10 / 12
10. マーガレット
しおりを挟む
「目が覚めたようね。傷口は消毒したわ。弾丸は貫通していたから安心して。安静にしてれば治るはずよ」
声がする方へ顔を向けると、アリスが椅子に座っていた。そして立ち上って私の額に手をのせた。少し潤んだ瞳が安心した笑みに変わっていく。
銃で撃たれた左肩は包帯でしっかりと固定されていた。腕を動かすと激痛が走るが、気にせず傷口の状態を確かめた。そんなに酷くないみたいだ。
「いつ意識を失ったんだ?」
喉が乾燥し声がかすれている。炎の煙を吸ったからなのか少し口の中が苦い。その様子を見てアリスはビンに入った水をコップに注いで渡してくれた。
「車に乗ってるときよ」
そうだ、私は祭りの会場から車に乗って脱出したのだ。あの時は会場が燃えて関係者たちが騒いでいた。消防車のサイレンも聞こえた気がする。窓から統括者を探したが見つからず、そしてそこからの記憶がない。
少し錯乱していて頭が痛い。頭に手をやり目を閉じる。どこからか花の香りがした。その香りはゆっくりと私の心を落ち着かせてくれた。
ベットの反対側へ目をやると、青色の花瓶に黄色い花が生けられていた。
この花は・・・ なんだっけ。
「マーガレットね」
アリスがフフフと笑って教えてくれた。
「なんで笑うんだ?」
「だって難しい顔して花を見ていたから」
花の名前を思い出せず困った顔がアリスを愉快にさせていたらしい。
普段アリスは花屋で働いている。丁寧にまるで自分の子どもの様に優しく花の世話をする姿は、何人もの男たちの心を奪っていた。なぜ花屋で働いているのか聞いたことがある。ただ花が好きだからとだけ言っていた。
「どれくらい意識を失っていたんだ?」
「3日間よ」
「ウソだろ! 3日間も!?」
「ウソ。1時間よ」
意識を失っていたのは3日間ではなく1時間だった。
なぜ冗談だと気づかなかったんだろう。アリスの服は炎の煙で汚れ、頬も黒くなっている。よく見ればすぐにウソだと気づく。アリスは昔から冗談を言って私をからかう。
「やっぱりダーチはいいね」
目を細め私を見ている。
「なにが?」
私に近づいて顔を覗く。そしてほっぺたに指をあてる。人差し指が氷のように冷たい。
「あなたのびっくりして驚いた顔がだよ」
後ろに振り返り椅子に座ると、ボトルからコップに水を注いで飲む。
「そうなんだ」
理解できなかったがとりあえず返事をした。
「怒った?」
「別に怒ってないよ」
怒る理由はない。
「よかった」
外からパトカーのサイレンが聞こえる。多分祭りをめちゃくちゃにした私たちを探しているんだろう。
「みんなは?」
「下にいるわ。みんな無事よ」
窓のカーテンを少し開けて外を眺めながら答える。
「・・・ここはどこなんだ?」
「レイラの店よ」
「レイラ?」
「さっき車で駆け付けてきてくれた人よ」
「そうか」
私は部屋を見渡した。
綺麗に片付いた部屋には女性の服がハンガーに掛けられていた。
「どう?女の人のベットは」
振り向いてニヤリと笑って聞いてくる。
「別に普通だよ」
「そう言うと思った」
ケタケタ笑って私の寝ているベットに腰を下ろした。
顔がよく見え普段より近い距離から目に映る容姿は、今まで会った人間の誰よりも美しく思える。
じっと見つめられている状況に耐えられず話題を変えた。
「シナ、手から炎を出していたな。あれが魔力なのか?」
「そうみたい。凄かったね」
そう言うとアリスは両手から炎を出す真似をする。
あんな炎今まで見たことない。会場まで約100m程あるにもかかわらず燃やし尽くしていた。
「家族を殺した船長をシナが燃やしたんだな」
燃える船長を思いだす。
「自分が倒したかった」
「うん」
「自分がもっと強かったら・・・」
私は独り言のように呟いていた。
「うん。次会った時にはもっと強くなっていないとね」
包帯が巻かれていない右肩をポンと叩かれた。
「え?」
「船長まだ生きているみたいよ」
がんばれ!と顔が言っている。
「これもウソだろ」
「本当よ」
優しい目が真剣な目つきに変わる。
「ほんとうに本当なの?」
「本当です」
信じられないけど本当みたいだ。
「やっぱりびっくりして驚いた顔いいね」
