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44――襲撃
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深い森の中、音もなく前方から巨大な蛇が姿を現す。
死の鎌の異名を持つその魔物は、最大で体長30メートルに達すると言われており、目も前のそれは、間違いなく最大クラスに分類される大きさだ。
これだけの巨体で、どうやって音もたてずに移動したのか?
正直、それが不思議でしょうがない。
「サラ!」
「うん!」
ドマさんの声にサラが答えた。
と、同時に高速で魔法を詠唱する。
詠唱は瞬く間に完了し、発動した魔法は見えない重しとなって蛇の巨体を地面に強く押し付けた。
「しゃああぁぁぁぁぁ!!」
デスシックルが雄叫びを上げ体をくねらせようとするが、そんな物を無視するかの様にその巨体は見る間に押しつぶされていく。
やがてその全身から血が噴き出し、蛇は息絶え完全に動かなくなる。
「ん」
何か足元に飛んできたと思ったら、潰された頭部から弾き出された魔物の眼球だった。
なんて言うかこう……グロいんですけど?
まあ命の取り合いだから、仕方がない事ではあるが。
「カオス様。お怪我でも?」
「ああ。いや、なんでもない」
足元に転がる少し潰れた目玉を見て顔を顰めていたのだが、そのせいでエマに怪我したと勘違いされてしまった様だ。
ていうか冷静に考えて、あの状況ではどう考えても怪我しようがないんだが?
「進もう」
ドマが先頭。
俺を中心にして、少し後方の左右にエマとサラが続く。
明かに中心にいる俺を守る配置である
基本、探索はこの並びだ。
しかしあれだな……人から見たら、今の俺はどう見えるのだろうか?
エマとドマの兄妹はともかく、幼いサラを護衛とし配置し、自分は一番安全な中心にいるこの姿。
さぞかし他人からは、見苦しく映る事だろう。
まあだが仕方がない。
ブースト抜きで考えた場合、この中では俺が一番弱いからな。
特にサラの強さは頭一つ二つ抜きんでていた。
恐らくドマエマ兄妹の二人がかりでも、宝玉で超強化された彼女には敵わないだろうと思われる。
言っておくが、ドマとエマも決して弱くはないぞ。
宝玉でのポテンシャル増幅も含めて考えれば、恐らくこの前手合わせしたガープスと同等レベルか、それ以上の腕前を彼らは持っている。
つまり、それだけサラの強さが異常だと言う事だ。
さっきの蛇だって、魔物としてはかなり高レベルだった。
それを文字通り瞬殺だ。
やっぱハイエルフって種族はすげぇわ。
ああそうそう、此処は帝国東部にあるケラブの大森林と呼ばれる場所だ。
西部にいた俺達は、帝国を綺麗に横断してここまでやって来ていた。
その目的は幻獣である。
皇帝からこのケラブの森にある大樹での目撃情報を貰えたので、遥々やって来たという訳だ。
力か情報か。
あるいはその両方を得るために。
「ん?」
暫く魔物は姿を現さず、俺達は順調に進んで行く。
だが暫くすると、森の中に靄が立ち込め始めた。
視界が悪いのは宜しくないので休憩しようか少し迷ったが、結局そのまま進む事にする。
――サラ達がいたからだ。
本来、視界の悪い状態で動き回るのは避けなければならない行動である。
だがエルフ達には、人間にはない超感覚があった。
なので、靄の中でも問題なく進む事が出来る。
エルフと言うのは、本当に優れた種族だ。
「何か……凄く嫌な感じがします」
サラの言葉に、俺達は足を止める。
振り返って見ると、彼女の顔が不快気に歪んでいた。
「敵か?」
「分かりません……でも、何故だか凄く嫌な感がするんです」
ドマとエマに視線を送るが、二人は首を横に振る。
