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【第1章】魔王城脱出編
5.OL、剣を学びたい
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あの日、アルベールに指南を申し出た私は、その翌日にマティスに「ねぇ、パパ。私剣が欲しいの。」とお得意のおねだりをして見せた。
今まで私が欲しがるものといえば、美味しいお菓子や煌びやかな装飾の施された豪華な洋服、美しく輝く宝石やアクセサリーだった。
そんな私が突如趣旨の違いすぎるものを強請ったためマティスは驚いた様子であったが、魔族が力を欲することは本能のようなものなので、嬉々として私に剣を与えた。
その剣は、小さな私でも持てるよう小太刀ほどの長さの剣であったが、ひ弱な私にはそれでも満足に振るうことができなかった。
剣を手に入れた私は、それから毎日アルベールに剣を教わっている。
「恐れながら、まずリゼット様には筋力も体力も足りません。」
さあ今日からバシバシ強くなるぞ!と息巻いていた私に、アルベールがズバリ吐き捨てた。
自分でも自覚していたことではあるが、こうもはっきり言われては流石にショックだ。
私のやること為すこと、全肯定する魔族ばかりなのに、アルベールはたまにこういうところがある。
前世を思い出す前の私は、そんなアルベールを心底気に入っていた。
そんな私のショックを知ってか知らずか、アルベールから出された最初の課題は一言で言うと筋トレだった。
ランニング鍛錬場100周
腹筋100回×3セット
腕立て100回×3セット
スクワット100回×3セット
という初日から地味なくせに地獄のようなメニューだった。
いくら魔族が人間よりも身体能力に優れていると言っても、昨日まで惰性を貪るだけの日々を送っていただけの私にはとんでもなくハードなメニューだった。
生まれ変わってから、いや、生まれ変わる前からも含めた上でも、これ以上ないくらい死ぬ気で頑張った。
何度途中で「やっぱりやーめた!」って投げ出そうと思ったことか。
だが、私の知る未来を変えるため、なんとか弱い心に打ち勝ち、課せられたメニューをクリアした。
たまらず地べたに仰向けに転がり、大量の汗を流しながら息を切らしている私に、「ゆくゆくはこれの100倍はこなせる様になっていただきます。」とアルベールの非情な声が降ってきて泣いた。
いや、実際には泣いてないけど、泣きたかった。
「……ですが、正直に申しますとまさか本当にやりきるとは思っておりませんでした。」
「えぇ?!」
私の驚愕の声に、申し訳ございませんとアルベールが謝罪し、跪く。
私には不可能だと思われているメニューを課せられていたと言うことだ。
アルベールは、やはりリゼットに剣を握って欲しくないと感じていた。
だから、あわよくばこれで諦めてくれたら、と密かに願っていたのだ。
「流石リゼット様です。出過ぎたことを致しました。どうか、愚かな私を罰してください。」
どうしてそうもすぐに罰を乞うのか。
「罰しは……っ、しないよ……、」
息絶え絶えのまま、私がなんとか返事を返す。
「ですが、私の浅はかな考えのせいで、今もリゼット様はこうも苦しんでおられる。」
仰向けに転がったまま、側で跪いているアルベールに目を向けると、相変わらずの真顔ではあるがどこか悲しそうな雰囲気を感じる。
「はぁ……はぁ、っ、アル、」
堪らずアルベールの方に手を伸ばすと、それに気づいたアルベールが私のすぐ側まで来るとその場でまた跪いた。
手の届く範囲まで来たアルベールにそのまま手を伸ばす。
表情にこそ出てはいないが、どこか悲しそうにしている彼を慰める様に私はその頬に手を当てた。
予想外の出来事に、アルベールが狼狽える。
「リ、リゼット様……、」
「ごめん、ね。はぁ、……っ、私が、弱いから……」
そもそも私が怠けていなければ、もうちょっと体力があり、こんなに息絶え絶えになることもなかった。
「そ、のような……!リゼット様が私に謝られることなど、何一つございません!」
