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その出会い
とある男
しおりを挟む「カットー!!!いやあ、新河くんお疲れー!今回もよかったよー!」
そんな監督の声にほっと胸を撫で下ろし、ありがとうございますと微笑む。
俺は新河 凛。
職業は俳優である。
五年前、まだ俺が高校生だったときに、町中を歩いていてスカウトされたのをきっかけに俳優という職業をやらせていただいているが、
「(もっと、頑張らなきゃなあ…)」
プロ意識、なんて大層な代物じゃないが、それでもやるからには認めてもらいたいしその為には努力したい。
今日の仕事はこれで終わりだったはず。
早く家に帰って録画している自分のドラマを見て、及第点を書き出さないと。
そんなことを1人悶々と考えていると、後ろから声がかかる。
「凛くん、これからキャスト陣でご飯行くんだけど凛くんどうかな?」
この子は今人気急上昇中の女優、柊 愛花ちゃんだ。
今年20歳になったばかりで、俺より二つも歳が下なのにすごいなあ、といつも思う。
ニコニコと可愛らしい笑顔を振りまいている彼女にこちらも釣られてニコニコとしていると、それを肯定と取ったのか腕をグンッと引っ張られる。
ちょ、ちょっとまって。
「わわ、ごめんね愛花ちゃん!今日俺やらなきゃいけないことがあるんだ!また今度参加させてもらうよ」
「嘘ばっかり!凛くんこの間もそう言って断ったじゃない!このドラマの主役は凛くんなのに、どうして1度も参加しないの!?」
それは、だって俺は人一倍頑張らなきゃいけないから。
そうとは言えず、思わず口を噤んだ。
確かに何回かある食事会も全て断ってしまっているのは事実だ。
行きたくないわけじゃないが、でもやっぱり芝居の研究をしないと。俺はもっと上に行きたいし、もっとたくさんの人に俺という存在を認識してもらいたい。
でもこうも強い視線を向けられてしまうと、ヘタレな俺は強く出れなくなってしまう。本当にヘタレだ。
「まーまー、愛花ちゃん。凛にだって予定はあるだろ?クランクアップまでまだ日はあるんだし、次は参加ということで今回は許そう?な?」
そんな俺に現れた救世主。
俺の親友で、俳優仲間である篠田 多月だ。
俺が助かった、という目線を多月に向けるとニッコリ笑ってウィンクをよこしてくる。
男前だ…女だったら確実に惚れてる。
「~っ、もうっ、わかりました!次は絶対来てくださいね!約束ですよ!!」
くるん、と長い髪を靡かせながら、スタジオから出ていく愛花ちゃん。
申し訳ないが、すごくホッとする。ああいう気の強い女の子と俺は向かないのかもしれないなあ。
「貸1、な」
コツン、肩を拳で軽く叩かれて慌てて多月にお礼を言う。
「まじで助かったよ!ありがとう!今度なんか奢る」
「あはは、嘘だよ気にすんな。どうせまた研究だろ?」
俺が無言で頷くと、多月は満足そうに笑った。
彼のこの爽やかないい人感と万人受けする顔の良さが、周りを惹き付けて離さないんだろうなあ、と人事のように思う。
「あの子、ちょっと気が強くて強引なところあるから気を付けろよ?あんまりいい噂も聞かないしな」
「そうなの?知らなかった。まあ所詮噂だし、クランクアップまでお互い頑張ろうな。じゃあ」
多月は、お前のそういうところ好きだわなんて言って手を振ってくる。
それに応えてから少し急ぎ足でマネージャーの元へ向かった。
俺にはやりたいことがたくさんある。
その為には足を休めている暇なんてないのだ。
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