36 / 158
第35話 理不尽だ
しおりを挟む
「あら、綺麗」
「おお、これが欲しかったんだ」
村に着いて早速物資を運び込む。
買い出しの大半は冬を越すための保存用の食料や塩などの香辛料、それに布や金属なんかの服を縫製したり農具を手作りするための素材類だ。
貧しい村なので、身の回りのものは基本手作りだからな。
金が入ったんだから贅沢させろ?
金があるからってあるだけ使ってたらきりないだろ?
別に村事態の収支が爆上がりした訳じゃないんだから、質素倹約は続けて行って貰わないと困る。
因みに家畜類は一切乗っていない。
流石に、町に行っていきなり買い揃えられるような物じゃないからな。
なので家畜はオルブス商会に頼んで、後々村に搬入して貰う手筈となっていた。
「お、俺……これからどうなってしまうんだ……」
村人総出で運び出したので、6台あった馬車はあっという間にカラになる。
空になった荷馬車の一台を覗くと、その隅で膝を抱えて丸まっているカンカンの姿があった。
「ふむ……とりあえず取って食う訳じゃないから、震えてないで出て来い」
怯えているカンカンに声をかける。
単に普通に働かせるだけで、別に彼に酷い事などするつもりはない。
まあやりたい放題やってたぼんぼんにとっては、肉体労働は苦痛以外の何物でもないのだろうが、そんな事は流石に俺の知った事ではないからな。
「うういやだぁ……家に帰りたい……」
が、カンカンはブルブル震えてべそをかくばかりで、荷馬車から出てこようとしない。
見事な現実逃避っぷりである。
これが死刑囚とかなら俺も少しは同情していたのだろうが、コイツのやってる事は要は『働きたくないでござる!』だからな。
同情する訳もない。
なので馬車から引きずり降ろさせてもらう。
いつまでもこいつが乗ったままだと、片付けられないし。
「タゴル。彼を引きずり出してくれ」
ちょうど傍にいたタゴルに頼んだら、彼はあからさまに不機嫌そうな顔をする。
信頼度は絶賛低空飛行続行中だ。
果たして彼がデレる日はやってくるのだろうか?
「おい、降りろ」
「ひぃぃぃぃ……」
タゴルが荷馬車に上がり、片手で軽々と、80キロぐらいはありそうなカンカンの首根っこを掴んで持ち上げた。
とんでもない怪力だ。
流石筋力Aランクである。
「ちょっとお兄ちゃん!そんな乱暴に扱ったら可哀そうでしょ!」
「俺はこういう根性なしが一番嫌いなんだよ」
タゴルは根性第一主義の様だ。
まあ以前のこの村は、根性出していかなきゃ生きていけない様な環境だったから、そうなるのも頷けはするが。
「ふぎゃ!?」
タゴルに放り捨てられたカンカンが、顔面から地面に着地する。
「ぐっ……うぅ………」
「ああもう!大丈夫?」
その場ですすり泣きだすカンカンにアリンが駆け寄り、タゴルを強く睨みつける。
仏頂面で妹以外の他人に厳しい兄に。
いつも笑顔で誰にでも優しく接する妹。
ほんっと、兄妹なのに性格が両極端である。
「ううぅぅぅぅ」
「ほらほら泣かないで、男の子でしょ」
「……」
アリンに睨みつけられたタゴルが、彼女の視線が外れた瞬間、何故か俺を睨みつけて来た。
まさか俺のせいで妹に怒られたとでも言いたいのだろうか?
信頼度を確認すると、見事に3%にまで下がっていた。
完全に初期値割れである。
「世の中理不尽だらけだ……」
カンカン照りの空を見上げ、俺はやるせなさにそう呟いた。
「おお、これが欲しかったんだ」
村に着いて早速物資を運び込む。
買い出しの大半は冬を越すための保存用の食料や塩などの香辛料、それに布や金属なんかの服を縫製したり農具を手作りするための素材類だ。
貧しい村なので、身の回りのものは基本手作りだからな。
金が入ったんだから贅沢させろ?
金があるからってあるだけ使ってたらきりないだろ?
別に村事態の収支が爆上がりした訳じゃないんだから、質素倹約は続けて行って貰わないと困る。
因みに家畜類は一切乗っていない。
流石に、町に行っていきなり買い揃えられるような物じゃないからな。
なので家畜はオルブス商会に頼んで、後々村に搬入して貰う手筈となっていた。
「お、俺……これからどうなってしまうんだ……」
村人総出で運び出したので、6台あった馬車はあっという間にカラになる。
空になった荷馬車の一台を覗くと、その隅で膝を抱えて丸まっているカンカンの姿があった。
「ふむ……とりあえず取って食う訳じゃないから、震えてないで出て来い」
怯えているカンカンに声をかける。
単に普通に働かせるだけで、別に彼に酷い事などするつもりはない。
まあやりたい放題やってたぼんぼんにとっては、肉体労働は苦痛以外の何物でもないのだろうが、そんな事は流石に俺の知った事ではないからな。
「うういやだぁ……家に帰りたい……」
が、カンカンはブルブル震えてべそをかくばかりで、荷馬車から出てこようとしない。
見事な現実逃避っぷりである。
これが死刑囚とかなら俺も少しは同情していたのだろうが、コイツのやってる事は要は『働きたくないでござる!』だからな。
同情する訳もない。
なので馬車から引きずり降ろさせてもらう。
いつまでもこいつが乗ったままだと、片付けられないし。
「タゴル。彼を引きずり出してくれ」
ちょうど傍にいたタゴルに頼んだら、彼はあからさまに不機嫌そうな顔をする。
信頼度は絶賛低空飛行続行中だ。
果たして彼がデレる日はやってくるのだろうか?
「おい、降りろ」
「ひぃぃぃぃ……」
タゴルが荷馬車に上がり、片手で軽々と、80キロぐらいはありそうなカンカンの首根っこを掴んで持ち上げた。
とんでもない怪力だ。
流石筋力Aランクである。
「ちょっとお兄ちゃん!そんな乱暴に扱ったら可哀そうでしょ!」
「俺はこういう根性なしが一番嫌いなんだよ」
タゴルは根性第一主義の様だ。
まあ以前のこの村は、根性出していかなきゃ生きていけない様な環境だったから、そうなるのも頷けはするが。
「ふぎゃ!?」
タゴルに放り捨てられたカンカンが、顔面から地面に着地する。
「ぐっ……うぅ………」
「ああもう!大丈夫?」
その場ですすり泣きだすカンカンにアリンが駆け寄り、タゴルを強く睨みつける。
仏頂面で妹以外の他人に厳しい兄に。
いつも笑顔で誰にでも優しく接する妹。
ほんっと、兄妹なのに性格が両極端である。
「ううぅぅぅぅ」
「ほらほら泣かないで、男の子でしょ」
「……」
アリンに睨みつけられたタゴルが、彼女の視線が外れた瞬間、何故か俺を睨みつけて来た。
まさか俺のせいで妹に怒られたとでも言いたいのだろうか?
信頼度を確認すると、見事に3%にまで下がっていた。
完全に初期値割れである。
「世の中理不尽だらけだ……」
カンカン照りの空を見上げ、俺はやるせなさにそう呟いた。
375
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる