27 / 29
ざまぁされちゃった王子の回想録
27
しおりを挟む
あの後、私はがむしゃらに動いた。愛する者を取り戻すために。以前、私が弱く愚かだったばかりにのさばらせてしまった不正を正すために。私たちに本来あるべき地位を回復するために。
私も頑張ったが、もちろんそれは義父の一家の支援あってのことだ。
義理の兄弟たちは、義父が誇るだけのことはある。ひとりひとりが優秀なのはもちろんだが、五人そろったときの機動力が並外れている。
義父が会頭を務める商会を通じて、情報収集の能力に長けた上の義兄。
敵を法的に追い込むための知識と手段を持つ弁護士である、下の義兄。
伯爵家に嫁ぎ、地味ながらも手広く人脈をつないできた義姉。
医者と結婚し、薬物だけでなく毒にも造詣の深い上の義妹。
新聞記者と結婚し、新聞記事を通じて社会的影響力を持ちうる下の義妹。
これだけそろっていたら、たとい王太子という地位に就いている弟が相手であろうとも、渡り合えないわけがない。しかもこちらは、相手の策に落ちたと見せかけておいてからの奇襲だ。負ける要素がなかった。
あのとき義父は、私に向かって「どうするかは、まかせる」と言いつつも、事前に父とは話を通してあったらしい。その後のやり取りは、非常に円滑だった。
最終的に、弟は王族の謀殺を企んだ罪で、処刑された。
しかも彼は、処刑の前にあらゆる身分を剥奪された。王太子でなくなったのみならず、王族でもない、父親のわからない私生児とされたのだ。ずっと彼も私も、互いを異母兄弟だと思っていたけれども、実は赤の他人だったらしい。彼は月足らずで生まれ、髪の色も濃く、家族の中でひとりだけ色が違う。
継母が父と結婚する前の婚約期間中に、元恋人と一夜の過ちを犯し、そのときに身ごもった子なのだと言う。すでに父と婚約していたわけだから、不倫である。だが父は哀れに思い、当時は目をつぶっていたそうだ。
その元恋人とは継母の元婚約者であり、父に嫁がせるために破談にさせられていたのだ。
王位を継がせるわけにはいかないが、王子として育てて身分を与えるくらいはしてやってもよいと、父は考えていた。だから暫定的に王太子の身分を与えはしたが、時期を見て私を呼び戻すつもりでいたそうだ。
だがその前に、このような凶行を企んだばかりか、実行してしまった。
私も頑張ったが、もちろんそれは義父の一家の支援あってのことだ。
義理の兄弟たちは、義父が誇るだけのことはある。ひとりひとりが優秀なのはもちろんだが、五人そろったときの機動力が並外れている。
義父が会頭を務める商会を通じて、情報収集の能力に長けた上の義兄。
敵を法的に追い込むための知識と手段を持つ弁護士である、下の義兄。
伯爵家に嫁ぎ、地味ながらも手広く人脈をつないできた義姉。
医者と結婚し、薬物だけでなく毒にも造詣の深い上の義妹。
新聞記者と結婚し、新聞記事を通じて社会的影響力を持ちうる下の義妹。
これだけそろっていたら、たとい王太子という地位に就いている弟が相手であろうとも、渡り合えないわけがない。しかもこちらは、相手の策に落ちたと見せかけておいてからの奇襲だ。負ける要素がなかった。
あのとき義父は、私に向かって「どうするかは、まかせる」と言いつつも、事前に父とは話を通してあったらしい。その後のやり取りは、非常に円滑だった。
最終的に、弟は王族の謀殺を企んだ罪で、処刑された。
しかも彼は、処刑の前にあらゆる身分を剥奪された。王太子でなくなったのみならず、王族でもない、父親のわからない私生児とされたのだ。ずっと彼も私も、互いを異母兄弟だと思っていたけれども、実は赤の他人だったらしい。彼は月足らずで生まれ、髪の色も濃く、家族の中でひとりだけ色が違う。
継母が父と結婚する前の婚約期間中に、元恋人と一夜の過ちを犯し、そのときに身ごもった子なのだと言う。すでに父と婚約していたわけだから、不倫である。だが父は哀れに思い、当時は目をつぶっていたそうだ。
その元恋人とは継母の元婚約者であり、父に嫁がせるために破談にさせられていたのだ。
王位を継がせるわけにはいかないが、王子として育てて身分を与えるくらいはしてやってもよいと、父は考えていた。だから暫定的に王太子の身分を与えはしたが、時期を見て私を呼び戻すつもりでいたそうだ。
だがその前に、このような凶行を企んだばかりか、実行してしまった。
11
あなたにおすすめの小説
某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
恋人の気持ちを試す方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
死んだふりをしたら、即恋人に逃げられました。
ベルタは恋人の素性をほとんど知らぬまま二年の月日を過ごしていた。自分の事が本当に好きなのか不安を抱えていたある日、友人の助言により恋人の気持ちを試す事を決意する。しかしそれは最愛の恋人との別れへと続いていた。
登場人物
ベルタ 宿屋で働く平民
ニルス・パイン・ヘイデンスタム 城勤めの貴族
カミラ オーア歌劇団の団員
クヌート オーア歌劇団の団長でカミラの夫
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる