エッセイのプロムナード

エッセイ香港

立ち上がった、後のない、プレカリアートたち

我々大人のように「所詮世の中とはこんなもの…」と諦め、すでに毎日の行動と思考さえもが慣性化されてはいないと思うのです。２０４７年には間違いなく香港は中国一党独裁体制に編入される。僅か２７年後です（すなわち後がない）。しかし一国二制度の施行によってそれが未だどういうことか肌感覚で知覚できなかったところへ、普通選挙の否定や今回の逃亡犯条例と立て続けに強要されて彼らは一変で目が覚めた。我らの政庁と警察と思っていたのにそれが傀儡然としたものであることや、恰もその使い奴のごとき香港ヤクザたちの脅迫・暴力行為を受けて、本土政府と政庁の本質が、その強要と圧迫がどういうものであるかを肌で知り得たのです。ここに前記縷々と記して来た種々のエレメント（格差拡大・住居逼迫・物価高等）が加わって彼らはすなわち“立ち上がった”わけです。そしてこちらも前記の「もう後がない」＝「２０４７年までには確実に独裁下に入る」という切迫した情勢が重なって、「立ち上がった、後のない、プレカリアートたち」の命名とした次第。ではこれが、香港デモがなぜ世界を代表しているかと云えば、これも前に縷々記したようにグローバリズムによる逼迫が、もうこれ以上は堪えられないほどにも世界中で高まっているからです。中近東の混乱は米国新自由主義者たちが同地をグローバリズム勢力下に置こうとしたが為に起きたものであり、それに米・欧州によるエルサレム指向が面子となって重なって、今、斯くも混乱の極みにある。また世界先進各国の資本と企業がグローバリズムの成果を知ってまたこの旨味をも知り、それを自国内と周辺諸国に強要したが為の無数のプレカリアートたちの発生があるということです。ひるがえって中国は今や労働者政権でも毛沢東が唱えた新民主主義国家でも何でもありません。元借款によって過剰債務を周辺諸国に課しては諸策を強要し（≒植民地化）、国家改造の名のもとに農民たちから土地を取り上げ（≒地主化）、剰え昨今では９９６労働を自国民に強要するなど、他の先進各国のグローバリズム化にさえ同調しています。

【前ページで紹介した香港の高層スラムビル。このビル内の一部屋をさらに何区画にも区割りして畢竟三段ベッドの一床が店子の空間になっているとか…世界一の人口密集と格差の為せる業と云えましょう】