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7.二人の距離
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(えっ⁉︎ あ、あらーーー!!き、来た!!)
彼の姿越しに遠くの方からこちらに向かってくるエリー様が見える。幸いにも木が死角になり、エリー様は私達に気付いていないが、このままだと直ぐに気付かれてしまうだろう。
(っ!!隠れなきゃ!あーでもこの人になんて言えばいいの!!)
私があたふたとしていると、彼はすぐに異変に気づき振り向きざまにエリー様を一瞥し、私の手を掴んで死角になる木の陰に隠れてくれた。
隠れてくれたのはありがたい………だけど…。
私は木を背に立ち、彼は私のほうを向いて立っている。そう"向かい合って"いるのだ!私達は!
そして彼は背を屈めて覆い被さるよう私を隠してくれている。私の目線は彼の胸元にあり、まるで抱きしめられているかのような錯覚を起こす。
私はさっきと違った意味であたふたしてると彼がこっそりと囁いた。
「すまない。見つかりたくないのかと思ったのだが…。違っただろうか。」
う、、うん。確かに見つかりたくなかった。
それは正しい。
でもこの状況はどうなのだろう?
婚約者でもない男女が、こんな体勢で隠れているのはアウトではないのか……。
それに……とても…そ、その…は、恥ずかしい。
彼の吐息が私の耳にかかり、かぁーーと自分の顔が赤くなっていくのが分かる。焦りと恥ずかしさで、もう泣きそうだ。せめて少し離れてもらおうとモゾモゾと頭を上げて彼を見上げると、私の動きに気づき覗き込んできた彼の目とバッチリあった。
彼は目を見開き、真っ赤な顔で「すまない」と口早に謝ってきた。そして半歩程後ろに下がったので、私は咄嗟にクルリと半回転し彼に背を向けた。
「い、いえ。大丈夫です。ありがとうございます。」
・・・正直、全然大丈夫じゃない。
異性とこんな至近距離で接したことは、前世も含めてない。どうにも近さに慣れず心臓の鼓動が早まっていく。
(やだ。顔が熱い…。ちょっとまって、このままじゃ恥ずかしすぎる。な、、なにか、、別のことを、、)
気まずさを振り切るように、先程見かけたエリー様の姿を探すため視線を彷徨わせると、彼も私の視線を追って、同時にエリー様を見つけた。
「「・・・掘ってる」」
(やだ、声が揃ったわ。)
思わずパッと彼の方を振り向いたら、私の額が彼の顎にコツンと当たってしまった。
なぜ彼の顔がこんなに近くにあるのか⁉︎
驚いた私はズザッと頭を仰け反らせたら、彼は焦ったように「待て!ち、違う」と言いながら顔を左右に振っている。
そんな事をしている間にエリー様は土の中から回収した物を手に持ち、来た道を戻っていってしまった。
(あぁー待って!ど、どうしたらいいの⁉︎)
このままエリー様に問い詰めるべきか……
それだと彼に事情がバレてしまう……
大事になってしまうのでは……
私は考えが纏まらず、エリー様と彼の姿を何度も見比べていると、、
「あれが何か知りたいのか?」
「え??えぇ、まぁそうですね。ここで確認できればと思ったのですが……」
「わかった。」
「えっ??」
そう言うと彼はスタスタとエリー様の後を追いかけ、エリー様と何か二、三言葉を交わしたと思ったら、またスタスタとこっちへ戻ってくる。
そして私の近くまできて、後ろを振り返りエリー様がいない事を確認してから教えてくれた。
「彼女が持っていたのはエメラルドが装飾されている髪飾りだった。」
「あ、、ありがとうございます。」
(やはり"盗まれた"はエリー様の嘘だったのか。でも何のために?)
