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第87話 騙されん!
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「ご冗談を」
俺は馬鹿な発言に、苦笑いで返す。
現在のスパム領の主要財源を丸っと寄越せとか、正気の発言ではない。
「ん?私はいたって本気だぞ」
俺の言葉に、ガイオスが自信満々気に答えて来る。
どうやら本気で口にしている様だ。
昔っから脳筋野郎だとは思っていたが、まさかここまでとは……
覚醒前の自分も愚かだったが、目の前の兄もそれに負けず劣らずだったようだ。
「ガイオス様。私の方からお話しさせていただいても宜しいでしょうか?」
俺が顔を顰めていると、ガイオスの連れて来た秘書官とおぼしき女性が口を開いた。
「ん?ああ、まあそうだな。俺よりお前の方がいいか」
「ありがとうございます。では先に自己紹介を。私はエーデ・ルワイスと申します。スパム男爵様。以後、お見知りおきを」
「ルワイス……ひょっとしてルワイス伯爵家の?」
「はい。次女になります」
ルワイス伯爵家は爵位こそ侯爵より下だが、その経済力は国内屈指と言われている大貴族だ。
そんな家の娘が側近をやっているって事は、伯爵家はガイオスの王位継承に期待してるって事か?
まあ単にケイレスの母方であるドレイク侯爵家への嫌がらせで、応援してるだけって可能性もあるが――両家は仲が悪い。
というかその可能性の方が高いか。
まあそんなん事はどうでもいいか。
俺には関係ない話だし。
「ふむ……それで、話とは?」
「ケイレス様と隣国バロネッサ王国の第一王女、ペカリーヌ様の縁談が破談になった事はエドワード様もご存じかと思われます」
「ああ。彼女は教会の掲げる特別な聖女になったからと、そう聞いている」
「はい。国王陛下は二人の結婚を機に、両国の絆を深めようと望まれていました。ですが不幸な事に――いえ、不幸と言うのは失言ですね。とにかく、二人の婚約は解消されてしまいました」
幸か不幸かは、見る立ち位置によって変わる。
そのため、エーデは言葉を言い直す。
「けっしてその事に関して……我が国は一切不満を表明する事はありませんでした。エルロンド教の吉事に異を唱えるのは賢明でなかったのと、それと……」
エーデが俺を見ながら、口ごもる。
「私の起こした事件があったから、表立って非難する訳にもいかなかった……か」
「まあ……そうなります。ですが、けっしてガイオス様はその事でエドワード様を責めるおつもりはありません。既に十分な罰を受けられていらっしゃるので」
責めるつもりはないって言葉が、恩着せがましく聞こてしょうがない
まあ確実にそういう意図で言ってるんだろうが。
「まあそうだな。そもそも決定的な理由はエルロンド教会の決定で、私の起こした事件は全く関係ないからな」
心理的に貸し借りを作って、上手く掌で転がそうって気ならそうはいかない。
俺は全く気にしていない事をアピールする。
「ええ、もちろんです」
何が勿論です、だよ。
しらじらしい。
本当にそう思ってるんだったら、あんな思わせぶりに言いよどんだりしないだろうが。
「それにこの際、破談の理由は些細な事ですし」
些細な事だったら最初っからスルーしろよ。
こいつといいガイオスとい、絶対俺の事を以前の馬鹿のままだと思って話を進めようとしてるだろ。
「問題は……バロネッサ王国との結びつきを強められなかった事が、我が国にとって大問題だという点です」
「大問題?何か問題でも?」
「これはここだけお話に留めて頂きたいのですが……」
エーデが神妙な顔になる。
「ああ、じゃあ話さなくていい。今の私は所詮一介の男爵でしかないからな。国政に関する機密を聞かされても困る」
「……え?」
俺が話さなくていいと言うと、エーデが口を開いた間抜け顔になる。
どうやら拒否されるとは思ってなかったようだ。
国レベルの良く分からん情報とか、聞かされても困るだけなんだからそら断るだろうに……
「あ、その……これは国の命運を左右する非常に重大な話でして……」
「だったら猶更、たかが辺境の一領主の私如きが聞くべきではないだろう」
国の命運を左右するとか言われたら若干気になりはするが、さっきのやり取りから、この女は平気で話を盛るタイプだと俺は睨んでいるからな。
なので、この女の言葉を鵜呑みにはなしない。
俺は騙されんぞ!
