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第4章 王立魔法学校一年目
297 旅たちの日
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フェ様が旅立つ日がやって来た。
アミーちゃんやキャシーちゃん、ハル君と一緒に、停留所のある門の前でフェ様が来るのを待っていると、前方から神官服を着こんだ人物がやって来るのが見えた。フェ様だ!!
「「「「神官長様!!」」」」
四人で手を大きく振りまわしながらフェ様の元に走る。フェ様は私達を見て驚いたように目を見開いていた。
ふふふっ!どうやらサプライズに成功したようだ。
実はフェ様には見送りは不要だと言われていたのだけれど、どうしてもお別れの挨拶をしたかった私は、その場では納得した振りをして、ここまでやって来たのだ。
「どうしてここへ?」
「フェ様のお見送りをどうしてもしたくて、来ちゃいました!」
「先週挨拶をしていただいたのですから、わざわざよろしかったのですよ」
そう言いつつも、フェ様は嬉しそうだ。そんな姿にやっぱり来て良かったと、改めて思った。
次にフェ様はアミーちゃん達に視線を向ける。すると、アミーちゃん達はぴくりと肩を揺らした。
アミーちゃん達はどうやら緊張しているようだ。前は普通に話していたはずなのに、どうしてかなと不思議に思ったけど、よくよく考えてみれば仕方がないことだった。なぜなら、フェ様が元王族だとアミーちゃん達が知ってから話すのは今回が初めてだったはず。緊張しないはずがない。
「君達も見送りに来てくれたのかい?」
「「「は、はいっ」」」
それでも、アミーちゃん達はフェ様の質問に元気よく答えた。
「そうか。ありがとう」
「「「こちらこそ、ありがとうございます!!」」」
「は?」
まさか、お礼返しをされるとは思いもしなかったフェ様がきょとんとしているのが印象的だった。
「あたし達、手紙のことでもお礼が言いたくって」
フェ様がお母さん達宛ての手紙を届けてくれると言ったとき、実は三人の手紙も届けてもらえないかと頼んでみたのだ。フェ様はあっさりと聞き入れてくれた。手紙自体はすでに私の方で渡してあって、その時にもお礼は言ってあったのだけれど、アミーちゃん達もやっぱり直接お礼が言いたいと一緒にやって来たのだ。
「帰るついでだからね。お礼を言われることではないさ」
何でもないように話すフェ様に、私達四人はとんでもないと首を振る。手紙を普通に送った場合、一か月ほどかかるのだ。アミーちゃんのような大きな町ならともかく、私やキャシーちゃん達の場合もっとかかる場合もある。それが、一週間ほどで届くのだから、フェ様々である。
「そう言えば、ここには一人で来たんですか?」
『それで、どうしてあなたがここにいるんですの?』
王都に到着した時、フェ様にはお迎えの馬車が来ていた。帰りも当然ながら馬車でやって来るかと思っていたので、とても意外だった。まあ、馬車だった場合、こんなにも簡単に呼び止めれなかっただろうから、助かったのだけど。
「大袈裟な見送りは不要だと断りました」
『泣いていたらわかりませんわ』
フェ様は馬車の他に護衛の騎士まで付けられそうになり、逃げてきたのだとうんざりした顔で話す。
逃げてきたって…お城の中で大騒動になっていないといいけど。大丈夫かな?
ちなみに、フェ様は全員を振り切って逃げてきたと思っているようだけれど、実は違う。先程からアクアが話しかけている相手と言えば、誰なのかおのずとわかるだろう。ラブュ様だ。
『いい加減泣くのはおやめなさいな』
どうやら号泣しているらしいラブュ様を、アクアが呆れつつも慰めていた。
「えーと、フェ様?この間、数十年ぶりにお会いしたお方とは、その後どうですか?」
アミーちゃん達もいるので、ラブュ様の名前は出すことはできない。それでも、フェ様には私が誰のことを言っているのかわかったようだ。
「すっかり誤解も解けて、ありがたくも気にかけてくださっているようです。王宮を辞す際には、陛下を通してお別れの挨拶をさせていただきました」
挨拶を済ませたはずの相手がなぜここにいるのかな?
『これが今生の別れになるかもしれないと思ったら、離れられなくなったそうですわ』
「…なるほど」
ぎりぎりまでフェ様のそばを離れたくないと、ここまでついて来てしまったのだそうだ。もちろん、フェ様はまったく気づいていない。国王様にはきちんと許可を取っての行動なのだそうなので、私からは何も言うまい。
出発の時間が近づいて、ついにお別れの時がやって来た。私達は門の外には行けないので、ここでフェ様を見送る。
「それではここで」
「道中お気を付けて」
「「さようなら」」
「ほら、マーブルも挨拶して」
「にゃん」
ずっとポシェットの中にいて、姿を見せなかったマーブルがフェ様に挨拶するために顔を出した。フェ様はマーブルの姿が見えてうれしそうだ。
最後にフェ様は後見人として私と少し話がしたいことがあると言って、アミーちゃん達から少し離れた場に連れていかれた。
「以前にも申し上げましたが、何かありましたら教会を頼ってください。私と直接連絡が取れるように手配してあります」
「はい」
こちらも真剣に頷き返すと、フェ様はふと眼もとを緩めて言った。
「学校に通いはじめて一か月たったわけですが、楽しいですか?」
フェ様にそう聞かれ、これまでにあった様々なことが頭をよぎる。
本当に色々なことがあった。
でも、私の中にある気持ちはこれにつきる。
「はい。凄く楽しいです!」
---
更新が遅れて申し訳ありません(汗)
これで四章の本編が終わりました。
閑話を何話か書いてから、四章を始めるつもりです。
次回は更新が遅れないように頑張ります!