「何かあったのか?まさか!あの髪飾りは君の物か?」
「い、いえ。彼女の物で間違い無いと思います。」
「では何故君は………」
そうなりますよね。こんな所でコソコソと何やってんだってなりますよね。
正直に答えるべきか………うーーーん。
「あの、ちなみに彼女に何と言って見せて貰ったんですか?」
「??…見せて欲しいとお願いしただけだが?お気に入りらしく自慢気にしてたが…」
えぇー、エリー様迂闊すぎません?
盗まれたと触れ回ってるのに、自慢気に見せるって……。
もしや自滅するタイプの人間なんだろうか?
それなら直ぐにでもヴァネッサ様の関係の方々が、エリー様の嘘を問い詰めるだろう。
ここで彼に事情を説明して、事を大きくするのはヴァネッサ様にとって良くない。
(うん!!決めた!)
「ありがとうございます。これで私の問題は解決致しました。」
私はニッコリと微笑みお礼を伝える。彼は何か聞きたそうにしているが、私は微笑みを崩さず話を切り上げる。
「…何か困っている事があれば力になるが。」
「いえ、問題は解決致しましたので大丈夫です。」
こういう時はお父様直伝の『微笑みで乗り切ろう』戦法だ。何を言われても微笑みを崩さず、屈せず、自分の意見を押し通す!
「…そうか。ならいいのだが。」
何故か彼は悲しげに俯く。
助けてもらったのに何も説明をしないのは失礼だと分かっているのだが、、
(うぅ、、心が痛いわぁ。でも申し訳ないけどこのまま帰ろう。)
「それでは、ウィンスレット伯爵卿。御前を…
「アルフレッドだ。」
「・・えっ⁉︎」
「アルフレッドと呼んでくれ。」
「え、、あ、はい。えぇーと、アルフレッド様。」
「ありがとう。リリア嬢。」
口調は強いが懇願する様に話す彼に思わず名前で呼んでしまう。アルフレッド様は嬉しそうにうっすらと口角を上げ、柔らかな眼差しで私を見つめる。そして陽が西に傾き始め茜色した夕焼けの陽射しが私とアルフレッド様を包み込んでいった。
彼の姿越しに遠くの方からこちらに向かってくるエリー様が見える。幸いにも木が死角になり、エリー様は私達に気付いていないが、このままだと直ぐに気付かれてしまうだろう。
(っ!!隠れなきゃ!あーでもこの人になんて言えばいいの!!)
私があたふたとしていると、彼はすぐに異変に気づき振り向きざまにエリー様を一瞥し、私の手を掴んで死角になる木の陰に隠れてくれた。
隠れてくれたのはありがたい………だけど…。
私は木を背に立ち、彼は私のほうを向いて立っている。そう"向かい合って"いるのだ!私達は!
そして彼は背を屈めて覆い被さるよう私を隠してくれている。私の目線は彼の胸元にあり、まるで抱きしめられているかのような錯覚を起こす。
私はさっきと違った意味であたふたしてると彼がこっそりと囁いた。
「すまない。見つかりたくないのかと思ったのだが…。違っただろうか。」
う、、うん。確かに見つかりたくなかった。
それは正しい。
でもこの状況はどうなのだろう?
