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本編

14【本編最終話】

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 ライナスによれば、ここは魔王城の最奥らしい。
 野営の準備をしてから、たき火をおこし、討伐のときに何が起きたのかをライナスから聞いた。

 最終戦で魔王とライナスの一騎打ちになったとき、魔王は戦闘の途中からライナスの姿を模倣し始めたそうだ。どちらも完全に力を使い果たして倒れ込んだとき、本当なら王女さまが封印水晶を使って魔王を封印するはずだった。

 ところがそのとき、魔王が言葉巧みに王女さまを丸め込んでしまった。
 魔王の言葉によれば、魔王と勇者はほぼ相打ちの状態で、どちらも力を使い果たして普通の人間と変わらない状態になっている。だからどちらを封印しても結果は変わらないが、自分なら勇者として王女と結婚した上で一生大事にしよう、と約束したのだそうだ。

 どう考えても口先だけの嘘なのに、王女さまはそれに乗ってしまった。
 ライナスは「あの王女、俺にはフィーがいるって言ってるのにベタベタしてきて気持ち悪いと思ってたら、最後はこれだよ」とぼやく。本物が手に入らないから、まがい物の話に乗っちゃったのか。

「ねえ、ライ。これまでずっと百年くらいごとに魔王が復活してたのって────」
「うん。フィーの考えてるとおりだと思うよ」

 つまり、毎回勇者が裏切られていたってことだ。しかもその裏切りは記録に残らない。逃げ延びた魔王は百年ほどかけて力を戻し、復活する。一方の勇者は封印されたまま、誰にも知られることなく朽ち果てていた。ひどい話だ。

 封印解除のスキルを与えられた者もいただろうに、結局使われることはなかったのだろう。
 私だって祝福された結婚指輪がなければ、ひとりでここにたどり着けたかあやしいところだ。きっとたどり着く前に魔王に見つかって、抹殺されていたに違いない。私ひとりを始末するだけなら、力を失った魔王にだって簡単なことだ。

 騙された王女さまには気の毒だけど、おそらく彼女がライナスもどきと結婚できることはない。
 彼女はきっと、封印解除のスキル持ちを魔王が探す間の隠れ蓑にされているだけだろう。だって神殿の鑑定板に手をかざせば、ニセモノなのはすぐばれることだ。結婚という形で神殿に関わってばれる前に、魔王は遁走するに決まっている。あまり彼女に明るい未来が待ち受けているようには思えない。
 まあ、それも因果応報か。

 それはさておき、私は自分たちのこれからのことが気になった。

「ところで、来るときは一瞬だったけど、帰るのに一年近くかかるんじゃない?」
「いいじゃないか。長い新婚旅行だ!」

 ライナスがうれしそうに笑ってキスしてくるので、私もつられて笑ってしまった。

 ライナスは封印解除のスキルのおかげで完全に勇者の力を取り戻しているし、弱体化した魔王に負ける要素は何もない。今度という今度こそ、二度と復活することのないよう魔王を本当に封印できるはずだ。

 新婚旅行と呼ぶにはちょっと野性味にあふれすぎている気はするけど、ライナスと一緒ならきっとそれも楽しい。
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