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3.ファンブレント学園
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ーーーーーガタッ、、ガタ、ガタ、、、ガタッ
ファンブレント学園の入学が一週間後に迫り、私とお父様は馬車に乗って王都に向かい出発していた。
領地から王都は馬車で四日程かかる。
領地の緑広がる風景がだんだん遠ざかり、王都が近づくのに比例してお店や人の数が増えて活気付いていく。
「ようやく着くね。ふふ、久しぶりの王都だからってはしゃいじゃだめだよ。」
「やだ、お父様。私もう子供じゃないのよ。」
私が王都に来るのは、子供の頃にお父様の友人のパーティーに参加した時以来だ。あの時の私は見るもの全てが魅力的に見えて、はしゃぎ過ぎて目を回しかけたのだ。
「王都は久しぶりだけど、やっぱり人が多くて賑やかね。わぁーすごい!」
学園に続く大通りの道なりに満開の桜の木が続いている。鮮やかに色付いた桜の花びらが風に舞っていて息を呑む程の美しさだ。
そして桜並木を通り抜けると、ファンブレント学園の外観が見えてくる。学園と言ってもかなり広大な敷地を有していて、敷地内に校舎、学生寮、教会、パーティー会場、庭園など様々な施設が揃っている。
(桜の木の後ろにそびえ立つファンブレント学園!すごい!ゲームと同じシーンだわ。)
「・・・リリー、本当にはしゃぎ過ぎては駄目だからね。」
「だ、大丈夫よ!もう心配性なんだから。」
太陽が真上に差し掛かった頃、ようやく学園に到着し、御者が馬車のドアを開けてくれた。後ろの馬車に乗っていたアンナが既にタラップの前に控えている。侍女のアンナは学生寮で身の回りのお世話をしてくれるのだ。
「アンナ。リリーの事をよろしく頼むよ。」
「承知致しました。旦那様。
リリア様、お疲れではないでしょうか?」
「アンナ、心配しないで!少し疲れただけよ。お父様はこれからお知り合いに会いに行かれるの?」
「ああ。一週間程滞在したら領地に戻るよ。また仕事で王都に来る時は連絡するね。頑張っておいで、リリー。」
そう言ってお父様は私を優しく抱きしめてくれる。
(ーーうん。頑張る。絶対に逆ハーを成功させてみせるわ。)
お父様に別れを告げて、私達は学園内にある学生寮に向かった。
「とりあえず、お洋服を着替えましょう。」
「ありがとう。アンナ。」
私はアンナに手伝ってもらい、ワンピースに着替えながら、これからの学園の過ごし方について考える。
うん、とりあえずーーー
「アンナ、伝えておきたいことがあるの。」
「??どうしました?お嬢様?」
「今後私が殿下や上流貴族の方達と交流を持つかもしれないけど驚かないでね。」
「はっ⁉︎え…えっと…?で、殿下ですか?」
アンナは困惑した表情で私に問いかけてきた。
(まあそうなるわよね。ただの男爵令嬢が殿下と交流を持てるはずがないし。)
何故私はアンナに事前に知らせたのか。
それは今後私が攻略対象者と交流を持って、アンナを驚かせてしまうのは申し訳ないと思ったからだ。
「あーえっとね。ほら、私ってとても可愛いじゃない。だからね、殿下とか上流貴族の方からお誘いがあるかもしれないし。」
「・・・リリア様、何を言ってるんですか。」
(あ、、、アンナの目が据わってきたわ。まずいわね、このままではお説教モードだわ。)
「あのですね。殿下は勿論のことですが、上流貴族の殆どの方には婚約者がいらっしゃるんですよ。それなのに交流を持つことが、どういう事か分かっているんですか!」
「あーいや、、そこはヒロインだから大丈夫だと思うし…。」
「ヒロイン?何を言ってるんですか?だいたい安易に上流の方に近づいて、もし不敬なことをしたら大事ですよ。最悪の場合、不敬罪で死刑になることもあるんですよ。」
「えぇ⁉︎死刑?な、なんで?怖すぎるわ!」
「当然じゃないですか。殿下は王族なんですよ。男爵令嬢とは身分が違うのですよ。王族が太陽ならリリア様はその辺に転がってる石ころですよ。それぐらいの差があるんですからね。」
いや、言い過ぎではないのかしら。
石ころって酷すぎない?
