クワンティエンの夢

多谷昇太

文字の大きさ
15 / 65
昼食、人柄ア・ラ・カ・ル・ト

料理の鉄人、梅子と郁子

しおりを挟む
 その様子をあずま屋からちょっと離れた所で眺めながら梅子グループが弁当を使っている。来る途中で買って来たフライドチキンに豪快にかぶりつきながら「梅子さん、弁当食べないんですか」と恵美が訊く。「あいつ(郁子)に見られたくないんだよ。うるさいったらありゃしない」「ほんとっすよね。花より弁当ですよ、見てたってしょうがないじゃん」。しかし加代が「でも梅子さん、料理は郁子といい勝負じゃないですか。むしろ見せつけてやればいいのに?」と不思議がって云う。普段から梅子の家に恵美とともに訪うかして梅子の料理好きとその腕のよさを知っていたのだった。郁子についてはこさえた手料理を時々部活に持ち込んでは皆に食べさせるのでその腕のほどを熟知していたのである。両者の甲乙のほどは加代には付けがたかったし、食べるものこれすべて絶品のごとき恵美ではなおさらだった。ただ梅子が主に和食で郁子が西洋料理の違いはあった。亜希子に対するほどではないが郁子に対してもなぜか梅子にわだかまりがあって、何事につけても素直に交誼を結び切れないのだった。今もそうである。しかしその郁子がこちらは一切誰にもわだかまりなく、織枝と絹子の弁当吟味を終えてこちらへとやって来た。「あたしのはケンッタキー・ランチだよん」と先回りして恵美が云う。「知ってますよ。近鉄吉野駅の前で買うのを見てたから。それもいっぱい。部長と加代さんが別の店で幕の内弁当を買ったのも。お目当ては梅子さんです。さあ、梅子さん、ご自慢の手造りのお弁当見せてください」と云うのに「うるさいわね。人の弁当を見て回ったりして、いやな子ね。あたしのは日の丸弁当よ。あたしを一個入れて来ただけ」とつれなく梅子が答える。弁当のフタをおさえていっかな見せようとしない。だが向こうから亜希子の声がかかる。「謙遜謙遜。梅子の料理の腕はプロ級よ。そうね、リュックから伝わっていた匂いからすれば、そのふたの下はたぶん私や加代と同じ、幕の内よ。それも相当手の込んだ。チェダーチーズを巻いた椎茸にお肉の合わせ焼き…それにカボチャのバター焼き…あとは前日に仕込みをしたサケの照る焼きかなにかでしょう」と中が見えるかのように云ってみせる。はたして図星なのか一瞬口を半開きにして梅子が亜希子を見やる。

  【郁子ともども料理の鉄人たる梅子のつくった幕の内弁当…こんな感じ?】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...