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EP:31 ファーストミッション

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 ジャブ!

 ジャブジャブ――……。

「んー?」

 お湯に気持ちよく浸かっていたゲイリーの元に、荒くお湯を、音を立てる誰かがやって来た。

 その方向に、
「? 誰ー?」
 ゲイリーが顔を向けた。

 そこには2人の姿があった。

「あァ゛?」

「え」

 囚人のふりをする。
 セスナとフレディだ。

 セスナの聞き返しに、ゲイリーも少し引け、たじろいでしまう。
「あんだよ! こっち見てんじゃねェよ!」
「っちょ! っせ、――…ボンゾイさん!?」
 照れ隠しに、ゲイリーを威嚇してしまうセスナに、
「あー~~ごめんなさい! この人、口が悪いんだ! 気を悪くしないでくれ!」
 なんとか誤魔化そうと、フォローするフレディだった。
 必死な物言いに、ゲイリーも頷いた。
「うんーあーボク、出た方がいいですねー?」
 空気を読んで出ようとするゲイリーに。
 あろうことかセスナは。

「手前が、昨日の看守の相手だろォ?」

 からかい口調で、ゲイリーに尋ねた。
 にたにた、と表情を浮かべながら。
「ゲイリー=ヤング」
 そんなセスナに、ゲイリーの眉間もしわを寄せていく。
 口もへの字に折り曲がっていくのが分かる。
 垂れ目も細められていく。

「…だから、何?」

 短く、そう聞き返すゲイリー。
 涼れた声で、

「悪趣味ー」

 そう吐き捨てて、上がろうとするも。
 ゲイリーは、真ん中の岩の前にいたのに対し。
 後追いして来たセスナはその前に座る格好になっており。
「おいおい。誰が出ていぃっつたんだよォ゛? あァ゛?」
 セスナがゲイリーの胸に手を伸ばし。
 岩に身体を押しつけてしまう。
「っぐ! ッの、ぉお! なんなんだよ!」
 さすがのゲイリーも、声を荒げた。
「別にとって食おうっつーんじゃねェよ!」
「じゃあ、どうしてこんな真似をすんだよ!」

「どうして、だァ゛??」

 セスナの口端も吊り上がっていく。
 だが。
 すぐに――…。

「…どうして、だ??」

 自問してしまった。
 そんな彼を嘲笑しながら。
「ゲイリー君に、その…聞きたくて。つい、ちょっかいだしちゃったんだ」
 フレディが、申し訳ないといった表情と。
 口調で、ゲイリーに謝った。
「ちょっとー意味、分かんないー」
「うん。だよねー? あは、はは…」

「胸、痛い。退けてよ」

 低い口調でゲイリーがセスナに言う。
 すると、彼もそれに従い素直に手を離した。

「っち!」

 舌打ちするセスナを、冷ややかに睨みつけるゲイリー。
 重くなった空気の中。

「ゲイリー。遅くなったけど、私は…ジェイソンだ。よろしく」

「あーうん…」
 セスナと一緒に居るフレディも、ゲイリーは冷ややかに見る。
 そして、短く応えた。

「で。こっちの粗忽者は私の同業者のボンゾイさん」

「っち…」

「! あんだァ? 手前ェ~~」
 ゲイリーの舌打ちに、
「いい度胸だなァ゛!」
 立ち上がろうとするセスナの腕を引っ張り。
 それをフレディが制止させた。

「いいから! いい加減にして! ボンゾイさん‼」
 半ギレ気味に言うフレディに、
「分かった、よ」
 セスナが引き下がった。

「ボクのことなんかー放って置いてよー」

 冷淡に吐き捨てたゲイリー。
 思いもしない反撃に、セスナも声を裏返しながら。

「…大丈夫かな、って…思ってだなぁ…っくっそ!」

 しどろもどろ、と。
 そんな彼の態度に。

 っぷ。

「! 何、笑いやがってんだよ! 手前ェ!」

「心配をしてくれたのー? ボクのことを?」 

 顔を緩ませるゲイリーに、セスナの顔が紅潮した。
 決してお湯にのぼせたわけじゃない。

「いきなり乱暴したのに。おかしな奴だなー君はー」

「ああ。俺さ…俺も、そう思う」
 素直に、それを認めるセスナ。
 初めて見る萎れた彼の姿に。

「明日は雨かな?」

 フレディが宙を仰いだ。

 ◆

「? なんかゲイリーの方が騒がしいな? どうかしたのかな?」

 怪訝な顔をする安住は、行こうとしたが。
「行く必要はない。ただの痴話喧嘩だろう」
 素っ気なくも、そうフロイが言う。
「ゲイリーがぁ? んな馬鹿な! どうせ、からまれているんだよ」
 眉間にしわを寄せて。
 やはり出ようとする安住に。

「君が行く必要はないんだよ」

 強い口調で、フロイが声を張った。

「なんなんだよ。お前は、何様なんだよ」

 低く、安住はフロイに訊ねた。

「僕は…――あの看守たちの知り合いだ」

 ゆっくりとした口調で。
 少し。
 躊躇しながら。

 そう短く、素っ気なく言い。

 セスナは安住を見た。
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