いつも冷静な彼が、焦った様に言うのが少し面白く感じてしまい、思わず私は笑ってしまった。
「アル、確かに、大変だった、けど……っ、今、すっごく、気持ちがいい!」
私は今、スポーツをした後の独特の爽快感や、達成感を感じている。
これは、今までの城に籠っていた日々では、一生感じることができなかったものだ。
前世では学生の頃の部活動などで感じたこともあるが、それももはや遠い昔の様に感じる。
懐かしい気持ち良さに満たされていて、最高に気分がいい。
「この、爽快感、や、達成感は、アルが、私に、くれたもの、だよ……!」
だからね、アル
と、戸惑っている彼をいいことに私が続ける。
「明日も、指導、よろしくね!」
へへ、と笑いながらそう言った私に、アルベールは頬に添えられた私の手に自らの手を重ねた。
「は。リゼット様の御心のままに。」
そう言った彼の鋭いはずのシルバーアッシュの瞳は、愛おしそうに私を見つめていた。
あの日から、早くも1週間が経った。
「リゼット様、構えが崩れております。」
「っ、」
相変わらず魔王城上空は禍々しい厚い雲に覆われていた。
そんなどんよりお空の下、私はひたすらアルベールに向かってマティスからもらった剣を振るう。
そんな私の拙い剣をしなやかに受け流し続けるアルベール。
筋トレから始めたあの日、「では、リゼット様のそのご覚悟にお答えすべく、僭越ながら私も全力で指導させていただきます。」と言ったアルベールはとんでもなくスパルタだった。
毎日、あの地獄の様なメニューをこなした後、アルベールと剣を打ち合っている。
あのメニューだけでヘトヘトになってしまうのに、その後にこの重たい剣を振るわないといけない。
そりゃ構えだって崩れるわ!と、思わず叫びたくなる。
「リゼット様、振りが甘いです。」
「わかっ、てるよ!」
当然といえば当然なのだが、これだけ必死に打ち込んでも軽やかに流されてしまう上、アルベールから細かく指導が降ってくるため、ついムッとしてしまう。
「同じ角度からの振りばかりでは隙だらけです。」
確かに、がむしゃらに剣を振っていた私は、上段から振り下ろすばかりだった。
振り下ろす角度を斜めに変えた私は、振りおろしたばかりの剣をすぐに下から上へ翻した。
キィィーーン
「今のはなかなか面白いです。」
私の剣を受け止めたアルベールが言う。
「はぁ、はぁ、」
「今日は、終わりにしましょう。」
そう言うとアルベールは、腰に差している鞘に剣を収めた。
アルベールは的確に私の限界を見抜く。
アルベールの言葉に素直に従って、私も剣を鞘に収めた。
「今日もありがとう、アル!」
「いつも身に余るお言葉をいただき、有難き幸せです。」
ここ1週間、毎日毎日アルベールにお礼を言いつづけた甲斐もあり、私のお礼にアルベールは驚かなくなった。
ただ、毎回堅苦しい返事は返ってくる。もう挨拶の様なものだと自分に言い聞かせて諦めた。
「ところでアル、お願いがあるのだけど……」
「はい。何なりとご命令ください。」
「命令ではないけど、魔法も教えて欲しいの。」
「魔法、ですか。」
以前、アルベールは魔法が得意ではないと言っていた。
だが先日見たアルベールの魔法は、聞くところによると雷属性と風属性を融合した上級魔法の一つだった。
アルベールの持つ色から、魔力の量が多くないのは事実だろうが、その技術自体は十分なものを持っているはずだ。
それに、アルベールの他に頼む当てもない。
私のお願いにすぐに返答することなく、黙り込んでしまったアルベールを見つめる。
「魔法ならそいつより、俺が教えよう。」
アルベールの返答を待っていると、不意に別の声が聞こえてきた。
「に、」
にーに。
私は彼をそう呼んでいた。
「どうも最近、お前は俺のことを呼んでくれなくなってしまったな。」
そう言ったヴァーノンは、自嘲する様に笑った。
確かに、私は前世の記憶を思い出してから、ヴァーノンのことを呼んでいない。
それどころか出来るだけヴァーノンの存在を避けてさえいた。
ヴァーノンが寂しそうな表情をしていることを見かけることがあったが、こればかりはしょうがないと思う。