でもそうか……。
ヒロインだと思って浮かれ過ぎてたわ。
バッドエンドになる可能性だってあるのよね。
ある程度の節度を保ちつつ、イベントの状況をみながら行動した方がいいわね。
「リリア様、大丈夫ですか?」
「あ、えぇ大丈夫よ。アンナありがとう。危ない所だったわ。」
(とりあえず、攻略対象者以外の上流貴族には近づかない方がいいかしら。怒らせちゃったら怖いし。)
学園の校舎は上級貴族(王族、公爵、侯爵、伯爵)と下級貴族(子爵、男爵)で別れている。
同じ学園内にいるので、すれ違うことはあるかもしれないが、基本的に接点は無い。
「・・・本当に分かってますか?はぁーリリア様は危なっかしいから心配ですよ。」
「大丈夫よ!ちゃんと節度を持って逆ハーします。」
「それならいいのですが…。今日はお疲れですのでお部屋でゆっくりなさいますか?」
「あ、、えーーと。実はちょっと行きたいところがあるの。」
「そうですか。ではご一緒致しますね。」
「あ、いや、アンナは荷物の整理で忙しいでしょう。疲れているだろうし、私一人で行ってくるから大丈夫よ。」
「まぁ学園内は厳重に警備されているので大丈夫かとは思いますが…。すぐに戻ってこれますよね?迷子になったり……やっぱり心配なのでご一緒したほうが…」
「だ、大丈夫よ!!もう、子供じゃないんですからね。」
「ふふ、分かりました。では陽が落ちる前にお戻りくださいね。」
「わかったわ。じゃ行ってくるから!」
私は足早にある場所に向かった。
「ふ、ふぁーーーすごい。ゲームの通りだわ!」
私は学園の敷地内にある庭園に来ている。
庭園には色とりどりの花が咲き、中央には華麗に装飾された大きな噴水が設置されている。
「あぁーゲームの聖地巡礼ができるなんて!!すごい!あぁー夢のようだわ!」
乙女ゲームではこの場所で好感度の一番高い攻略対象者からプロポーズされる。その際『婚約の証』を相手から渡されるのだ。
「『婚約の証』は攻略キャラによって渡される物が違うのよね。お陰で全員攻略して逆ハーに目覚めちゃったわ。」
プロポーズは美織がとっても、とっっっても大好きだったシーンなのだ。
その場所に私は今立っている。
そして私は今、全身全霊で感動している。
ジーーーーンと感動の余韻に浸っているだ。
(う、、うん?あれ??)
ふと私は背中に視線を感じ振り向いた。
少し離れた場所に佇んでいる黒髪の青年が私を見ている気がする。
(あ、、あら?私見られているのかしら??)
ジーーー
(いや、見られているわ。すっごい見てるわね。)
ジーーーーーー
(えぇっっ。こ、怖い。な、なんなのよー??)
ジーーーーーーー スタ スタ スタ
(い、いやーーー!ち、近づいてくる!!こ、怖い!不審者なの??警備は厳重じゃなかったの??と、取り敢えず逃げないと…。)
私は恐怖に震えている足を無理やり動かし、踵を返して走り出した。
「ま、待ってくれ!!」
青年は焦ったように声を張り上げたが、私はその声を無視して学生寮に向かって走り出す。
息も絶え絶えで部屋に戻りアンナにとても心配させてしまった。
(あれは一体なんだったのかしら?)
勝手に不審者と決めつけてしまったが、厳重な警備が施されている学園に侵入など出来るはずがない。
今思えば佇まいに気品さを感じられたが、ただ彼の眼差しがまるで捕食者のようで恐ろしかった。
(うーーーん。よし!一旦忘れましょう!)
