world end

PeDaLu

文字の大きさ
16 / 34

消失

しおりを挟む
「そろそろかしら」

「そうね。トゥワイスが切れる頃ね」

  トゥワイス、300秒間、スキルレベルを倍増させるスキル。そうか。あの3人の尋常じゃない強さは、このスキルの恩恵なのか。切れてしまったらどうなるのだろうか。苦戦し始めるのだろうか。

「ヘルエスさん、もう一度トゥワイスを使うことは出来ないのでしょうか?」

「出来ないわね。2人で発動するインペアーズスキルは日に一度限りなの。代わりに私がストレングスをかけるわ。体力が多ければ多いほど攻撃力が上がるわ」

  この調子なら、ヴェリントンのマスター、ガルのところにたどり着くまでそう時間はかからないだろう。

「ヘルエスさん、ジェシカさん。ガルはみんなのスキルでぶちのめしてローラインを奪還する、って感じで良いんですよね?で、私はお二人に近づく者をぶん殴るって算段で」

「そうね。あなたが殴り飛ばした相手をヘルエス姉さんが攻略、IDを剥奪してご退場頂く流れになるわね」

  IDを剥奪?攻略?どういうことだ。このスキルを使って肉弾戦を行うのではないのか?

「あの、IDを剥奪というのはどういうことなのでしょうか」

「てめぇ、そんなことも知らずにこの作戦に参加してるのかよ。敵の集団のリーダーはほぼID持ちだ。じゃないとこちらを攻撃できないからな。この世界の真の攻撃ってのはスキルを使った肉弾戦じゃねぇ。肉弾戦スキルを使って相手の攻略コード入力を阻害するツールに過ぎねぇ」

  モモにあきれ顔で言われる。攻略コード……そうか、あのブルーやイエロードッグでやっていた攻略がこの世界で対人攻略に使われるのか。このことはセルシスは知っているのか?隊列編成的には中衛のローズ、セルシスの二人はローズがID持ちで攻略を行うのだろう。でもまぁセルシスの転移スキルがあれば攻撃なんて受けることはないだろう。

「というわけで新海くん?私は敵のID攻略に集中したいからジェシカとモモで敵を寄せ付けないようにしてね。あと、あなたのスコーチングヒートで相手を焼き尽くしてもコード攻略しなければ死なないから安心して殴り飛ばしてね」

「あの、ヘルエスさん。コード攻略された相手は一体どうなっちゃうのでしょうか?」

  これは当然の疑問だ。肉体を焼き尽くされてもコード攻略されなければ死なない。だとしたら攻略された人間はどうなるのか。虚無に落ちるのだろうか

「正直、それは私も知らないの。その場で消えちゃうから。どこに行ったのか分からないの。虚無に落ちるって説が有力だけれども。誰も確認した人は居ないって聞くわ。さて、この辺からはヴェリントンメンバー多分ほぼ全てがID持ちよ。コード攻略されそうになったら全力で相手をぶちのめして妨害しなさい。イエロードッグ程度のコード攻略スキルじゃ対抗することなんて難しいと思うから!行くわよ!」

  ヘルエスさんはそう言うと前をゆく雫たちを追いかけ始めた。くそっ!なんだよ、全員走りのスキル持ちかよ!行くわよったって走れないんじゃ追いつけない!

「なんだよクソガキ、走れないのか?」

  モモにそう言われるが矢先に首の後ろを捕まれて宙に舞う。襟元で首が締まってく゛る゛し゛い゛……。なんとかモモに獲物のように捕まれて前線に追いついた。当然、落とされてお尻が痛い。
  前線では凄まじい応酬が繰り広げられていた。腕に巻いたホログラム通信機からコンソールが投影され、それに攻略コードお打ち込みながら敵の攻撃に対応している。スイッチ!と叫びながら雫はセスと攻撃とコード攻略を交互に繰り返しているようだった。ボーゲンは強固な防御スキルを持っているようで敵を跳ね返している。
  ローズとセルシスは思った通り、攻撃の瞬間に転移してコード攻略を続けている。
  押しているように見える。相手が徐々に減り始めている。このまま行ければ俺たちの勝ちとなりそうだ。

「情けないな。この程度で」

  なんだ!?あたりを見回すが近くには誰もいない。そう。誰もいない。ヘルエスさんもジェシカさんも居なくなってる。

「くっそ!クソガキ!耳を塞げ!」

  モモにそう言われて咄嗟に耳を塞ぐ。

「なにが!なにが起きてるんだ!」

  モモはローズにこっちに来いとジェスチャーをしている。二人はこちらに転移してローズに防御スキルの発動を急がせている。

「あの野郎……、ガルの野郎!遠隔スキルの持ち主だ!通常のコード攻略可能範囲を無視して、見える範囲全てを攻略可能範囲にするスキルだ。やつの声を聞かなければ攻略対象から回避出来るはずだ!」

  モモはそう叫ぶとセルシスにも耳を塞ぐように指示をしている。防御スキルを展開中のローズさんはどうなるのだろうか。耳を塞げていない!そう思ってモモにどうすればよいか来聞こうとしたら先にこう言われた。

「ローズは問題ねぇな。何しろ耳が聞こえねぇ」

「ねぇ!ジェシカさんとヘルエスさんは!?」

  セルシスが不安そうな顔でモモに確認している。恐らくはガルに攻略されてしまったのだろう。あの瞬間から姿が見えない。

「なにやってるんだ。ガルがここに出てきたってことは、ローラインはノーマークだ。転移スキルで一気にローラインを奪還するぞ!」

  モモにそう言われてセルシスが手を繋ぎ転移スキルを発動させた。

「ローライン!」

  俺たちは無事にローラインの元に転移、奪還して闘技士の主人、ウォルスの屋敷に戻ってきた。雫とセス、ボーゲンは大丈夫なのだろうか。

「無事だったようだね。ローライン」

「ウォルスさん!ジェシカさんとヘルエスさんが!」

「分かっている。サーチスキルで君達のことはずっと見ていたからね。残念なことだ。だが、どうにもならない。私たちは私たちで出来ることを続けるのが、彼女たちを報いることにになる」

 ウォルスさんは落ち着いている。すごい胆力だ。娘が亡くなったというのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...