エッセイのプロムナード

エッセイ香港

世界を代表する香港

これは他国から土地は収奪はしないものの自国経済覇権を他国に押し付ける新帝国主義と称するもので、これらすべてに於て毛沢東が忌みしたかつての帝国主義への変節というものです。この他にも公海上あるいは他国領海上に人口島をあちらこちらに造っては１２海里領海論を主張したり、俗に云う牛の舌領海論を翳しては周辺南アジア各国を威嚇し、軍事力による力の外交姿勢さえ示し始めている。この“新帝国”の主とも云うべき中南海の連中は今や赤い皇帝と化し、その現帝たる習近平の中華思想は目に余るものがあります。分けても最悪なのは思想の自由と信仰の自由を否定したことで、これは基本的人権無視以外の何者でもなく、その最たるものはウイグル自治区への弾圧となって現れています。
　すなわち中国一国に現行グローバリズムの弊害と新帝国主義という謂わば現代の最先端を行くような悪しきトレンドが、また人権封じの独裁主義という時代に逆行する旧き桎梏が顕在化していて、それがいま香港一都市に襲いかかっている…と見れば、時間的にも彼我の力の差からしても、また舞台のごとくに世界に可視化された華やかな香港と云う上からも、「政・官・財・暴のスクエア」ⅤＳ「立ち上がった、後のない、プレカリアートたち」という世界中における相克が、世界を代表していま、香港デモに凝縮して現れていると思う次第です。
　あと二点言及せねばなりません。格差とヤクザについてです。新九龍城とも云うべき空に伸びる高層スラム街と、ニューヨークも顔負けの華やかな近代ビルが林立する表街、この先果してどちらが天まで届くでしょうか？かつてバベルの塔は神の怒りによって崩壊しましたが、はて香港のこの二種類のビル群はいったいどちらがバベルの塔なのか…？とでも表したいような世界でトレンドの、その香港における凄まじい格差の現れです。思うにこのスラム街に住む人々は現行のデモには殆ど参加していないでしょうね。そもそも出来ないでしょう、生きる為の毎日の仕事に忙しくて（定かではありませんが）。所詮あちらの人々は天上人のような存在で、抗っても仕方がないと思っているか、あるいは日本始め先進各国のニートたちのように、こちらは籠りはしないでしょうが、無気力そのものとなって毎日を過ごしているだけかとも存じます。しかしそんな中でも畳三畳ほどの兎部屋に住みながら病床の夫を支え、仕事をいくつも掛け持ちしては働いている奥様がデモに参加したと、そうニュース（ツイッター？）で報じられていました。その折り学生から自らの窮状を同情されて涙が出たと、そのようにも報じられていた。