...た、多分。
アミーちゃんやキャシーちゃん、ハル君と一緒に、停留所のある門の前でフェ様が来るのを待っていると、前方から神官服を着こんだ人物がやって来るのが見えた。フェ様だ!!
「「「「神官長様!!」」」」
四人で手を大きく振りまわしながらフェ様の元に走る。フェ様は私達を見て驚いたように目を見開いていた。
ふふふっ!どうやらサプライズに成功したようだ。
実はフェ様には見送りは不要だと言われていたのだけれど、どうしてもお別れの挨拶をしたかった私は、その場では納得した振りをして、ここまでやって来たのだ。
「どうしてここへ?」
「フェ様のお見送りをどうしてもしたくて、来ちゃいました!」
「先週挨拶をしていただいたのですから、わざわざよろしかったのですよ」
そう言いつつも、フェ様は嬉しそうだ。そんな姿にやっぱり来て良かったと、改めて思った。
次にフェ様はアミーちゃん達に視線を向ける。すると、アミーちゃん達はぴくりと肩を揺らした。
アミーちゃん達はどうやら緊張しているようだ。前は普通に話していたはずなのに、どうしてかなと不思議に思ったけど、よくよく考えてみれば仕方がないことだった。なぜなら、フェ様が元王族だとアミーちゃん達が知ってから話すのは今回が初めてだったはず。緊張しないはずがない。
「君達も見送りに来てくれたのかい?」
「「「は、はいっ」」」
それでも、アミーちゃん達はフェ様の質問に元気よく答えた。
「そうか。ありがとう」
「「「こちらこそ、ありがとうございます!!」」」
「は?」
まさか、お礼返しをされるとは思いもしなかったフェ様がきょとんとしているのが印象的だった。
「あたし達、手紙のことでもお礼が言いたくって」
フェ様がお母さん達宛ての手紙を届けてくれると言ったとき、実は三人の手紙も届けてもらえないかと頼んでみたのだ。フェ様はあっさりと聞き入れてくれた。手紙自体はすでに私の方で渡してあって、その時にもお礼は言ってあったのだけれど、アミーちゃん達もやっぱり直接お礼が言いたいと一緒にやって来たのだ。
「帰るついでだからね。お礼を言われることではないさ」
何でもないように話すフェ様に、私達四人はとんでもないと首を振る。手紙を普通に送った場合、一か月ほどかかるのだ。アミーちゃんのような大きな町ならともかく、私やキャシーちゃん達の場合もっとかかる場合もある。それが、一週間ほどで届くのだから、フェ様々である。
「そう言えば、ここには一人で来たんですか?」
『それで、どうしてあなたがここにいるんですの?』
王都に到着した時、フェ様にはお迎えの馬車が来ていた。帰りも当然ながら馬車でやって来るかと思っていたので、とても意外だった。まあ、馬車だった場合、こんなにも簡単に呼び止めれなかっただろうから、助かったのだけど。
「大袈裟な見送りは不要だと断りました」
『泣いていたらわかりませんわ』
フェ様は馬車の他に護衛の騎士まで付けられそうになり、逃げてきたのだとうんざりした顔で話す。
逃げてきたって…お城の中で大騒動になっていないといいけど。大丈夫かな?
ちなみに、フェ様は全員を振り切って逃げてきたと思っているようだけれど、実は違う。先程からアクアが話しかけている相手と言えば、誰なのかおのずとわかるだろう。ラブュ様だ。
『いい加減泣くのはおやめなさいな』
どうやら号泣しているらしいラブュ様を、アクアが呆れつつも慰めていた。
「えーと、フェ様?この間、数十年ぶりにお会いしたお方とは、その後どうですか?」
アミーちゃん達もいるので、ラブュ様の名前は出すことはできない。それでも、フェ様には私が誰のことを言っているのかわかったようだ。
「すっかり誤解も解けて、ありがたくも気にかけてくださっているようです。王宮を辞す際には、陛下を通してお別れの挨拶をさせていただきました」
挨拶を済ませたはずの相手がなぜここにいるのかな?
『これが今生の別れになるかもしれないと思ったら、離れられなくなったそうですわ』
「…なるほど」
ぎりぎりまでフェ様のそばを離れたくないと、ここまでついて来てしまったのだそうだ。もちろん、フェ様はまったく気づいていない。国王様にはきちんと許可を取っての行動なのだそうなので、私からは何も言うまい。
出発の時間が近づいて、ついにお別れの時がやって来た。私達は門の外には行けないので、ここでフェ様を見送る。
「それではここで」
「道中お気を付けて」
「「さようなら」」
「ほら、マーブルも挨拶して」
「にゃん」
ずっとポシェットの中にいて、姿を見せなかったマーブルがフェ様に挨拶するために顔を出した。フェ様はマーブルの姿が見えてうれしそうだ。
最後にフェ様は後見人として私と少し話がしたいことがあると言って、アミーちゃん達から少し離れた場に連れていかれた。
「以前にも申し上げましたが、何かありましたら教会を頼ってください。私と直接連絡が取れるように手配してあります」
「はい」
こちらも真剣に頷き返すと、フェ様はふと眼もとを緩めて言った。
「学校に通いはじめて一か月たったわけですが、楽しいですか?」
フェ様にそう聞かれ、これまでにあった様々なことが頭をよぎる。
本当に色々なことがあった。
でも、私の中にある気持ちはこれにつきる。
「はい。凄く楽しいです!」
---
更新が遅れて申し訳ありません(汗)
これで四章の本編が終わりました。
閑話を何話か書いてから、四章を始めるつもりです。
次回は更新が遅れないように頑張ります!
...た、多分。
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