私を死に導くはずの人なのだから。本能的に恐怖を感じてしまう。
しかし、今のヴァーノンには何の罪もない。
私が勝手に苦手意識を持ってしまい、勝手に避けているだけだ。
身に覚えもなく、私に避けられ続ける彼が寂しそうにするのも当然のことだった。
だが、未来の出来事とは別に、単純に「にーに」という呼び方が恥ずかしいというものある。
パパはさほど抵抗なく言えるが、流石ににーにはキツイ。
今世でも、私はもう6歳。そろそろにーに呼びは卒業すべき時だ。
「お、にいちゃん」
そう言うと、ヴァーノンは少し驚いた様な顔をした。
「……あぁ。それも悪くないか。」
少しの間考えるそぶりを見せたヴァーノンだったが、はにかむ様に笑いながらそう言った。
「ところで、魔法を覚えたいそうだな?」
ヴァーノンが思い出した様にそう言った。
その顔は、すでにいつもの鋭い目つきに戻っており、ちょっとこわい。
「う、うん。」
「なら俺が教えよう。そこにいる奴より俺の方が優秀だ。」
嘲笑うかの様にアルベールを見たヴァーノンだったが、肝心のアルベールはいつもの無表情でどこ吹く風だ。
「えっと……」
確かに魔力の量が多いのは一目瞭然のため、魔法の適正はとんでもなく高いであろうことが伺える。
しかしできればやはりヴァーノンとはあまり深く関わりたくなかった。
ただでさえヴァーノンの目つきはかなり鋭いのだ。そこに恨みや殺意などの負の感情が乗ったらどれだけ恐ろしいことかと思ってしまう。
いや、だがもしも私が未来を変えることに失敗し、小説通りヴァーノンに裏切られた場合、彼について詳しく知っていたら何か手を打てるのではないか?
彼の得意な魔法や、できれば弱点など、知っていればたとえヴァーノンに裏切られたとしてもどうにかできるかもしれない。
それに何より、今の彼には何の罪もない。
特性の力とはいえ、私をただ純粋に愛してくれているだけの彼を避け続けるのは、いつか罪悪感に耐えられなくなるかもしれない。
そこまで考えた私は、意を決して口を開く。
「よ、よろしくお願いします!」
そうして私は、アルベールによる剣術指導と、ヴァーノンによる魔法指導の日々に明け暮れるようになるのである。
今まで私が欲しがるものといえば、美味しいお菓子や煌びやかな装飾の施された豪華な洋服、美しく輝く宝石やアクセサリーだった。
そんな私が突如趣旨の違いすぎるものを強請ったためマティスは驚いた様子であったが、魔族が力を欲することは本能のようなものなので、嬉々として私に剣を与えた。
その剣は、小さな私でも持てるよう小太刀ほどの長さの剣であったが、ひ弱な私にはそれでも満足に振るうことができなかった。
剣を手に入れた私は、それから毎日アルベールに剣を教わっている。
「恐れながら、まずリゼット様には筋力も体力も足りません。」
さあ今日からバシバシ強くなるぞ!と息巻いていた私に、アルベールがズバリ吐き捨てた。
自分でも自覚していたことではあるが、こうもはっきり言われては流石にショックだ。
私のやること為すこと、全肯定する魔族ばかりなのに、アルベールはたまにこういうところがある。
前世を思い出す前の私は、そんなアルベールを心底気に入っていた。
そんな私のショックを知ってか知らずか、アルベールから出された最初の課題は一言で言うと筋トレだった。
ランニング鍛錬場100周
腹筋100回×3セット
腕立て100回×3セット
スクワット100回×3セット
という初日から地味なくせに地獄のようなメニューだった。
いくら魔族が人間よりも身体能力に優れていると言っても、昨日まで惰性を貪るだけの日々を送っていただけの私にはとんでもなくハードなメニューだった。
生まれ変わってから、いや、生まれ変わる前からも含めた上でも、これ以上ないくらい死ぬ気で頑張った。
何度途中で「やっぱりやーめた!」って投げ出そうと思ったことか。
だが、私の知る未来を変えるため、なんとか弱い心に打ち勝ち、課せられたメニューをクリアした。
