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ざまぁされちゃったヒロインの走馬灯
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ジョルジュに「後を追わずに生きる」と約束させたからには、もう思い残すことは何もない。
心安らかに、子どもたちのもとへ旅立とう。
後は養父がよろしくやってくれるはずだ。
養父はまず、私が十八歳になったときに教えてくれたもうひとつの話をジョルジュにもするだろう。
それは私の実父にまつわることだ。
私の実父は、侯爵だった。それも、私に意地悪をしてきたお嬢さまの家の当主だった。
と言ってももちろん「彼女と私が実は異母姉妹だった」なんて話ではない。私と彼女は、親が違う。私の実父は、現当主の兄だった。だから現当主は、私にとっては叔父にあたる。叔父は事故を装って実父を殺し、当主の座を手に入れた。そのときお腹の中に私がいた母は、叔父に殺されそうになったところを家令に助けられて、市井に逃れて隠れ暮らした。
だから母が元女優というのは、言ってみれば比喩だった。彼女の舞台は、社交界だったのだ。
母を助けた家令は、私の養父である男爵の従弟だった。
養父は従弟である家令の頼みを快く引き受け、母の暮らしを手助けした。貸家の管理人という職は、養父が用意したものだったらしい。母亡き後は、私を養女として迎えて何不自由なく養育してくれた。
その間、家令は正統な嫡子である私が成人したらすぐに手続きできるよう、叔父の不正や犯罪の記録を着々と集めていた。本来なら十八歳になった時点で、その手続きをとる算段だった。
ところがその前に、私はジョルジュと結婚させられてしまった。
十八歳になったとき、養父は私にふたつの選択肢を示した。ジョルジュと離縁して侯爵家を取り戻すか、このままジョルジュと一蓮托生となるか。
私は、ジョルジュと人生を共にする道を選んだ。
私の選択を受けて、養父と侯爵家の家令は第二王子を追い落とす方策を探すことになる。
どうしてそこまでしてくれるのかと養父に尋ねたことがある。彼は、私の実父には返しきれない恩があるのだと言った。それが何だか詳しくは尋ねなかったが、たぶん養父の従弟が家令であることと何か関わりがあったのだろう。
でも実を言えば、第二王子も侯爵家も、私にとってはどうでもよかった。
小さな領地でかつかつの暮らしをしていても、ジョルジュは私をしあわせにしてくれたし、私はその暮らしに十分満足していた。彼らがこのまま私たちを放っておいてくれるなら、私も彼らを放っておいてあげてもいい。そう思っていた。
なのに、あの人たちは私の大切な宝物である子どもたちに手を出した。決して越えてはならない一線を越えてしまったのだ。おおかた保身のために直系の王位継承者をつぶそうと考えたのだろうけど。
心安らかに、子どもたちのもとへ旅立とう。
後は養父がよろしくやってくれるはずだ。
養父はまず、私が十八歳になったときに教えてくれたもうひとつの話をジョルジュにもするだろう。
それは私の実父にまつわることだ。
私の実父は、侯爵だった。それも、私に意地悪をしてきたお嬢さまの家の当主だった。
と言ってももちろん「彼女と私が実は異母姉妹だった」なんて話ではない。私と彼女は、親が違う。私の実父は、現当主の兄だった。だから現当主は、私にとっては叔父にあたる。叔父は事故を装って実父を殺し、当主の座を手に入れた。そのときお腹の中に私がいた母は、叔父に殺されそうになったところを家令に助けられて、市井に逃れて隠れ暮らした。
だから母が元女優というのは、言ってみれば比喩だった。彼女の舞台は、社交界だったのだ。
母を助けた家令は、私の養父である男爵の従弟だった。
養父は従弟である家令の頼みを快く引き受け、母の暮らしを手助けした。貸家の管理人という職は、養父が用意したものだったらしい。母亡き後は、私を養女として迎えて何不自由なく養育してくれた。
その間、家令は正統な嫡子である私が成人したらすぐに手続きできるよう、叔父の不正や犯罪の記録を着々と集めていた。本来なら十八歳になった時点で、その手続きをとる算段だった。
ところがその前に、私はジョルジュと結婚させられてしまった。
十八歳になったとき、養父は私にふたつの選択肢を示した。ジョルジュと離縁して侯爵家を取り戻すか、このままジョルジュと一蓮托生となるか。
私は、ジョルジュと人生を共にする道を選んだ。
私の選択を受けて、養父と侯爵家の家令は第二王子を追い落とす方策を探すことになる。
どうしてそこまでしてくれるのかと養父に尋ねたことがある。彼は、私の実父には返しきれない恩があるのだと言った。それが何だか詳しくは尋ねなかったが、たぶん養父の従弟が家令であることと何か関わりがあったのだろう。
でも実を言えば、第二王子も侯爵家も、私にとってはどうでもよかった。
小さな領地でかつかつの暮らしをしていても、ジョルジュは私をしあわせにしてくれたし、私はその暮らしに十分満足していた。彼らがこのまま私たちを放っておいてくれるなら、私も彼らを放っておいてあげてもいい。そう思っていた。
なのに、あの人たちは私の大切な宝物である子どもたちに手を出した。決して越えてはならない一線を越えてしまったのだ。おおかた保身のために直系の王位継承者をつぶそうと考えたのだろうけど。
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