ざまぁされちゃったヒロインの走馬灯

海野宵人

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ざまぁされちゃったヒロインの走馬灯

11(終)

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 私の弔いが済んだ後、養父はジョルジュに子どもたちと私の死因について話すだろう。
 子どもたちに流行り病の症状が出たのは、行商人から買ったお菓子を食べた後だった。
 あの行商人は第二王子の差し金で、毒入り菓子を我が家に持ってきたのだ。あれは病死じゃなくて、毒殺だ。

 そうとは気づかず、気落ちしていた私は、再び我が家を訪れた行商人から子どもに買ってやったのと同じお菓子を買って口にした。
 上の妹の旦那さまは、食べ残しのお菓子から毒物が検出されたことをジョルジュに伝えるだろう。
 その毒を摂取したときの症状が、流行り病と同じように見えることも、併せて伝えるはず。

 すべての証拠を手にしたジョルジュは、どうするかしら。
 もう第二王子には、私を人質にして脅迫する手段は残されていない。
 第二王子は知らないのだろうけど、ジョルジュは私という弱みさえなければ、どこまでも冷徹になれる強さがあるのだ。だからきっと、彼は私の父の仇をとってくれると信じている。そして彼自身が本来いるべき場所も、取り戻すはずだ。

 すべての片がつくまでの間、私は子どもたちと一緒に遠くからずっと見守っていよう。遠く、ジョルジュのお母さまの生国の王宮にかくまわれて。

 ジョルジュがすべて終わらせたら、きっと養父が種明かしをしてあげるだろう。
 実は毒薬は、仮死状態にする薬と入れ替えてあった、と。死んだと見せかけて、私と子どもたちは彼のお母さまの国に一時的に避難しているだけだ。

 第二王子がひとさらいの組織にうちの子どもたちの誘拐を依頼したと知ったときに、養父がこの計画を立てた。きっちり証拠をつかんで、これ以上私たちに危害が及ばないようにするために。国王陛下だけでなくジョルジュのお母さまの国とも渡り合って話をつけ、家令を経由して行商人と第二王子の橋渡しをし、その他すべての段取りを整えた養父の手腕と執念には、もはや言葉もない。

 ジョルジュが事前に教えてもらえなかったのは、たぶん国王陛下の意趣返し。
 九年前に陛下はあなたに煮え湯を飲まされたのだもの、自業自得よ。

 ジョルジュ、あなたは諦めてすべてを捨てる前に、少なくともお父さまには相談すべきだった。
 あなたにはお父さまの国王陛下だけでなく、お母さまの生国という味方があるの。ひとりじゃないのよ。忘れてはだめ。

 さあ、憂いを払って、しあわせになりましょう。
 かつて母が立ったのと同じ舞台を私と子どもたちに用意してくれたなら、私はあなたの隣でいつでも機嫌よく一流の女優として輝いてみせるわ。
 ジョルジュ、愛してる。
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