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EP:40 愛しくない人、愛しい人

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「いたた~~」

「ごめんーアズミー」

 安住の横に寄り添うゲイリーの姿がフロイの目に映った。
 そして、立ち竦んでしまう。

「あ。フロイさん」
「何? どうかしたのかい?」
「どうもこうも。アズ――日本人の囚人が…なんか、風呂に入りたいって」
「? 風呂に?」

 暗視スコープゴーグルを安住に向けた。
 ベッドに腰をかけている安住は。
 全身を擦っていた。

「風呂は何時にでも入っても許可されている」

 なんともいいタイミングだとフロイも、天にも昇る気持ちだった。
 二人きりになる、いいタイミングだと。
「この日本人なら、害はないだろう」
「…あー~~そうですね~~」
 にま、と口元を緩ませているフロイに、
「そうでしたねー~~」
 苦笑交じりに言い返した。

「行くぞ。日本人」

「! あ、はい! ぁ、ゲイリー…」
 腰を浮かした安住は、咄嗟にゲイリーの顔を見下ろした。
「大丈夫だよーボクは男だよ? 何されたって平気だよー」
「や、そうじゃなくて…行かないのか? 一緒に」

「! ああ、どうしょうかなー~~」

 にこやかに言うゲイリーに、
「ぉ、お前は駄目だ! ゲイリー=ヤング!」
 慌ててフレディが言った。
「? なんでーいいじゃないかー」
「お前は、これからっ、嬲られるんだからね」
「! …今日もー?! なんで、ボクばっかりなんだよー」
 そう言い、ゲイリーが頬を膨らませる。
 少し、ベッドの奥に身体をズラしていく。

「ゲイリー…」

「あ。ボクは残るからー行って来なよーアズミー」
 軽く手を振るゲイリーに。

「う、うん」

 安住も、ゲイリーを不安げに見つめつつ。
 牢獄をフロイと一緒に出るのだった。

 ギィイイイッッ。

 ガッシャンッッ‼

「おい、携帯だ」

 フロイがフレディに投げ渡した。
 慌てて手を伸ばし、なんとか受けとった。
「それで、あのバカと連絡取れ」
「ぇ、ええ゛!?」
「…嫌なのは僕も同じだ。だが、後が面倒になるからな」
 フロイはそう吐き捨て、安住と牢獄を後にした。

「…あのーどうして、ボクなのー」

「! ぅ、煩い!」
 フレディはゲイリーの肩に手を置き、ベッドに組み敷いた。
「!? わ゛っ‼」
 フレディに見下ろされる格好になってしまう。

 暗視スコープゴーグル越しに、ゲイリーを見ている。

 そこに、持たされた携帯が震えた。
「! …それは、この人にも言ってもらえない?」
「? 誰、のことー??」

「昨日から有給で、家に帰った看守だよ」

 その言葉に、ゲイリーの顔色が青ざめていく。
「お前に乱暴した男だ」
 かたかた、と体も震えていくのが分かる。

「安心しろよ。あの人とは電話だけだ」
 携帯をゲイリーが見た。
「…嬲られるんでしょー今から」
 眉にしわがよせながら。
「うん。嫌がることするよ」
「…んーでもー君になら、いいかなーボク、君のこと嫌いじゃないよー」
 顔を横に反らしながら、ゲイリーは小さな声でフレディに言った。

「そろそろ。電話、出た方がいいんじゃないー?」
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