妖魔は言った「それでも世界は美しい」

たき火

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7.今年も派手にやってるね

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 ヒューーーーーーッ ドーーン!!
 ヒュルルルル・・・・・・    ドドン ドン ドーーン!!
 
「すごい・・・ 音」

 シナは両手にりんご飴とフランクフルトを持ちながら、口を開けて夜空を見上げていた。
 私は隣で焼きそばとタコ焼きを持たされている。
 祭りには私とシナ、ジェイクとアリスの四人で行くことにした。シナを三人で囲み、顔や首の模様を周囲の人に見られないようにするためだ。もし妖魔のことを知っている知識人がいれば、模様を見ただけで妖魔だとバレてしまう。祭りに行くとき帽子を被るように勧めたが、それではオシャレが台無しになると当人に怒られた。

 祭りの会場へ来るや否や、ずらっと並ぶ屋台を目にしてシナは好奇心の赴くままに駆け出して行く。危険だから手を掴んで引き戻すが、そのときの私を睨みつける姿には恐怖を覚えた。屋台へ行くことを阻害され、もの凄く嫌だったのだろう。きっとシナを本気で怒らせたら相当怖い。
 
 彼女はどちらかというと本能のまま行動したいようで、身の安全よりも自由を愛している。それを象徴するように、目に写った欲しいものや食べたいものは全部買わされ、みんなの両手は塞がっていた。一言でいうと遠慮を知らない。

「今年も派手にやってるねー」

 ジェイクは呑気に祭りの雰囲気に浸っている。
 マリのシンボル旗が家々の二階窓や玄関ドアに吊るされ、色とりどりの明かりが街並を違う世界に変えていた。大通りは歩行者天国で、飲食店が用意したテーブルには沢山の人たちで賑っている。

「アリスは人気なんだね、みんな見てるぞ」

 シナが言うとアリスは応える。

「本当だね、みんな見てるわね」

 何人もの人がアリスに注目しているのがわかる。理由は単純だ。アリスが美人だからだ。
 アリスの顔は品があり、端麗な顔立ちをしている。街ではそれが有名で、彼女に恋心を持つ青年も多い。
 
「アリスちゃん、今日もかわいいねぇ。こっちで飲もうよ」

 酔っ払った若い男が顔を赤くして話しかけてくる。

「ありがとう。でもお酒飲めないからまた今度ね」

 そう言って去なすと、ジェイクがそのやり取りを見てからかう。

「今日も巧みにあしらうねぇ。酒飲むじゃん」

「うるさいな」

「お前はジータしか見えないもんな」

「はは、そうね。・・・でもちょっと違うわ」

「ん? どう言うことだ?」

「いーの」

 アリスはそう言ってシナの方を向き、別の話を始めた。

「ジータ、どういうこと?」

「さあ」

 アリスが私に好意を持っていることは知っている。なにがきっかけで彼女にそのような感情が生まれたか分からない。
 しかし私は彼女に対して、特別な感情を持っていない。特別な感情というものを私は知らないのだ。

「皆様!本日はお越しくださってありがとうございます!今年もこのような盛大な祭りを開催することができ、とても嬉しく思います!」

 街の中央公園近くにある広場から女性の声が聞こえる。広場にはステージが設営されていて、これから開催式を始めるらしい。私たちは広場へ向かい、少し離れた木の影から式の様子を見ることにした。
 
 シナは最後に屋台で買ったリンゴ飴を頰張っている。
 人間に対して警戒する様子は無くなっていた。
 昨日の怯えている顔とは一転、よく笑う姿が見られるようになったのはアリスのおかげだ。彼女は私と違ってとてもコミュニケーション能力が高く、そのため皆に好かれている。きっと誰とでも訳隔たりなく接し、損得勘定で動かない彼女の人の良さに、シナは安心して心を開いたのだ。
 そしてシナ自身も異常な程に適応能力が高い。勝手な想像だがおそらく人間界と魔界はかなり違う。彼女は魔界にはない様々な物に興味を示し、理解しようとしている。私はもう八百屋でのように、人間を威嚇して攻撃するようなことはないだろうと思った。

 実行委員長の挨拶が始まるまでは。

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