婚約者でもない男女が、こんな体勢で隠れているのはアウトではないのか……。
それに……とても…そ、その…は、恥ずかしい。
彼の吐息が私の耳にかかり、かぁーーと自分の顔が赤くなっていくのが分かる。焦りと恥ずかしさで、もう泣きそうだ。せめて少し離れてもらおうとモゾモゾと頭を上げて彼を見上げると、私の動きに気づき覗き込んできた彼の目とバッチリあった。
彼は目を見開き、真っ赤な顔で「すまない」と口早に謝ってきた。そして半歩程後ろに下がったので、私は咄嗟にクルリと半回転し彼に背を向けた。
「い、いえ。大丈夫です。ありがとうございます。」
・・・正直、全然大丈夫じゃない。
異性とこんな至近距離で接したことは、前世も含めてない。どうにも近さに慣れず心臓の鼓動が早まっていく。
(やだ。顔が熱い…。ちょっとまって、このままじゃ恥ずかしすぎる。な、、なにか、、別のことを、、)
気まずさを振り切るように、先程見かけたエリー様の姿を探すため視線を彷徨わせると、彼も私の視線を追って、同時にエリー様を見つけた。
「「・・・掘ってる」」
(やだ、声が揃ったわ。)
思わずパッと彼の方を振り向いたら、私の額が彼の顎にコツンと当たってしまった。
なぜ彼の顔がこんなに近くにあるのか⁉︎
驚いた私はズザッと頭を仰け反らせたら、彼は焦ったように「待て!ち、違う」と言いながら顔を左右に振っている。
そんな事をしている間にエリー様は土の中から回収した物を手に持ち、来た道を戻っていってしまった。
(あぁー待って!ど、どうしたらいいの⁉︎)
このままエリー様に問い詰めるべきか……
それだと彼に事情がバレてしまう……
大事になってしまうのでは……
私は考えが纏まらず、エリー様と彼の姿を何度も見比べていると、、
「あれが何か知りたいのか?」
「え??えぇ、まぁそうですね。ここで確認できればと思ったのですが……」
「わかった。」
「えっ??」
そう言うと彼はスタスタとエリー様の後を追いかけ、エリー様と何か二、三言葉を交わしたと思ったら、またスタスタとこっちへ戻ってくる。
そして私の近くまできて、後ろを振り返りエリー様がいない事を確認してから教えてくれた。
「彼女が持っていたのはエメラルドが装飾されている髪飾りだった。」
「あ、、ありがとうございます。」
(やはり"盗まれた"はエリー様の嘘だったのか。でも何のために?)
「何かあったのか?まさか!あの髪飾りは君の物か?」
「い、いえ。彼女の物で間違い無いと思います。」
「では何故君は………」
そうなりますよね。こんな所でコソコソと何やってんだってなりますよね。
正直に答えるべきか………うーーーん。
「あの、ちなみに彼女に何と言って見せて貰ったんですか?」
「??…見せて欲しいとお願いしただけだが?お気に入りらしく自慢気にしてたが…」
えぇー、エリー様迂闊すぎません?
盗まれたと触れ回ってるのに、自慢気に見せるって……。
もしや自滅するタイプの人間なんだろうか?
それなら直ぐにでもヴァネッサ様の関係の方々が、エリー様の嘘を問い詰めるだろう。
ここで彼に事情を説明して、事を大きくするのはヴァネッサ様にとって良くない。
(うん!!決めた!)
「ありがとうございます。これで私の問題は解決致しました。」
私はニッコリと微笑みお礼を伝える。彼は何か聞きたそうにしているが、私は微笑みを崩さず話を切り上げる。
「…何か困っている事があれば力になるが。」
「いえ、問題は解決致しましたので大丈夫です。」
こういう時はお父様直伝の『微笑みで乗り切ろう』戦法だ。何を言われても微笑みを崩さず、屈せず、自分の意見を押し通す!
「…そうか。ならいいのだが。」
何故か彼は悲しげに俯く。
助けてもらったのに何も説明をしないのは失礼だと分かっているのだが、、
(うぅ、、心が痛いわぁ。でも申し訳ないけどこのまま帰ろう。)
「それでは、ウィンスレット伯爵卿。御前を…
「アルフレッドだ。」
「・・えっ⁉︎」
「アルフレッドと呼んでくれ。」
「え、、あ、はい。えぇーと、アルフレッド様。」
「ありがとう。リリア嬢。」
口調は強いが懇願する様に話す彼に思わず名前で呼んでしまう。アルフレッド様は嬉しそうにうっすらと口角を上げ、柔らかな眼差しで私を見つめる。そして陽が西に傾き始め茜色した夕焼けの陽射しが私とアルフレッド様を包み込んでいった。
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