たまらず地べたに仰向けに転がり、大量の汗を流しながら息を切らしている私に、「ゆくゆくはこれの100倍はこなせる様になっていただきます。」とアルベールの非情な声が降ってきて泣いた。
いや、実際には泣いてないけど、泣きたかった。
「……ですが、正直に申しますとまさか本当にやりきるとは思っておりませんでした。」
「えぇ?!」
私の驚愕の声に、申し訳ございませんとアルベールが謝罪し、跪く。
私には不可能だと思われているメニューを課せられていたと言うことだ。
アルベールは、やはりリゼットに剣を握って欲しくないと感じていた。
だから、あわよくばこれで諦めてくれたら、と密かに願っていたのだ。
「流石リゼット様です。出過ぎたことを致しました。どうか、愚かな私を罰してください。」
どうしてそうもすぐに罰を乞うのか。
「罰しは……っ、しないよ……、」
息絶え絶えのまま、私がなんとか返事を返す。
「ですが、私の浅はかな考えのせいで、今もリゼット様はこうも苦しんでおられる。」
仰向けに転がったまま、側で跪いているアルベールに目を向けると、相変わらずの真顔ではあるがどこか悲しそうな雰囲気を感じる。
「はぁ……はぁ、っ、アル、」
堪らずアルベールの方に手を伸ばすと、それに気づいたアルベールが私のすぐ側まで来るとその場でまた跪いた。
手の届く範囲まで来たアルベールにそのまま手を伸ばす。
表情にこそ出てはいないが、どこか悲しそうにしている彼を慰める様に私はその頬に手を当てた。
予想外の出来事に、アルベールが狼狽える。
「リ、リゼット様……、」
「ごめん、ね。はぁ、……っ、私が、弱いから……」
そもそも私が怠けていなければ、もうちょっと体力があり、こんなに息絶え絶えになることもなかった。
「そ、のような……!リゼット様が私に謝られることなど、何一つございません!」
いつも冷静な彼が、焦った様に言うのが少し面白く感じてしまい、思わず私は笑ってしまった。
「アル、確かに、大変だった、けど……っ、今、すっごく、気持ちがいい!」
私は今、スポーツをした後の独特の爽快感や、達成感を感じている。
これは、今までの城に籠っていた日々では、一生感じることができなかったものだ。
前世では学生の頃の部活動などで感じたこともあるが、それももはや遠い昔の様に感じる。
懐かしい気持ち良さに満たされていて、最高に気分がいい。
「この、爽快感、や、達成感は、アルが、私に、くれたもの、だよ……!」
だからね、アル
と、戸惑っている彼をいいことに私が続ける。
「明日も、指導、よろしくね!」
へへ、と笑いながらそう言った私に、アルベールは頬に添えられた私の手に自らの手を重ねた。
「は。リゼット様の御心のままに。」
そう言った彼の鋭いはずのシルバーアッシュの瞳は、愛おしそうに私を見つめていた。
あの日から、早くも1週間が経った。
「リゼット様、構えが崩れております。」
「っ、」
相変わらず魔王城上空は禍々しい厚い雲に覆われていた。
そんなどんよりお空の下、私はひたすらアルベールに向かってマティスからもらった剣を振るう。
そんな私の拙い剣をしなやかに受け流し続けるアルベール。
筋トレから始めたあの日、「では、リゼット様のそのご覚悟にお答えすべく、僭越ながら私も全力で指導させていただきます。」と言ったアルベールはとんでもなくスパルタだった。
毎日、あの地獄の様なメニューをこなした後、アルベールと剣を打ち合っている。
あのメニューだけでヘトヘトになってしまうのに、その後にこの重たい剣を振るわないといけない。
そりゃ構えだって崩れるわ!と、思わず叫びたくなる。
「リゼット様、振りが甘いです。」
「わかっ、てるよ!」
当然といえば当然なのだが、これだけ必死に打ち込んでも軽やかに流されてしまう上、アルベールから細かく指導が降ってくるため、ついムッとしてしまう。
「同じ角度からの振りばかりでは隙だらけです。」
確かに、がむしゃらに剣を振っていた私は、上段から振り下ろすばかりだった。
振り下ろす角度を斜めに変えた私は、振りおろしたばかりの剣をすぐに下から上へ翻した。
キィィーーン
「今のはなかなか面白いです。」
私の剣を受け止めたアルベールが言う。
