて、ソアラが俺に向けていた物と全く同じ物だった。
その目を見ていると、後ろ暗い気持ちでぎゅっと胸が締め付けられてしまう。
「俺は……ソアラの事を守ってやれなかった。彼女の期待を裏切ったんだ。そんな男なんだぞ。そんな奴に命を預ける様な――」
「師匠!アドル師匠は、ソアラ師匠の期待を裏切ってなんていません!だってここにいるじゃないですか!」
「ベニイモ……」
「ベニイモの言う通りだ」
「タロイモ……」
「ソアラ師匠が死んだって聞いた時、あんたは何をやってるんだって無性に腹が立った。けど、あんたはその事から逃げなかった。果たされなかった約束を果たすため、前に進んでいる。だから俺は……もう一度師匠を信じるよ。アドル師匠!俺はアンタに忠誠を誓う!」
スキルがタロイモにも反応する。
「だから!師匠と共に戦う力を俺にくれ!」
「一緒に魔王を倒しましょう!そしてソアラ師匠を生き返らせるんです!!」
最初タロイモに出会った時、いきなり喧嘩を売られて面倒なクソガキだと思った。
訓練にベニイモが参加する様になった時は、休憩時間を増加させる要因位にしか考えなかった。
だけど今の二人は……
「ありがとう……」
自然と瞳から涙が溢れて来る。
本当にいい弟子を――いや、仲間を得た。
こんな俺の事を、心の底から信頼してくれている彼女達の期待を裏切らない事。
それを俺は、心の中で強く決意する。
待っててくれ、ソアラ。
魔王を倒し、必ず君を生き返らせてみせるよ。
ベニイモがそう宣言する。
彼女がこんな真似をしているのは、俺のスキルの説明をしたせいだ。
――エリクシル・血紅。
それは俺に忠誠を誓う物に、エリクシルクラスへの覚醒を齎す力だった。
覚醒した者は現在就いているクラスの特色――習得出来るスキルやステータス――をそのまま引き継ぎつつ、その上で強力な三つの特典を手に入れる事になる。
一つは、習得経験値が2倍になるという物だ。
まあその内1割は主である俺に捧げられるため、実質は1.8倍ではあるが。
二つ目は、レベルの上限が150になる。
通常勇者スキルでしかできない限界突破効果を、エリクシルクラスは素で兼ね備えていた。
そして三つめが、全ステータスが1,5倍になるという効果だ。
これはマスタリー系とは別物扱いで、最終的な数値が上がるという物になる。
そのため、マスタリーを追加するのとは比にならない程のパワーアップを見込む事が出来た。
さて……効果はさておき。
何故彼女が俺への忠誠を口にしたのか?
それを説明しよう。
それはエリクシル・血紅の使用条件にある。
このスキルの発動対象は、忠誠を誓った者のみとされていた。
だからベニイモはスキルの恩恵を受けるべく、俺に忠誠を誓ったのだ。
勿論、この条件は単に口にするだけでは満たされない。
心の底から、俺に対する忠誠を誓わなければならないのだが……
まあ結論から言うと、俺のスキルはベニイモに反応していた。
どうやら、本気で彼女は俺に忠誠を誓っている様だ。
「師匠!共に魔王を倒しましょう!」
「ベニイモ。エリクシルクラスになったら、俺の命令には絶対に逆らえなくなるんだぞ?その意味が分かってるか?」
強力なエリクシルクラスには、大きなリスクが伴う。
それは忠誠を誓った主の命令が、絶対になってしまう事だ。
もし万一俺が死ねと命じれば、彼女は拒否する事すら出来ずに自害する羽目になる。
自分の命さえ勝手にされてしまう。
それは彼女にとって、余りにも大きすぎるリスクと言えるだろう。
勿論そんな事をする気はないが、俺は弱い人間だ。
我が身可愛さに、ベニイモを犠牲にしない絶対の保証なんてない。
だから何も考えずに忠誠を口にした彼女を、俺は優しく諭した。
のだが――
「はい!私は信じてますから!アドル師匠の事を!」
――彼女から返ってきたのは、とびっきりの笑顔だった。
「ベニイモ……」
俺の事を信頼しきった、曇りのない瞳。
それはかつて、ソアラが俺に向けていた物と全く同じ物だった。
その目を見ていると、後ろ暗い気持ちでぎゅっと胸が締め付けられてしまう。
「俺は……ソアラの事を守ってやれなかった。彼女の期待を裏切ったんだ。そんな男なんだぞ。そんな奴に命を預ける様な――」
「師匠!アドル師匠は、ソアラ師匠の期待を裏切ってなんていません!だってここにいるじゃないですか!」
「ベニイモ……」
「ベニイモの言う通りだ」
「タロイモ……」
「ソアラ師匠が死んだって聞いた時、あんたは何をやってるんだって無性に腹が立った。けど、あんたはその事から逃げなかった。果たされなかった約束を果たすため、前に進んでいる。だから俺は……もう一度師匠を信じるよ。アドル師匠!俺はアンタに忠誠を誓う!」
スキルがタロイモにも反応する。
「だから!師匠と共に戦う力を俺にくれ!」
「一緒に魔王を倒しましょう!そしてソアラ師匠を生き返らせるんです!!」
最初タロイモに出会った時、いきなり喧嘩を売られて面倒なクソガキだと思った。
訓練にベニイモが参加する様になった時は、休憩時間を増加させる要因位にしか考えなかった。
だけど今の二人は……
「ありがとう……」
自然と瞳から涙が溢れて来る。
本当にいい弟子を――いや、仲間を得た。
こんな俺の事を、心の底から信頼してくれている彼女達の期待を裏切らない事。
それを俺は、心の中で強く決意する。
待っててくれ、ソアラ。
魔王を倒し、必ず君を生き返らせてみせるよ。
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