素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~

榊与一

文字の大きさ
87 / 158

第86話 あたおか

しおりを挟む
「久しぶりだな。我が弟よ。痩せたと聞いていたが、見違えたぞ」

ガイオスがやって来た。
呼んでもないのに、ムカつくニキビ面を引っ提げて。

「お久しぶりで御座います。ガイオス王子」

やたら親し気に声をかけてきたが、こっちは礼儀正しく返す。
罠の可能性があるからな。
やあ兄さんとかフレンドリーに声をかけた途端、『この無礼者が!』とか言って因縁を付けられないとも限らないのだ。

「久しぶりに会った兄に、そんな他人行儀はないだろう」

久しぶりに会う前から他人行儀だっただろうが。
何言ってんだコイツは。
とは思っても、もちろん口にはしない。
俺はとにかく愛想笑いを浮かべて対応する。

これぞ、俺が日本での生活で学んだ処世術である。

「まあ立ち話もなんだ。座って話そうか」

「はい」

ガイオスに言われ、俺はソファに腰を下ろす。
ここ、俺の屋敷なんだがな。
当たり前の様に座れとか言ってくるコイツの気がしれん。

「こちらはスパム領で採れた、希少な茶葉の物になっております。ガイオス王子様の御口に合うかはわかりませんが」

座ったところで、素早くジャガリックが俺と兄に飲み物を差し出す。
一応相手は貴賓なので、出したのはこの領でだけとれる特殊なお茶だ――ジャガリックに、相手に舐められないためにもこれを出そうと言われた。

名付けて精霊茶。

名前からも分かるように、精霊草で作ったお茶である。
俺も一日一杯だけ飲んでるが、これがまた糞美味い。
出来れば飲み物全部これにしたいぐらいだが、いかんせん気軽に飲める額ではない超高級茶なので、一日一杯で我慢している。

「ほう……これは驚いたな」

お茶を口にしたガイオスが目を丸める。

「お代わりを貰えるか?」

「かしこまりました」

かなり気に入った様だ。
希少だって前置きしてるのに、遠慮なく二杯、三杯とがぶがぶ飲みやがる。
厚かましい奴だ。

「それで……ガイオス王子。此度はどういったご用件でお越しになられたのですか?」

「兄上と呼んでくれていいのだぞ」

「滅相もない」

「やれやれ、硬い奴だ。まあいい。今日俺がここへやって来たのは、お前の所から販売されているスパムポーションの事についてだ」

やっぱりか。
まあ予想の範疇だな。
というか、それ以外の理由なんて思いつかないし。

「あれは凄いな。どの程度か実際に確認するために兵士の腕を切り落として確認したんだが、ポーションを飲んだ瞬間一瞬でくっついたぞ。あれほどの回復アイテムは、エリクサーを除けば古今類を見ない物だ」

いやお前の方こそ凄いよ。
効果を確認するためだけに兵士の腕を飛ばすとか、完全に頭がおかしいとしか言いようがない。
ドン引きだ。

「という訳で、ポーションは全て王家預かりにしたい」

いや何がという訳だよ。
王家預かりってお前、全部寄付しろって事か?

舐めんなよ、このぼけ。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処理中です...