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鳥羽老人と歌合わせ
亜希子のとりなし
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話を戻すが斯様な経緯での梅子の恥ずかしさと無念さを悟った加代が、その梅子の手を握って無言のままになぐさめる。恵美はいっそ鳥羽をぶっとばしてやろうかと手をこぶしにしてふるわせるがさすがに実行までははばかられた。まったくとばかり亜希子は鳥羽と梅子一派を見遣るがもとより心入れは身内の梅子ら3人にあるのだった、たとえ普段からどれだけ反抗の煩わしさを受けていたとしてもである。間違っても新歌人協会への梅子の思い入れを鳥羽に口にするつもりなどなかった。一方鳥羽に対してはいささか大人げないと思うが、しかし本人が云うように意を決して端から心を開いてくれたぶん、それを拒否された時の怒りが相当強かったのだろうとも思われた。けっして「いや、何も…」ではなかったのだ。またなるほど経営者なら一皮剝けばこういう激高癖があってしかるべきなのだろうと思われ、表面の温厚の顔はいつでも豹変するものと留意するしかない。亜希子はまるで鳥羽がお上かお殿様ででもあるかのようにその美しい顔に愛想笑いを浮かべては「はい、はい、わかりました。わたしたちは若さだけしか取り柄がなくって…どうかご堪忍ください」と相手を持ち上げてみせる。またその一方で加代同様に立ちあがって来ては梅子の手を握り「梅子…」と目でこれをなぐさめもした。しかし梅子はフンとばかり顔をそむけてしまう。まったくこの先が思いやられたが梅子が指摘したとおり自らが独断で招いてしまった結果であり、ここは何とか取りつくろって歌会を成立させるほかはない。つぎに万事心得ているだろう匡子か慶子と、自分のコバンザメと公言する郁子との間で歌合わせをさせようかなどともくろんでいるとあずま屋から見て西南の方、風閣寺に通じる道から一陣の暖かい風が吹いて来て、その風に乗るように一人の托鉢僧がこちらへと歩いて来るのが見えた。そのまま通り過ぎるかと思ったら亜希子の目の前で立ち止り、網代笠に手をあててややこれを持ち上げ、ぶしつけにも亜希子の顔にまじまじと見入って動かない。
【憤懣やる方ない梅子(おん大将?…恵美と加代の)】
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