ノゾミノナカと悪霊迷宮の殺人鬼

ちさここはる

文字の大きさ
11 / 91

第11話 行ってきます

しおりを挟む
(ぅ、っく)

 立ち上がったはいいが。
 体中が痛い。
 それに希美も眉間にしわを寄せた。
「だ、いじょうぶ……じゃないよね……」
 桜木が、小さく漏らした。
 希美の腕を肩に回させながら。
「キツイの、かな?? やっぱり……」
「そうね。少しだけよ」
 
 全身もだが。
 一番、痛いのは敏感な部分。
 の、少し奥の場所だ。

 ――怪物の破瓜されたんだよ?

 篠崎の言葉が、思い出された。
 同時に。
「――……」
 唇に手をやり、なぞった。
 まだ、篠崎との口づけの感触が残っている。
 それがあるから、大したダメージになっていない。
 そんな気持ちだった。
 犯されたことに変わりはないのだが。
「? のなか、ちゃん?? 大丈夫なのかな??」
 呆けている希美。
 桜木の頬が膨らむ。
「え?! ぁ、ええ! だいじょ――……っく――」
 希美の表情が歪む。
 かくんと膝も折れ、床に崩れ落ちてしまう。
 桜木も一緒に。

「わ゛、あ゛?! ふきゃ‼」

 希美の頭には桜木の胸があった。
 クッション代わりになっている。
「っく……」
 苦しそうな希美に。
「そ、そうだよ! のなかちゃん!」
 桜木が手を合わせ微笑んだ。
「車いす! 車いすを探そうよ!」
「――車、いす??」
「うん♪ 少しくらい借りる分ならいいよね♡」
 腰が砕けている希美。
 桜木が立ち上がった。

「私、記憶にあるんだ」

 そんな桜木を見上げた。
「まどか、あなた一体――」
 桜木の提案の意味の分からない希美。
「上の、四階の家具販売のお店の入口にあるんだよ♪」
 ふふふ、と顔を手の中に隠し、
「車いす♡」
 そう告げた。
「私も、行くわ。まどか」
「ううん。私、一人で行くよ」
「まどか!」

 希美は声を上げた。
 しかし。
 桜木は、顔を横に振る。

「ううん。私、一人で行かせて」

 折れない桜木に、希美が折れてしまう。
 がっくりと、項垂れた。
「いいわ。私は、ここで待っているわ」
「うん。のなかちゃん!」

 桜木は希美に、
「はい。これ返すね」
 携帯を渡した。
「これはまどかが持っていた方がいいわ」
 希美が、桜木に渡し返す。
「ううん。これも持ってって、のなかちゃん」
「でも、まどか。あなたが――」
「大丈夫だよ。もし、上に電話があったらかけたいんだよ」
 希美の目が大きくなった。
 手の中に携帯を見た。

「――連絡、取れるのかしら……」

 か細い声で希美が言う。
 そんな希美の腕を掴み、
「一応、違うところに行こう。のなかちゃん」
「どこに隠れたって同じよ」
「ここの階の雑貨にはね、子供用の玩具売り場もあるんだよ」

 二階、雑貨販売店。

 ――の一つ、トイパラ。
 国内で展開する玩具のチェーン店。

 0歳から遊べた玩具からある。
 そう。

 おもちゃの家もある。

「ビニールハウスより、プラスチックの方がいいよね」

 少し頑丈なおもちゃの家。
 窓だってある。
 そこへ、希美を寝かせた。
「じゃあ、行って来るよ。のなかちゃん」
「ええ、あ。待って、まどか」

 身体を起き上がらせ、
「は、破瓜って知っているかしら?」
 顔を朱に染め尋ねた。
 そういう場合でもないというのに。

 カカカカカカカカカ!

「ぅ、うん……し、ってる、ょ???」

 桜木の視線が泳いだ。
 しかし、すぐに。

「すぐに帰るからね! のなかちゃん!」

 桜木は走って行ってしまう。
 残された希美は。

「まどか。破瓜ってどういう意味なの?」

 そう、ぽつりと呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...