取り敢えず私は明後日の入学式まで寮内で過ごすことに決めた。
ファンブレント学園の入学が一週間後に迫り、私とお父様は馬車に乗って王都に向かい出発していた。
領地から王都は馬車で四日程かかる。
領地の緑広がる風景がだんだん遠ざかり、王都が近づくのに比例してお店や人の数が増えて活気付いていく。
「ようやく着くね。ふふ、久しぶりの王都だからってはしゃいじゃだめだよ。」
「やだ、お父様。私もう子供じゃないのよ。」
私が王都に来るのは、子供の頃にお父様の友人のパーティーに参加した時以来だ。あの時の私は見るもの全てが魅力的に見えて、はしゃぎ過ぎて目を回しかけたのだ。
「王都は久しぶりだけど、やっぱり人が多くて賑やかね。わぁーすごい!」
学園に続く大通りの道なりに満開の桜の木が続いている。鮮やかに色付いた桜の花びらが風に舞っていて息を呑む程の美しさだ。
そして桜並木を通り抜けると、ファンブレント学園の外観が見えてくる。学園と言ってもかなり広大な敷地を有していて、敷地内に校舎、学生寮、教会、パーティー会場、庭園など様々な施設が揃っている。
(桜の木の後ろにそびえ立つファンブレント学園!すごい!ゲームと同じシーンだわ。)
「・・・リリー、本当にはしゃぎ過ぎては駄目だからね。」
「だ、大丈夫よ!もう心配性なんだから。」
太陽が真上に差し掛かった頃、ようやく学園に到着し、御者が馬車のドアを開けてくれた。後ろの馬車に乗っていたアンナが既にタラップの前に控えている。侍女のアンナは学生寮で身の回りのお世話をしてくれるのだ。
「アンナ。リリーの事をよろしく頼むよ。」
「承知致しました。旦那様。
リリア様、お疲れではないでしょうか?」
「アンナ、心配しないで!少し疲れただけよ。お父様はこれからお知り合いに会いに行かれるの?」
「ああ。一週間程滞在したら領地に戻るよ。また仕事で王都に来る時は連絡するね。頑張っておいで、リリー。」
そう言ってお父様は私を優しく抱きしめてくれる。
(ーーうん。頑張る。絶対に逆ハーを成功させてみせるわ。)
お父様に別れを告げて、私達は学園内にある学生寮に向かった。
「とりあえず、お洋服を着替えましょう。」
「ありがとう。アンナ。」
私はアンナに手伝ってもらい、ワンピースに着替えながら、これからの学園の過ごし方について考える。
うん、とりあえずーーー
「アンナ、伝えておきたいことがあるの。」
「??どうしました?お嬢様?」
「今後私が殿下や上流貴族の方達と交流を持つかもしれないけど驚かないでね。」
「はっ⁉︎え…えっと…?で、殿下ですか?」
アンナは困惑した表情で私に問いかけてきた。
(まあそうなるわよね。ただの男爵令嬢が殿下と交流を持てるはずがないし。)
何故私はアンナに事前に知らせたのか。
それは今後私が攻略対象者と交流を持って、アンナを驚かせてしまうのは申し訳ないと思ったからだ。
「あーえっとね。ほら、私ってとても可愛いじゃない。だからね、殿下とか上流貴族の方からお誘いがあるかもしれないし。」
「・・・リリア様、何を言ってるんですか。」
(あ、、、アンナの目が据わってきたわ。まずいわね、このままではお説教モードだわ。)
「あのですね。殿下は勿論のことですが、上流貴族の殆どの方には婚約者がいらっしゃるんですよ。それなのに交流を持つことが、どういう事か分かっているんですか!」
「あーいや、、そこはヒロインだから大丈夫だと思うし…。」
「ヒロイン?何を言ってるんですか?だいたい安易に上流の方に近づいて、もし不敬なことをしたら大事ですよ。最悪の場合、不敬罪で死刑になることもあるんですよ。」
「えぇ⁉︎死刑?な、なんで?怖すぎるわ!」
「当然じゃないですか。殿下は王族なんですよ。男爵令嬢とは身分が違うのですよ。王族が太陽ならリリア様はその辺に転がってる石ころですよ。それぐらいの差があるんですからね。」
いや、言い過ぎではないのかしら。
石ころって酷すぎない?