嫌な物を感じとっているのは、サラだけの様だ。
「わかった。とにかく魔法で確認してみてくれ」
ただの気のせいかもしれないが、一応確認しておいた方が良いいと判断する。
指示を出すと、サラは頷き魔法を唱えた。
詠唱は一瞬で完了し、彼女を中心にぼんやりとした光が放射状に広がっていく。
「大きな物は何も引っ掛かりませんでした」
「そうか、なら警戒した方が良いかもな」
「え!?」
何も引っ掛かっていないのに、警戒すべきだと言った俺の言葉にサラが驚く。
普通、大型の生命を感知できなかったのなら警戒不要と考えるだろう。
だがサラの魔法の感知範囲というのは、とんでもなく広い。
魔物の徘徊するであろう森の中で、広範囲にわたってその存在が掴めないというのなら、それは逆に異常事態だ。
もちろん、たまたま魔物達の居ないスポットが出来ていて、そこにいるだけの可能性もある。
だがサラが嫌な予感と、その可能性がたまたま重なったとは考え辛かった。
ここは何かあると考えるべきだ。
「警戒しながら進もう」
「はい」
「了解です」
止まっていても仕方がないので、警戒度を上げてゆっくりと進む。
どういう異常事態なのかは現状では判断がつかないが、最悪どうしようもなくなったら転移で逃げればいいだけの事。
そもそも、今いる面子なら余程の事がない限りどうにでもなる。
「霧が濃くなって来たな。」
更に霧が濃くなり、数メートル先も見通せなくなって来た。
エルフに超感覚が備わっているとはいえ、物事には限度がある。
お互いが視認できないレベルになるのは流石にまずい。
戦闘になった際、同士討ちが発生しかねないからだ。
「サラ、嫌な感じってのは?」
「さっきよりも、ずっと強くなってます」
「ふむ……しょうがない。いったん帰るか」
まあ転移で瞬時にこの場所までは戻って来れる。
流石にこれ以上の無理は――
「残念ながら、もう遅い」
その時、男の声が森の中に響いた。
ドマを見るが、彼は無言で首を横に振る。
相手の気配を察知できていない様だ。
それはエマとサラも同じようだった。
「何者だ!」
俺は声を張り上げた。
正体不明。
しかもサラ達に気配を感じさせない様な相手だ。
できれば問答無用で転移して逃げたかった所だが、相手が闇の使徒なら何か情報を得るチャンスでもある。
迷った末、俺は相手の確認を優先した。
「くくく……闇の使徒と言えば分かるだろう」
ビンゴだった。
自害される確率は高いが、可能ならば身柄を確保したい所だ。
それと……ここに奴らがいると言うのなら、幻獣がこの森にいる可能性は高いだろう。
依然襲ってきた奴らが、幻獣の出入り口を見張っている様な事を言っていたからな。
「こそこそ隠れていないで姿を表わせ!」
「その必要は無い。何故なら、貴様らは我らが神の力によって滅びるのだからな!」
背筋に寒気が走る。
何かが……
「これはっ!?」
突如、前方によく分からない白い塊が生まれる。
それは周囲の霧を吸いこみ出し、爆発的に膨らんでいく。
それに従い、視界がクリーンになった事で気づいた。
周囲の木々が枯れ果ててしまっている事に。
まるで霧と共に、あの白い塊が森の生命力を吸い尽くしてしまった様な……
「さあ!姿を現すのだ!災禍の種よ!」
大きく膨れ上がった白い塊が黒く変色し、角を生やした一つ目で四足の魔物へと姿を変えていく。
かなり大きい。
象を一回り大きくした様なサイズだ。
「災禍ってのは何だ!」
男の言葉。
災禍に引っ掛かった俺は、情報収集もかねて大声で相手に尋ねる。
まあ返答が帰ってきたらラッキーと言った所ではあるが。
「くくく。あの世への手土産に教えてやろう。これはお前達が厄災と呼ぶ物の一部だ」
え!?厄災?
その一部ってなんだ?
厄災は切り離せるって事か?
