[完結]飲食店のオーナーはかく戦えり! そして下した決断は?

藤堂慎人

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「・・・そう、それでどんなことを考えているの?」
最初は私の話が唐突すぎたので分からないと言っていたが、経緯を話すと少し聞く姿勢になってきたと感じた。それで私は続けて話した。その時は手にしていたビールもほとんど飲んでおらず、美津子も同じだった。
「昨日も話したように、これまで居酒屋という仕事をお客様の癒しの場として考えていたけれど、その前提は健康にある、というように考えたんだ。俺が体調を崩したら、そんな時に居酒屋に行こうなんて思わないからな。だから健康という前提があって初めて居酒屋という仕事も意味が出るのでは、と思った。まだ社員として勤めていた時から俺が今の商売に誇りを持っているのは知っていると思うけれど、それは今でも変わらない。新型感染症の問題からお客様の数は少なくなっているけれど、むしろ今のほうが相沢さんのような方からのお話でますますこの商売に対するやりがいを感じている。だから居酒屋という仕事への意欲が無くなった、というわけではないんだ。こういうところが説明するのは難しいけれど、もし自分が2人いれば1人はこのままで、そしてもう1人は今回感じたことを実際に何かのカタチで実現できれば、といったことを考えていたんだ。こういうことは身体を壊したから考えたことなので、なかなか分かってもらえないところもあるかもしれないけれど・・・」
 最後の言葉は少し力なく話すことになったが、私としては今回の一連の体調不良で身体の調子の大切さについて身を以て経験したので、心の中では核心的な部分がある。
 だが、それを他者に理解してもらおうしても難しいところがある。それはたとえ配偶者であってもそうだろうし、ましてや同じ仕事をしているため、余計に難しいかもしれない。
 そう思っても、今回のことで自分の中で何か大きく変わったことを感じており、それを口にし、それに対してどう考えるかを妻にだからこそ聞きたかったのだ。
 美津子は私が話している時には微動だにせず聞いていたが、話が一段落したところで手に持っていたビールを一口飲んだ。
「ちょっと温くなっちゃったね。あなたが熱心に話すものだから、つい手に持ったままになっていたわ。体温が伝わったのね。そしてあなたの考えも何となく分かったような気もした。どこまで理解したかは分からないけれど、居酒屋という商売は今でも誇りに思うし、やりがいも感じている。でも、もう一つ、健康についてのことも意識するようになった、ってことだよね。その大切さについては、私も奥田先生のところに通っていろいろ話を聞いているので理解できるわ。ただ、理解できるということと、だからどうするかということは別よね。今までの話では最近のことからあなたがいろいろ考え、それが仕事のことにまで広がった、ということは分かった。そこから何を言いたいのか分からないけど、転業を考えているの? でもそうすると生活のこともあるし、矢島君、中村君たちとの関係も無くなってしまうわ。彼らの生活もあるし、これまで築き上げた信頼関係も崩れてしまうわ。せっかくみんなでいろいろアイデアを出し、ここまで乗り切ってきたじゃない。なかなか以前ほどの状態には戻らないけれど、だからこそ頑張ろうとしてきたじゃない。それを無にするわけにはいかないわ」
 美津子の意見は当然である。私も条件や立場が違っていたら同じことを言っていたに違いない。だからこそ、私もいろいろアイデアを練っていたわけであり、休養させてもらっていた時間を自分なりに有効に使っていたつもりだ。当然、今話したようなことについてすぐに賛成を得られるとは思っていなかったし、まだ具体的な考えを示したわけではなく、その入り口までの話だ。私がどうして今の話をしたかまでのことだが、そこから先の部分についても具体的なプランを考えている。私は続けてその話をした。
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