そう言いながらアリスは右肩をポンポン叩いていた。
声がする方へ顔を向けると、アリスが椅子に座っていた。そして立ち上って私の額に手をのせた。少し潤んだ瞳が安心した笑みに変わっていく。
銃で撃たれた左肩は包帯でしっかりと固定されていた。腕を動かすと激痛が走るが、気にせず傷口の状態を確かめた。そんなに酷くないみたいだ。
「いつ意識を失ったんだ?」
喉が乾燥し声がかすれている。炎の煙を吸ったからなのか少し口の中が苦い。その様子を見てアリスはビンに入った水をコップに注いで渡してくれた。
「車に乗ってるときよ」
そうだ、私は祭りの会場から車に乗って脱出したのだ。あの時は会場が燃えて関係者たちが騒いでいた。消防車のサイレンも聞こえた気がする。窓から統括者を探したが見つからず、そしてそこからの記憶がない。
少し錯乱していて頭が痛い。頭に手をやり目を閉じる。どこからか花の香りがした。その香りはゆっくりと私の心を落ち着かせてくれた。
ベットの反対側へ目をやると、青色の花瓶に黄色い花が生けられていた。
この花は・・・ なんだっけ。
「マーガレットね」
アリスがフフフと笑って教えてくれた。
「なんで笑うんだ?」
「だって難しい顔して花を見ていたから」
花の名前を思い出せず困った顔がアリスを愉快にさせていたらしい。
普段アリスは花屋で働いている。丁寧にまるで自分の子どもの様に優しく花の世話をする姿は、何人もの男たちの心を奪っていた。なぜ花屋で働いているのか聞いたことがある。ただ花が好きだからとだけ言っていた。
「どれくらい意識を失っていたんだ?」
「3日間よ」
「ウソだろ! 3日間も!?」
「ウソ。1時間よ」
意識を失っていたのは3日間ではなく1時間だった。
なぜ冗談だと気づかなかったんだろう。アリスの服は炎の煙で汚れ、頬も黒くなっている。よく見ればすぐにウソだと気づく。アリスは昔から冗談を言って私をからかう。
「やっぱりダーチはいいね」
目を細め私を見ている。
「なにが?」
私に近づいて顔を覗く。そしてほっぺたに指をあてる。人差し指が氷のように冷たい。
「あなたのびっくりして驚いた顔がだよ」
後ろに振り返り椅子に座ると、ボトルからコップに水を注いで飲む。
「そうなんだ」
理解できなかったがとりあえず返事をした。
「怒った?」
「別に怒ってないよ」
怒る理由はない。
「よかった」
外からパトカーのサイレンが聞こえる。多分祭りをめちゃくちゃにした私たちを探しているんだろう。
「みんなは?」
「下にいるわ。みんな無事よ」
窓のカーテンを少し開けて外を眺めながら答える。
「・・・ここはどこなんだ?」
「レイラの店よ」
「レイラ?」
「さっき車で駆け付けてきてくれた人よ」
「そうか」
私は部屋を見渡した。
綺麗に片付いた部屋には女性の服がハンガーに掛けられていた。
「どう?女の人のベットは」
振り向いてニヤリと笑って聞いてくる。
「別に普通だよ」
「そう言うと思った」
ケタケタ笑って私の寝ているベットに腰を下ろした。
顔がよく見え普段より近い距離から目に映る容姿は、今まで会った人間の誰よりも美しく思える。
じっと見つめられている状況に耐えられず話題を変えた。
「シナ、手から炎を出していたな。あれが魔力なのか?」
「そうみたい。凄かったね」
そう言うとアリスは両手から炎を出す真似をする。
あんな炎今まで見たことない。会場まで約100m程あるにもかかわらず燃やし尽くしていた。
「家族を殺した船長をシナが燃やしたんだな」
燃える船長を思いだす。
「自分が倒したかった」
「うん」
「自分がもっと強かったら・・・」
私は独り言のように呟いていた。
「うん。次会った時にはもっと強くなっていないとね」
包帯が巻かれていない右肩をポンと叩かれた。
「え?」
「船長まだ生きているみたいよ」
がんばれ!と顔が言っている。
「これもウソだろ」
「本当よ」
優しい目が真剣な目つきに変わる。
「ほんとうに本当なの?」
「本当です」
信じられないけど本当みたいだ。
「やっぱりびっくりして驚いた顔いいね」
そう言いながらアリスは右肩をポンポン叩いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる