63 / 121
抗争東支部編
エルシアの決意
しおりを挟む
仙獄觀音に割り込まれ、反論する暇もなく現実世界に引き戻されたエルシアは自分が守るエリアの中央でぼうっと立ち尽くしていた。
澄男。当初は眼中にすらなく、何故本部が場数をほとんど踏んでいない新人を指名したのか、皆目見当がつかなかった。自分たちが当てにしていたのはあくまで``閃光``と``百足使い``のみだったからだ。
しかし本部の決定には余程の事情がない限り逆らえない。不信と疑念を抱きつつも、何食わぬ顔を装って彼らを迎え入れた。
だが澄男は極めて横暴な人物だった。仲間以外は信用しない、仲間のためなら東支部のルールを反故にしようとする。
当然、そんな横暴を許せるはずもない。結局彼の言い分を聞くことはなかった。
所詮、男は信用できるものではない。``閃光``の二つ名で有名なレク・ホーランでさえ、中威区暴閥と傘下ギャングスターの連合軍に対抗するための戦力としてしか期待はしていなかったほどに、異性という存在は人格問わず信じがたいものだった。
全ては``東支部の悪夢``が事の始まりなのだから―――。
「しかし……」
今の今まで自覚はなかったが、無意識に否定していたのかもしれない。いや、否定していたと言ってもいい。
凪上雅和。本来ならば東支部の安寧のため、この世から抹殺するべき存在。``東支部の悪夢``を引き起こし、数多くの東支部請負人に心の傷を残した諸悪の根源。
自分たちは彼の存在から目を背けることで、精神の安寧を図ってきた。今までそうだったように、これからもそれで変わりはしないと思っていた。
復讐など誰も望まない。かくいう自分が望んでいない。復讐を掲げ戦端を開けば、再び多くの犠牲を払うことになる。折角大姉様に拾っていただいた命を、復讐や報復などという物騒な感情で投げ捨てていいわけがない。自分だけでなく、他の護海竜愛も、そして東支部請負人も、そう自分に言い聞かせて日々を過ごしてきた。
でも現状に心から納得しているのか。そう問われれば、答えは否だ。
凪上家は東支部の秩序を乱した根源の一つ。その根源が、再び東支部に災厄をもたらそうとしている。澄男という新人請負人の言うように、自分たちは未だ彼らから下に見られていることに変わりはない。
未だ奴隷扱いされていた、あのときのように―――。
エルシアは腰に携えた刀の鞘を強く握る。そして任務請負証の霊子通信を起動させた。相手は大姉様だ。
『……お願いしたく存じます。私は―――』
やるべきことではないかもしれない。淡々と自分に与えられた仕事をこなしていれば、それで良かった。でも東支部、ひいては中威区東部に真の平和をもたらすには、今こそが絶好の機会なのではないだろうか。そう考える自分が最初の一歩を踏み出したとき、気づいたら霊子通信によって形作られる精神世界に大姉様が現れる。
自分の懇願に、大姉様の答えは―――。
澄男。当初は眼中にすらなく、何故本部が場数をほとんど踏んでいない新人を指名したのか、皆目見当がつかなかった。自分たちが当てにしていたのはあくまで``閃光``と``百足使い``のみだったからだ。
しかし本部の決定には余程の事情がない限り逆らえない。不信と疑念を抱きつつも、何食わぬ顔を装って彼らを迎え入れた。
だが澄男は極めて横暴な人物だった。仲間以外は信用しない、仲間のためなら東支部のルールを反故にしようとする。
当然、そんな横暴を許せるはずもない。結局彼の言い分を聞くことはなかった。
所詮、男は信用できるものではない。``閃光``の二つ名で有名なレク・ホーランでさえ、中威区暴閥と傘下ギャングスターの連合軍に対抗するための戦力としてしか期待はしていなかったほどに、異性という存在は人格問わず信じがたいものだった。
全ては``東支部の悪夢``が事の始まりなのだから―――。
「しかし……」
今の今まで自覚はなかったが、無意識に否定していたのかもしれない。いや、否定していたと言ってもいい。
凪上雅和。本来ならば東支部の安寧のため、この世から抹殺するべき存在。``東支部の悪夢``を引き起こし、数多くの東支部請負人に心の傷を残した諸悪の根源。
自分たちは彼の存在から目を背けることで、精神の安寧を図ってきた。今までそうだったように、これからもそれで変わりはしないと思っていた。
復讐など誰も望まない。かくいう自分が望んでいない。復讐を掲げ戦端を開けば、再び多くの犠牲を払うことになる。折角大姉様に拾っていただいた命を、復讐や報復などという物騒な感情で投げ捨てていいわけがない。自分だけでなく、他の護海竜愛も、そして東支部請負人も、そう自分に言い聞かせて日々を過ごしてきた。
でも現状に心から納得しているのか。そう問われれば、答えは否だ。
凪上家は東支部の秩序を乱した根源の一つ。その根源が、再び東支部に災厄をもたらそうとしている。澄男という新人請負人の言うように、自分たちは未だ彼らから下に見られていることに変わりはない。
未だ奴隷扱いされていた、あのときのように―――。
エルシアは腰に携えた刀の鞘を強く握る。そして任務請負証の霊子通信を起動させた。相手は大姉様だ。
『……お願いしたく存じます。私は―――』
やるべきことではないかもしれない。淡々と自分に与えられた仕事をこなしていれば、それで良かった。でも東支部、ひいては中威区東部に真の平和をもたらすには、今こそが絶好の機会なのではないだろうか。そう考える自分が最初の一歩を踏み出したとき、気づいたら霊子通信によって形作られる精神世界に大姉様が現れる。
自分の懇願に、大姉様の答えは―――。
0
あなたにおすすめの小説
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる