エッセイのプロムナード

多谷昇太

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エッセイ香港

自由こそ!

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ところで香港の一人当たりGDIは現在世界第17位ですが(因みに日本は26位)中身は超ピンキリで、世界有数の超富裕層もいれば畳一畳~三畳ほどの部屋で寝起きしている貧困層までが少なからずいて、その格差たるや形容不能なレベルまで達しています。旧九龍地区由来の香港黒社会ヤクザもしっかりと残っていて、これらの諸事実・諸矛盾を鑑みるならば、前記した「これら二重三重…何重ものうっ屈」の中身が見えてくるのではないでしょうか。つまり僅か1000平米ほどの狭い都市空間であるがゆえに、現代社会の抱く諸矛盾や、それゆえの葛藤が濃縮されて現れていることが。しかしとは云え、一人一人の香港っ子たちに於ては何より替えがたい自由という空気が吸えて、「俺もいつかは一旗揚げて金持ちに、一端の人間になってみせる」という夢が持てます。また代々この地に住み続けて教育を授かっている中間層に於ては、就職やビジネス起業など他の先進国同様に模索し得るし、それより何より、思想と言論の自由を彼らは今享受しています。この空気のようだった「自由である」という譲れない一項が、格差の上下を問わずに“今”侵されようとしているのです。共産党一党独裁などという恰も中世の封建時代に戻されるような、堪えがたい桎梏の襲来と、それゆえの葛藤を彼らは覚えているわけです。
 この今の危機というか、香港市民たちが置かれている状態を、始めに掲げた政・官・財・暴スクエアの図式で云うならば、「政」が共産党本土政府並びに香港政庁であり、「官」は香港警察、「財」が世界的にも超ビッグな、同じ香港人であるところの投資家や資本家たちとなり、暴が香港黒社会、すなわち三合会などのヤクザどもと云えるかと思います。また「立ち上がった、後のない、プレカリアートたち」を述べるならば「香港人の誇り」とでも云えましょうか。この「香港人」を単に「人間」と云い変えてもいいのですが、とにかく、後に引けない人間としてのギリギリの誇りということです。今行われているデモは概ね学生たちが中心で、それに仕事の合い間を縫って一般市民たちが暫時加わっているのだと思います。私は世の変化が為される時は概ね若い人たちによると常々思っているのですが、それは彼らが置かれた時間的余裕もありましょうが、それを云うよりは彼らの持つ未だ清新な感覚と、それゆえに抱き得る世の中への等身大的な知覚、是非を問う姿勢があるからではないでしょうか。
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