俺は馬鹿な発言に、苦笑いで返す。
現在のスパム領の主要財源を丸っと寄越せとか、正気の発言ではない。
「ん?私はいたって本気だぞ」
俺の言葉に、ガイオスが自信満々気に答えて来る。
どうやら本気で口にしている様だ。
昔っから脳筋野郎だとは思っていたが、まさかここまでとは……
覚醒前の自分も愚かだったが、目の前の兄もそれに負けず劣らずだったようだ。
「ガイオス様。私の方からお話しさせていただいても宜しいでしょうか?」
俺が顔を顰めていると、ガイオスの連れて来た秘書官とおぼしき女性が口を開いた。
「ん?ああ、まあそうだな。俺よりお前の方がいいか」
「ありがとうございます。では先に自己紹介を。私はエーデ・ルワイスと申します。スパム男爵様。以後、お見知りおきを」
「ルワイス……ひょっとしてルワイス伯爵家の?」
「はい。次女になります」
ルワイス伯爵家は爵位こそ侯爵より下だが、その経済力は国内屈指と言われている大貴族だ。
そんな家の娘が側近をやっているって事は、伯爵家はガイオスの王位継承に期待してるって事か?
まあ単にケイレスの母方であるドレイク侯爵家への嫌がらせで、応援してるだけって可能性もあるが――両家は仲が悪い。
というかその可能性の方が高いか。
まあそんなん事はどうでもいいか。
俺には関係ない話だし。
「ふむ……それで、話とは?」
「ケイレス様と隣国バロネッサ王国の第一王女、ペカリーヌ様の縁談が破談になった事はエドワード様もご存じかと思われます」
「ああ。彼女は教会の掲げる特別な聖女になったからと、そう聞いている」
「はい。国王陛下は二人の結婚を機に、両国の絆を深めようと望まれていました。ですが不幸な事に――いえ、不幸と言うのは失言ですね。とにかく、二人の婚約は解消されてしまいました」
幸か不幸かは、見る立ち位置によって変わる。
そのため、エーデは言葉を言い直す。
「けっしてその事に関して……我が国は一切不満を表明する事はありませんでした。エルロンド教の吉事に異を唱えるのは賢明でなかったのと、それと……」
エーデが俺を見ながら、口ごもる。
「私の起こした事件があったから、表立って非難する訳にもいかなかった……か」
「まあ……そうなります。ですが、けっしてガイオス様はその事でエドワード様を責めるおつもりはありません。既に十分な罰を受けられていらっしゃるので」
責めるつもりはないって言葉が、恩着せがましく聞こてしょうがない
まあ確実にそういう意図で言ってるんだろうが。
「まあそうだな。そもそも決定的な理由はエルロンド教会の決定で、私の起こした事件は全く関係ないからな」
心理的に貸し借りを作って、上手く掌で転がそうって気ならそうはいかない。
俺は全く気にしていない事をアピールする。
「ええ、もちろんです」
何が勿論です、だよ。
しらじらしい。
本当にそう思ってるんだったら、あんな思わせぶりに言いよどんだりしないだろうが。
「それにこの際、破談の理由は些細な事ですし」
些細な事だったら最初っからスルーしろよ。
こいつといいガイオスとい、絶対俺の事を以前の馬鹿のままだと思って話を進めようとしてるだろ。
「問題は……バロネッサ王国との結びつきを強められなかった事が、我が国にとって大問題だという点です」
「大問題?何か問題でも?」
「これはここだけお話に留めて頂きたいのですが……」
エーデが神妙な顔になる。
「ああ、じゃあ話さなくていい。今の私は所詮一介の男爵でしかないからな。国政に関する機密を聞かされても困る」
「……え?」
俺が話さなくていいと言うと、エーデが口を開いた間抜け顔になる。
どうやら拒否されるとは思ってなかったようだ。
国レベルの良く分からん情報とか、聞かされても困るだけなんだからそら断るだろうに……
「あ、その……これは国の命運を左右する非常に重大な話でして……」
「だったら猶更、たかが辺境の一領主の私如きが聞くべきではないだろう」
国の命運を左右するとか言われたら若干気になりはするが、さっきのやり取りから、この女は平気で話を盛るタイプだと俺は睨んでいるからな。
なので、この女の言葉を鵜呑みにはなしない。
俺は騙されんぞ!
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