無頼少年記 ~最強の戦闘民族の末裔、父親に植えつけられた神話のドラゴンをなんとかしたいので、冒険者ギルドに就職する~

ANGELUS

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抗争東支部編

エピローグ:這い寄る常闇

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 全面漆黒に覆われた、常闇の空間。光を通さぬその世界に、一人の少女が闊歩する。

 容姿端麗ながらも、その少女の服装もまた黒い。僅かな光すらも吸い尽くし養分とするように、少女の服は靡く風の音のみを静かに奏でた。

雅禍まさか。お前がここに来たってこたぁ、奴らは失敗したんだな?」

 部屋の奥から男の声が反響するが、部屋があまりにも暗すぎて、その姿を拝むことすら叶わない。だが少女は男の所在があたかも分かっているかのように跪く。

 顔を上げ、そこにいるであろう男と視線を交わすが、少女の目に光はなかった。まるで周囲の闇にその全てを吸い尽くされてしまったかのように、その瞳は常闇に彩られている。

「チッ……使えねぇ。期待してなかったとはいえ、どいつもこいつも戦って死ぬ能すらねぇのか」

 闇の最奥に潜む男から滲み出る、禍々しい怒り。だがそんな苛烈な感情さえも、常闇が容赦なく食い潰していく。暫時、静寂が流れた。

「……彼らは今日中にでも任務請負機関ヴェナンディグラム本部の下へ送られる模様。いかがいたしましょうか」

 この空間に来て、初めて少女は口を開いた。

 感情というものを感じさせない、無機質な音色。恐ろしいまでに淡々としたその口調に、男が何か感じることはない。闇の奥から放たれる怒りを収めるための防波堤としての役割を果たすには、その声音はあまりに薄弱すぎた。

「俺の配下に、無能は要らねぇ」

 少女はゆっくりと立ち上がる。そしてどこにいるのかも分からない、闇に隠れた男に向かって深く一礼する。

 身を翻し、常闇の空間を去る少女。だがその少女の片手には、常闇の中で妖しげに光る刃が、しっかりと握られていた。
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