「その圧倒的な力の前に絶望し、果てるがいい!」
「ぶおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
男の言葉と共に、黒い一本角の獣が咆哮した。
その圧倒的な肺活力から生み出される声量に、俺は吹き飛ばされそうになる。
厄災の一部という言葉が本当かどうかは分からないが、こいつがかなりの強敵である事は疑い様がない。
どうやら気を引き締めていく必要がある様だ。
死の鎌の異名を持つその魔物は、最大で体長30メートルに達すると言われており、目も前のそれは、間違いなく最大クラスに分類される大きさだ。
これだけの巨体で、どうやって音もたてずに移動したのか?
正直、それが不思議でしょうがない。
「サラ!」
「うん!」
ドマさんの声にサラが答えた。
と、同時に高速で魔法を詠唱する。
詠唱は瞬く間に完了し、発動した魔法は見えない重しとなって蛇の巨体を地面に強く押し付けた。
「しゃああぁぁぁぁぁ!!」
デスシックルが雄叫びを上げ体をくねらせようとするが、そんな物を無視するかの様にその巨体は見る間に押しつぶされていく。
やがてその全身から血が噴き出し、蛇は息絶え完全に動かなくなる。
「ん」
何か足元に飛んできたと思ったら、潰された頭部から弾き出された魔物の眼球だった。
なんて言うかこう……グロいんですけど?
まあ命の取り合いだから、仕方がない事ではあるが。
「カオス様。お怪我でも?」
「ああ。いや、なんでもない」
足元に転がる少し潰れた目玉を見て顔を顰めていたのだが、そのせいでエマに怪我したと勘違いされてしまった様だ。
ていうか冷静に考えて、あの状況ではどう考えても怪我しようがないんだが?
「進もう」
ドマが先頭。
俺を中心にして、少し後方の左右にエマとサラが続く。
明かに中心にいる俺を守る配置である
基本、探索はこの並びだ。
しかしあれだな……人から見たら、今の俺はどう見えるのだろうか?
エマとドマの兄妹はともかく、幼いサラを護衛とし配置し、自分は一番安全な中心にいるこの姿。
さぞかし他人からは、見苦しく映る事だろう。
まあだが仕方がない。
ブースト抜きで考えた場合、この中では俺が一番弱いからな。
特にサラの強さは頭一つ二つ抜きんでていた。
恐らくドマエマ兄妹の二人がかりでも、宝玉で超強化された彼女には敵わないだろうと思われる。
言っておくが、ドマとエマも決して弱くはないぞ。
宝玉でのポテンシャル増幅も含めて考えれば、恐らくこの前手合わせしたガープスと同等レベルか、それ以上の腕前を彼らは持っている。
つまり、それだけサラの強さが異常だと言う事だ。
さっきの蛇だって、魔物としてはかなり高レベルだった。
それを文字通り瞬殺だ。
やっぱハイエルフって種族はすげぇわ。
ああそうそう、此処は帝国東部にあるケラブの大森林と呼ばれる場所だ。
西部にいた俺達は、帝国を綺麗に横断してここまでやって来ていた。
その目的は幻獣である。
皇帝からこのケラブの森にある大樹での目撃情報を貰えたので、遥々やって来たという訳だ。
力か情報か。
あるいはその両方を得るために。
「ん?」
暫く魔物は姿を現さず、俺達は順調に進んで行く。
だが暫くすると、森の中に靄が立ち込め始めた。
視界が悪いのは宜しくないので休憩しようか少し迷ったが、結局そのまま進む事にする。
――サラ達がいたからだ。
本来、視界の悪い状態で動き回るのは避けなければならない行動である。
だがエルフ達には、人間にはない超感覚があった。
なので、靄の中でも問題なく進む事が出来る。
エルフと言うのは、本当に優れた種族だ。
「何か……凄く嫌な感じがします」
サラの言葉に、俺達は足を止める。
振り返って見ると、彼女の顔が不快気に歪んでいた。
「敵か?」
「分かりません……でも、何故だか凄く嫌な感がするんです」
ドマとエマに視線を送るが、二人は首を横に振る。
嫌な物を感じとっているのは、サラだけの様だ。
「わかった。とにかく魔法で確認してみてくれ」
ただの気のせいかもしれないが、一応確認しておいた方が良いいと判断する。
指示を出すと、サラは頷き魔法を唱えた。
詠唱は一瞬で完了し、彼女を中心にぼんやりとした光が放射状に広がっていく。
「大きな物は何も引っ掛かりませんでした」
「そうか、なら警戒した方が良いかもな」
「え!?」
何も引っ掛かっていないのに、警戒すべきだと言った俺の言葉にサラが驚く。
普通、大型の生命を感知できなかったのなら警戒不要と考えるだろう。
だがサラの魔法の感知範囲というのは、とんでもなく広い。
魔物の徘徊するであろう森の中で、広範囲にわたってその存在が掴めないというのなら、それは逆に異常事態だ。
もちろん、たまたま魔物達の居ないスポットが出来ていて、そこにいるだけの可能性もある。
だがサラが嫌な予感と、その可能性がたまたま重なったとは考え辛かった。
ここは何かあると考えるべきだ。
「警戒しながら進もう」
「はい」
「了解です」
止まっていても仕方がないので、警戒度を上げてゆっくりと進む。
どういう異常事態なのかは現状では判断がつかないが、最悪どうしようもなくなったら転移で逃げればいいだけの事。
そもそも、今いる面子なら余程の事がない限りどうにでもなる。
「霧が濃くなって来たな。」
更に霧が濃くなり、数メートル先も見通せなくなって来た。
エルフに超感覚が備わっているとはいえ、物事には限度がある。
お互いが視認できないレベルになるのは流石にまずい。
戦闘になった際、同士討ちが発生しかねないからだ。
「サラ、嫌な感じってのは?」
「さっきよりも、ずっと強くなってます」
「ふむ……しょうがない。いったん帰るか」
まあ転移で瞬時にこの場所までは戻って来れる。
流石にこれ以上の無理は――
「残念ながら、もう遅い」
その時、男の声が森の中に響いた。
ドマを見るが、彼は無言で首を横に振る。
相手の気配を察知できていない様だ。
それはエマとサラも同じようだった。
「何者だ!」
俺は声を張り上げた。
正体不明。
しかもサラ達に気配を感じさせない様な相手だ。
できれば問答無用で転移して逃げたかった所だが、相手が闇の使徒なら何か情報を得るチャンスでもある。
迷った末、俺は相手の確認を優先した。
「くくく……闇の使徒と言えば分かるだろう」
ビンゴだった。
自害される確率は高いが、可能ならば身柄を確保したい所だ。
それと……ここに奴らがいると言うのなら、幻獣がこの森にいる可能性は高いだろう。
依然襲ってきた奴らが、幻獣の出入り口を見張っている様な事を言っていたからな。
「こそこそ隠れていないで姿を表わせ!」
「その必要は無い。何故なら、貴様らは我らが神の力によって滅びるのだからな!」
背筋に寒気が走る。
何かが……
「これはっ!?」
突如、前方によく分からない白い塊が生まれる。
それは周囲の霧を吸いこみ出し、爆発的に膨らんでいく。
それに従い、視界がクリーンになった事で気づいた。
周囲の木々が枯れ果ててしまっている事に。
まるで霧と共に、あの白い塊が森の生命力を吸い尽くしてしまった様な……
「さあ!姿を現すのだ!災禍の種よ!」
大きく膨れ上がった白い塊が黒く変色し、角を生やした一つ目で四足の魔物へと姿を変えていく。
かなり大きい。
象を一回り大きくした様なサイズだ。
「災禍ってのは何だ!」
男の言葉。
災禍に引っ掛かった俺は、情報収集もかねて大声で相手に尋ねる。
まあ返答が帰ってきたらラッキーと言った所ではあるが。
「くくく。あの世への手土産に教えてやろう。これはお前達が厄災と呼ぶ物の一部だ」
え!?厄災?
その一部ってなんだ?
厄災は切り離せるって事か?
「その圧倒的な力の前に絶望し、果てるがいい!」
「ぶおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
男の言葉と共に、黒い一本角の獣が咆哮した。
その圧倒的な肺活力から生み出される声量に、俺は吹き飛ばされそうになる。
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