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白峰の巻
魂の光と影
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ところが僧は梅子ではなくまず郁子に「郁子さんとやら、云わずもがなで覚えているだろうが、今の、この梅子さんの云ったことを覚えておきなさい。今のあなたでは戸惑うばかりだろうけれど、いつか必ず心に沁みる時が来ます」と云いさし、さてここぞ白峰とばかり「いや、梅子さん、人には過去世というものがあります。あなたはいまだお若くて、いかなる不遇や不合理にも遭っていないとは思うが、にも拘らず、さきほどらいの論説を聞き、ご様子を見れば、どうも過去世においてなにかしら強く、不遇の極みを経験したような感じもいたします。観じるにこれは魂の癖というもので、その折りその時に限らず、転生のたびに都度経験する、あるいは経験しなければならないような事柄なのかも知れません。いったいなぜそうなるのか…自分をそう至らしめる世間、廻りが悪いのか、それともそれを消化しきれず、肯んじ得ない自分が未熟なのか…それこそみずからにおける本音と建前の問題なのかも知れません。しかしではあるが、そのように転生の都度同じ問題に直面し続けるということは、これはまだあなたがその障害を乗り越えていない、解決していないことを意味するのです。幸か不幸か奇しくもここ吉野は西行庵の前で、いたって拙くはあるが私、沙門に出会ったということはある意味、絶好のチャンスとも思える…さて、そこでです。梅子さん、あなたはこの世が忍土であるということをご存知か?不正義、不条理が充ちている世界、それがこの世です。あなたに限らず誰でもその中で強いうっ屈を抱かざるを得ない。普通はそれを堪え忍ぶ、すなわち所詮世間とはこんなものとして踏みこらえるのですが、それについてはどうお考えですか」と長広舌の末に問いかけた。
【魂の光と影…換言すれば「願いとカルマ」。これらを成就し矯正する為に人は何度でも生まれかわるのですが… ※これこそが当小説の眼目であり、主題です】
Karin Henselerさんの作品
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