人生和歌集 -風ー(1)

多谷昇太

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風吹かず…止みて終わるか?

かべ

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とほしろき白亜の巨塔いや高み却りて我は消ゆるがごとし
※1.とほしろき;〔形容詞〕雄大な
※2.入院以来2ヶ月弱で私はここ茅ヶ崎市民病院から神奈川県伊勢原にある東海大附属病院に移ることになりました。私のガンは膵臓・胆管・十二指腸あたりの深い部位にあり、同じ内科外科でも内臓それぞれの部位に特化した機能を持つ大学病院の方がいいということになったらしい。私の担当医師と姉との話し合いでそうなったのですがよくぞ私のような貧乏人が大学病院に入れたものと、今でも不思議に思っています(姉の知り合いが云々とか…姉の尽力が大きかったようです)。しかし畢竟そのお陰で今こうして命が長らえたと思っており、お世話になった茅ヶ崎市民病院の担当医師や(例の)看護婦さんも含め、方々に感謝に堪えません。2012年3月に転院入院したその東海大病院の印象はしかし当初掲載歌のようなものでありました。地上十数階の豪華で巨大な建物や設備にただ圧倒され、生保の入院患者でしかない私など(申し遅れましたがそもそもの始めから私の入院等医療費はすべて生保で賄われていたのです。こちらの手続きも姉がすべて代行してくれました)、あたかも研究に具されるモルモットのような気がしたものでした…。

              【東海大学附属病院】


壁にさへはた言問ふや独り身を処しかねてをり病院暮し
※姉を除いて見舞いなどいっさい訪れない、ホントの孤独中に置かれました。娑婆でも1人だったが仕事や文筆活動など生活があった。今は日がな一日ただベッドの上…マジで壁と語った(?)。

悲しびが子供のやうに離れないガンのわざかなこころもどしぬ
※端から記してますが不本意極まるヤクザストーカー災禍やらそれゆえの貧乏暮し、挙句身心のやつれからとうとうガンを罹患し…などなどで、もう「なるようになれ」と自棄丸出しとなり、心を死なせていたわけです。ところがその自らの有り様を眼前の壁から諭されたのか、突然泣けて来ました。死なせていた心が生き返った…?

     【カベです。ただの部屋のカベ。私の唯一の話し相手だった…】
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