「はぁ、はぁ、」
「今日は、終わりにしましょう。」
そう言うとアルベールは、腰に差している鞘に剣を収めた。
アルベールは的確に私の限界を見抜く。
アルベールの言葉に素直に従って、私も剣を鞘に収めた。
「今日もありがとう、アル!」
「いつも身に余るお言葉をいただき、有難き幸せです。」
ここ1週間、毎日毎日アルベールにお礼を言いつづけた甲斐もあり、私のお礼にアルベールは驚かなくなった。
ただ、毎回堅苦しい返事は返ってくる。もう挨拶の様なものだと自分に言い聞かせて諦めた。
「ところでアル、お願いがあるのだけど……」
「はい。何なりとご命令ください。」
「命令ではないけど、魔法も教えて欲しいの。」
「魔法、ですか。」
以前、アルベールは魔法が得意ではないと言っていた。
だが先日見たアルベールの魔法は、聞くところによると雷属性と風属性を融合した上級魔法の一つだった。
アルベールの持つ色から、魔力の量が多くないのは事実だろうが、その技術自体は十分なものを持っているはずだ。
それに、アルベールの他に頼む当てもない。
私のお願いにすぐに返答することなく、黙り込んでしまったアルベールを見つめる。
「魔法ならそいつより、俺が教えよう。」
アルベールの返答を待っていると、不意に別の声が聞こえてきた。
「に、」
にーに。
私は彼をそう呼んでいた。
「どうも最近、お前は俺のことを呼んでくれなくなってしまったな。」
そう言ったヴァーノンは、自嘲する様に笑った。
確かに、私は前世の記憶を思い出してから、ヴァーノンのことを呼んでいない。
それどころか出来るだけヴァーノンの存在を避けてさえいた。
ヴァーノンが寂しそうな表情をしていることを見かけることがあったが、こればかりはしょうがないと思う。
私を死に導くはずの人なのだから。本能的に恐怖を感じてしまう。
しかし、今のヴァーノンには何の罪もない。
私が勝手に苦手意識を持ってしまい、勝手に避けているだけだ。
身に覚えもなく、私に避けられ続ける彼が寂しそうにするのも当然のことだった。
だが、未来の出来事とは別に、単純に「にーに」という呼び方が恥ずかしいというものある。
パパはさほど抵抗なく言えるが、流石ににーにはキツイ。
今世でも、私はもう6歳。そろそろにーに呼びは卒業すべき時だ。
「お、にいちゃん」
そう言うと、ヴァーノンは少し驚いた様な顔をした。
「……あぁ。それも悪くないか。」
少しの間考えるそぶりを見せたヴァーノンだったが、はにかむ様に笑いながらそう言った。
「ところで、魔法を覚えたいそうだな?」
ヴァーノンが思い出した様にそう言った。
その顔は、すでにいつもの鋭い目つきに戻っており、ちょっとこわい。
「う、うん。」
「なら俺が教えよう。そこにいる奴より俺の方が優秀だ。」
嘲笑うかの様にアルベールを見たヴァーノンだったが、肝心のアルベールはいつもの無表情でどこ吹く風だ。
「えっと……」
確かに魔力の量が多いのは一目瞭然のため、魔法の適正はとんでもなく高いであろうことが伺える。
しかしできればやはりヴァーノンとはあまり深く関わりたくなかった。
ただでさえヴァーノンの目つきはかなり鋭いのだ。そこに恨みや殺意などの負の感情が乗ったらどれだけ恐ろしいことかと思ってしまう。
いや、だがもしも私が未来を変えることに失敗し、小説通りヴァーノンに裏切られた場合、彼について詳しく知っていたら何か手を打てるのではないか?
彼の得意な魔法や、できれば弱点など、知っていればたとえヴァーノンに裏切られたとしてもどうにかできるかもしれない。
それに何より、今の彼には何の罪もない。
特性の力とはいえ、私をただ純粋に愛してくれているだけの彼を避け続けるのは、いつか罪悪感に耐えられなくなるかもしれない。
そこまで考えた私は、意を決して口を開く。
「よ、よろしくお願いします!」
そうして私は、アルベールによる剣術指導と、ヴァーノンによる魔法指導の日々に明け暮れるようになるのである。
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