クワンティエンの夢
これは当アルファポリス誌に既掲載中の「阿漕の浦奇談」の時代を超えた続きです。待賢門璋子が現代に生まれ変わってからのストーリーとなります。みなさんは転生輪廻をご存知ですか?同じ人間(魂)が何回も何回も名と身体を変えて生まれ死に生まれ死にすることを云うのです。でも人はいったい何のためにそのような生まれ死にを繰り返すのでしょうか?おそらくそこには一回の人生ではカバーしきれない、その人なりの、時代を超えた命題があるからではないでしょうか。にもかかわらず一度死んで生まれ変わってしまうと、およそすべての人がその命題の「め」の字も忘れ果ててしまいます。それどころか前生とまったく同じような人生を、同じ過ちを何度でも仕出かしてしまうのかも知れません。この有り様と、しかしそこから少しでも脱しよう、進歩しようとする、時代を超えて人に内在されたもの(それは果してなんでしょうか?)を描きたくペンを起こしました。また彼の西行法師の、今に残る数々の名歌に啓発されて書き出したというのも、前作「阿漕の浦奇談」ともどもに、その抑々の所以でもあります。換言すれば六道輪廻からの脱出、真の出家の心とは?…が小説の命題となりましょうか。凡夫の私には過ぎたる命題ですが、しかしそれゆえにカオスへ肉迫しようとする姿が、ひょっとしたらそこに見受けられるやも知れません。その苦闘する姿こそが皆様にとって読み応えになるやも知れない…そのことを信じてひたすらタイピングをしてまいります。どうぞ笑いながらでも、ご教示がてらにお読みくだされば幸甚です。多谷昇太。
吉野の桜
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