でもそうか……。
ヒロインだと思って浮かれ過ぎてたわ。
バッドエンドになる可能性だってあるのよね。
ある程度の節度を保ちつつ、イベントの状況をみながら行動した方がいいわね。
「リリア様、大丈夫ですか?」
「あ、えぇ大丈夫よ。アンナありがとう。危ない所だったわ。」
(とりあえず、攻略対象者以外の上流貴族には近づかない方がいいかしら。怒らせちゃったら怖いし。)
学園の校舎は上級貴族(王族、公爵、侯爵、伯爵)と下級貴族(子爵、男爵)で別れている。
同じ学園内にいるので、すれ違うことはあるかもしれないが、基本的に接点は無い。
「・・・本当に分かってますか?はぁーリリア様は危なっかしいから心配ですよ。」
「大丈夫よ!ちゃんと節度を持って逆ハーします。」
「それならいいのですが…。今日はお疲れですのでお部屋でゆっくりなさいますか?」
「あ、、えーーと。実はちょっと行きたいところがあるの。」
「そうですか。ではご一緒致しますね。」
「あ、いや、アンナは荷物の整理で忙しいでしょう。疲れているだろうし、私一人で行ってくるから大丈夫よ。」
「まぁ学園内は厳重に警備されているので大丈夫かとは思いますが…。すぐに戻ってこれますよね?迷子になったり……やっぱり心配なのでご一緒したほうが…」
「だ、大丈夫よ!!もう、子供じゃないんですからね。」
「ふふ、分かりました。では陽が落ちる前にお戻りくださいね。」
「わかったわ。じゃ行ってくるから!」
私は足早にある場所に向かった。
「ふ、ふぁーーーすごい。ゲームの通りだわ!」
私は学園の敷地内にある庭園に来ている。
庭園には色とりどりの花が咲き、中央には華麗に装飾された大きな噴水が設置されている。
「あぁーゲームの聖地巡礼ができるなんて!!すごい!あぁー夢のようだわ!」
乙女ゲームではこの場所で好感度の一番高い攻略対象者からプロポーズされる。その際『婚約の証』を相手から渡されるのだ。
「『婚約の証』は攻略キャラによって渡される物が違うのよね。お陰で全員攻略して逆ハーに目覚めちゃったわ。」
プロポーズは美織がとっても、とっっっても大好きだったシーンなのだ。
その場所に私は今立っている。
そして私は今、全身全霊で感動している。
ジーーーーンと感動の余韻に浸っているだ。
(う、、うん?あれ??)
ふと私は背中に視線を感じ振り向いた。
少し離れた場所に佇んでいる黒髪の青年が私を見ている気がする。
(あ、、あら?私見られているのかしら??)
ジーーー
(いや、見られているわ。すっごい見てるわね。)
ジーーーーーー
(えぇっっ。こ、怖い。な、なんなのよー??)
ジーーーーーーー スタ スタ スタ
(い、いやーーー!ち、近づいてくる!!こ、怖い!不審者なの??警備は厳重じゃなかったの??と、取り敢えず逃げないと…。)
私は恐怖に震えている足を無理やり動かし、踵を返して走り出した。
「ま、待ってくれ!!」
青年は焦ったように声を張り上げたが、私はその声を無視して学生寮に向かって走り出す。
息も絶え絶えで部屋に戻りアンナにとても心配させてしまった。
(あれは一体なんだったのかしら?)
勝手に不審者と決めつけてしまったが、厳重な警備が施されている学園に侵入など出来るはずがない。
今思えば佇まいに気品さを感じられたが、ただ彼の眼差しがまるで捕食者のようで恐ろしかった。
(うーーーん。よし!一旦忘れましょう!)
取り敢えず私は明後日の入学式まで寮内で過ごすことに決めた。
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