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4.入学式
しおりを挟む「つ、ついに始まるわ!入学式の確定イベント!」
入学式…それは乙女ゲームの最初のイベント。
全ての攻略対象者に共通する最初の大切なイベントだ。
入学式では攻略対象者は先に会場入りをしていて、後に入ってくる入学生の中でヒロインを見つける。そしてヒロインの可愛さに目を奪われた攻略対象者が、ヒロインに興味を持って今後の出会いイベントに繫るのだ。
殿下と宰相の息子は一つ上の二年生。
騎士団長の息子と隣国の留学生は三年生。
普通なら接点は無いけど、この最初のイベントがあることで、これから交流しやすくなる。
入学式は確定イベントなのだ。
だからこそ絶対に入学式には参加する!と意気込んでいたのだけど…………
「もぉーーどうしてこうなるのよ!!」
私は何故か校医室のベッドにいた。
何故校医室のベッドにいるかと言うと、ついにイベントが始まると思ったら盛大に緊張してしまい、緊張のあまり朝の食事が喉を通らず、入学式が始まる前に貧血を起こしてしまった。入学式が始まるまで校医室で少しだけ休もうと思っていたら、ベッドでスヤスヤと寝こけてしまい、そして起きた時には入学式はもう終わっていたのだ。
「えぇー確定イベントは?これ、どうなるのよ??はぁーー。もう入学式も終わっているわね…。そろそろ授業が始まるから戻らないと…………あら??」
私はふと校医室の窓から見えた光景に目を奪われる。
窓の外には裏庭が続いているのだが、そこに制服を着た令嬢がキョロキョロと辺りの様子を伺っているのだ。
(何をしているのかしら。待ち合わせとか?もうすぐ授業が始まるのに……。)
盗み見など淑女のすることではないが、余りにも女子生徒の様子が不審すぎて目が離せない。
(うーーん。ちょっと距離があって見えづらいわね。彼女の方も私に気付いてないみたい……あら……えっえぇーー⁉︎掘ってる⁉︎)
女子生徒は裏庭にあるオークの木の根元を一心不乱に掘り出したのだ。
(掘ってるわね…。スコップを使わず直に手で掘ってるわ。あれじゃ手も制服も汚れちゃうわよ。……うん?埋めた?)
女子生徒は掘った穴に何かを埋めて、足早にその場を去っていった。
「……なんだったのかしら?」
「体調はどうかしら。そろそろ授業が始まるけど戻れそう?」
私は余りの光景にポカーンとしていると、校医の先生から声をかけられて我に返った。
「はい、大丈夫です。お手間をおかけ致しました。」
私は慌てて先生にお礼を言い教室に向かう。
(うーーん。何を埋めたのか確かめたい気もするけど、それは流石に失礼よね。うーーーん。き、気になるわね。)
ーーーリリアは考えに集中していてある事を忘れていた。
ベッドで寝ている時に寝苦しさから、制服のシャツの一番上のボタンを開けて、リボンも少し緩めていたことに。そしてベッドで休んでいる時に体温が上がり、その頬は赤く色づいてる。
リリアの美貌と相まって、その姿はまるで男の情欲を掻き立てるようだった。
先程からすれ違う男子生徒に熱い眼差しで見つめられているが、リリアは全く気づいていない。
そして、黒髪の青年がリリアとすれ違いで、校医室に来たことも全く気づいていなかった。
(やだ私ったら!服を直すの忘れていたわ。)
慌てて服装を直し教室の扉を開けたのだが…
教室の中には何人か生徒がいたが、何故か驚愕の表情で私を見つめているのだ。
(えっ??なんで??教室間違えていないわよね。私何か変かしら?あら、服装はちゃんと直したはずよね?)
サッと服装をチェックするが、変なところは無いように思える。取り敢えず自分の席に座ったが、余りの居心地の悪さに戸惑いを隠せない。
(と、とりあえず挨拶よね。よし、第一印象は大事だわ)
「初めまして。よろしくお願いします。」
私はとびっきりの笑顔で隣の女子生徒に挨拶したのだが、相手は何故か顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。
(前途多難だわ……。)
思わず重いため息を吐いてしまったが、先生が教室に入る音にかき消された。
気まずい空気の中なんとか一日を終えて、さぁ帰ろうと席を立ったところで、教室の隅で女子生徒の泣き声が聞こえる。思わず様子を伺ってみると泣いてる女子生徒をお友達が慰めているようだ。
「ひ、、ひどいわ。私の大切な髪飾りが、、。」
女子生徒はしゃくり上げながら、自分の髪飾りが盗まれたと訴えていた。
(えぇーー盗まれたなんて物騒ね。あら??もしかしてあの子は…さっきの?)
遠目で見たので確信はないが、先程の土を掘っていた女性にとてもよく似ている。
「あ、あの…」
私は思わず声を掛けると泣いていた女子生徒はビクッと体を震わせてこちらを見た。
「急に話しかけてごめんなさい。私はリリアと申します。えーーと、あなたは…」
「はぁ?私はエリーよ!!ダグラス子爵の令嬢なのよ!私の名前知らないの!」
キッと私を睨みつけてエリー様は言い放つ。私は即座にこの女性は面倒な人だと判断し、サッとカーテシーを取り彼女に非礼を詫びた。
「不敬な発言をしてしまい大変申し訳ございません。もしエリー様の寛大な心でお許し頂けるなら、発言の許可をくださいますようお願い申し上げます。」
私の態度に気を良くしたのか、エリー様は見下すように笑いかけた。
「いいわよ。何かしら?」
「ありがとうございます。先程『盗まれた』と物騒な発言が聞こえてましたので、思わず声を掛けた次第でございます。もし宜しければ、学園の警備にお伝えしてみては如何でしょうか。物盗りが学園に潜んでいるなら一大事でございますので、警備の者が学園中を隈なく探してくれることでしょう。もしかしたら逃げられないと悟った物盗りが何処かに髪飾りを隠したかもしれません。
……………例えば裏庭などは物を隠すのに適しているかと。」
私は発言をしながら、ジッとエリー様を観察する。そして案の定裏庭の言葉を聞いてエリー様は狼狽し始めた。
(うーん。やっぱり裏庭で土を掘ってたのはエリー様よね。よく見ると制服の袖が汚れているし。もしかして髪飾りを埋めたのかしら。でも何の為に?)
「は、犯人の目星はついているわ。きっとヴァネッサ様の仕業よ!入学式でずっと私の髪飾りを羨ましげに見ていたんだから。高価なエメラルドをあしらった立派な髪飾りだったのよ。それにこの私だからヴァネッサ様に狙われたのよ。」
(え?ヴァネッサ様?それってパーシヴァル公爵令嬢のヴァネッサ様のことを言っているの?)
エリー様が名指しした犯人の名前が余りにも高貴な身の上の方で、しかも大した証拠も無いのに堂々と宣言する異様さに思わず言葉を失ってしまう。
そして何故かエリー様は得意気な顔して、ご友人達と一緒に教室を出て行ってしまったのだ。
(えー本当にヴァネッサ様の仕業なの?)
どうも腑に落ちないと思いながら私は首を傾げた。
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