人生和歌集 -風ー(1)

多谷昇太

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海を渡る風

カぺル橋

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(お断わり。冒頭の俳句一句と和歌二首は本来は第一話の「アムステルダム」に続くべきものです。実はこの歌集はだいぶ以前に一度綴っており、そこへあとから第二話「バーゼル」以降を継ぎ足したものですからこのような不具合となっています。このあとも随所に同様な不具合(話の前後が合わない等)見られるやも知れません。その都度これと同じ〔お断り〕を入れるつもりですのでご了承ください。因みにこの「カぺル橋」はターナー事務所で仕事を紹介され、松山氏とソルツーンという所で3ヶ月働き、さらにその後バーゼル近郊にあったフライパン工場で1ヶ月強働いたあとの話です。松山氏はソルツーンのあと帰国しました…)

父母(ちちはは)も貧しき家もかへりみずなにゆゑ我はここにあそぶや
※俳句一句:我はこの何のかひなき長男坊

秋さればゐぬるものかは職得べしこれより我は大陸ボヘミアン
※1.されば;来れば
※2.ヨーロッパの緯度は北海道より上、寒いです。私は急いで住込みのバイトを探せねばなりません…。

マリアなるエーデルワイスの白き国ここぞと頼み我は来にけり
※実はこの歌に関連して、当アルファポリスに掲載した私のショートショート「1973年フランクフルトの別れ」がありますので、そちらの方もぜひご参照ください。

湖(うみ)ほとり白き家あり額づかむクルスのみまへ我罪ふかし
※スイスはルッツェルン市、同湖のほとりに白い教会がありました。その側面には磔にされた等身大のキリスト像が。主はすべての人々の為に身をささげました。それに比べて私は自分のことばかり。何がランボーだ…。

カペル橋その美しきに目もやらで眉根ひそめて渡るヤーポンのあり
※1.ヤーポン;日本人
※2.ヤーポンとはもちろん私のことです。この橋が観光名所どころじゃない、住み込みのバイトがなかなか見つからず、あせってました。人種差別にも閉口していて、眉をしかめた、その嫌な顔と云ったら!

          【美しいカぺル橋、ルッツエルン湖】
by suju-foto
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