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第6話 迷宮へ潜る者達 シーカーズ
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階段前広場とは、探索者達が探索の準備がしやすいようにという理由と、スタンピードが起きた際の前線基地としての機能を盛り込んだ場所である。
広場には露店が立ち並び、準備不足な初心者探索者を当て込んだちょっと割高な店や、痒い所に手が届くような商品を取り扱っている店などが今がかき入れ時と声を張り上げる。
イシバシ達はそれを横目に、少し離れた所にある委員会管理の無料駐車場に車を止め、階段まで向かう。
イスナもだるそうにしながらその後を付いていく。
広場自体も分厚い壁で覆われているが、その階段前はもっと分厚い壁やその壁の上には重火器などがその銃口を階段に向けて並んでいる。 もちろんそれを扱う兵士もだ。
今日の持ち回り企業は五龍社の企業軍のようだ。
揃いの軍服に統一された装備は、そこらの探索者とはまるで違って見える。
階段に向かって進む探索者や、出てくる探索者を厳しい目で睥睨している。
探索者となった者達は(委員会未登録であっても)一般人よりも優遇されるが、罪を犯せば一転とても重い罰となる。
現場判断で殺すことが認められるほどに。
これは主に一般地区で犯罪を犯した場合ではあるが。
さて、今イスナ達はその探索者や企業軍の兵士達の視線を集めていた。
いかつい中年の男性数人にの中に一人の少女。 視線を集めない訳がなかった。
が、イスナやイシバシは気にせず進む。
というかアルぐらいであろうか? 視線を気にしているのは。
出入りは迷宮都市管理委員会の下部組織である探索者管理組織、通称ギルドの職員が行っている。
ミズ・モンローなどは、このギルドから仕事を回してもらっている訳である。
特に問題を起こすこともなく、一行は2階層目に足を踏み入れた。
まだここは、ダンジョンハックの影響で魔獣がポップしてくることはないセーフエリアとなっており、ここで皆最終チェックをすることが多い。
2階層から10階層まではダンジョン内でも明かりが照らしており、照明などは必要ないが11階層から真っ暗闇となる。
しかし、昔と違い今は照明器具などではなく各自暗視装置や暗視可能な義眼などで探索をする。
これは偏に明かりが魔獣を呼び寄せるためでもあるが、照明装置はやはりある程度の光量を維持するような強力な機器は最低でも片手が塞がるということもある。
イシバシ達のチームも同様で、皆何かしかの暗視手段を持っている。
当然イスナもだった。
この二階層には奥にエレベーターが設置されており、これはどこのダンジョンでも存在する物で、それを使って各階層、正確には2階、11階、21階といった具合に10階ごとの移動になる。
エレベーターを使用する為には10階層の階層ボスを倒し許可証を手に入れる必要があるが、イシバシ達はもちろんイスナも所有している為素早くそこまで移動し、問題の15階層まで手早く下りていく事になる。
「15階に依頼主が寄越した部隊が現場を確保している。 その現場の落とし穴を使って30階まで一気に降りる予定だ」
エレベーターに乗り込むとイシバシがイスナに話しかける。
依頼主というのは、ラウコス社のとある重役なのだとイシバシは言う。
つまり15階にいるのはラウコスの企業軍か、とイスナは考える。
多分のその重役とやらが令嬢の父親なのだろうと単純に考えるが、しかし令嬢が《聖域》持ちという事を考えるとそう単純ではないかもしれない。 やっぱり面倒くさそうだとイスナはため息を吐く。
《聖域》は簡単に言えば特殊な力場で魔獣、に限らずあらゆるものを寄せ付けないという力である。
特に魔獣を寄せ付けない、というのは人々にとって奇跡の力として映るだろう。
幼い頃に力が発現した子供がすぐさま親元から引き離されるくらいには貴重でもある。
魔法使いも貴重ではあるが、ある程度の自由意志は尊重される。
ただし魔法使いは全員委員会に登録されるのだが。
エレベーターはすぐに11階に到着し、扉が開いた瞬間全員壁に寄って入り口に注視する。
偶に魔獣がエレベーター前に陣取っていることがある為油断はしない。
「クリア」
アルがそう言って構えていた盾を軽く振ると、ジェットが外に出て行き更に回りを確保するとイシバシ達もエレベーターから降りる。
「よし最短距離で降りるぞ」
イシバシは、義眼にオーバーレイさせた迷宮の地図を表示させると先導していく。
11層からは光もなく真っ暗であるが、各自問題なく暗視装置を起動させて歩き出す。
隊列はアルとイシバシが先頭でイスナ、ヤンが真ん中、ジェットが殿である。
11層に登場する魔獣はゴブリンにコボルトである。
イシバシ達は探索者ランクでいえばランク3に当たる。
これはギルドで定めている物で、成り立てでランク1、11階層に到着した者がランク2といった具合に到着階層で判断される。
ただし、イシバシ達は非正規な探索者であるから正確にはランクなしではあったが。
なお、イスナにもランクはない。 ただ委員会公認の称号である”オーバード”というランクに代わる物があり、それはギルドの権限を越えて存在する。
そのイシバシ達に掛かればこの階層の魔獣は脅威ではない。 魔法タイプが出なければ…… ではあるが。
その為にイスナを連れている訳でもあるが。
道すがら出てくる魔獣を退けながら進み続け、2時間もせずに問題の15階の部屋に到着した。
その扉の前には、ライコス社の社章が入った軍服に身を包んだ男が武器を構えて5人ほど立っていた。
イシバシ達を確認すると、そのうちの一人が話しかけて来た。
「お待ちしていました」
「すまん。 少し遅れたか?」
イシバシはそう言ってその男に返事をする。
「いえ、どうぞ中へ」
男はそう言うと扉をノックすると中から確認の声がした後、扉が開かれる。
中は4畳半ほどの広さの部屋で、狂信者とやらはすでに居らず中には4人の軍人がいた。
その中央やや奥にパックリと開いた落とし穴が見て取れる。
器具によって固定されたその穴は四角く開いており、4人くらいならそのまま落ちていけそうであった。
イシバシはその穴に近づくと、背嚢から円盤状のボードのような物を二枚取り出した。
とても背嚢に入るようなサイズではないが、イシバシがインベントリ式の装備を持っている事は不思議でも何でもない事ではあるのでイスナはそれについては何も言わない。 ただし。
「フロートボード? よくそんな金あるね?」
イスナは珍しそうにそのフロートボードをのぞき込む。
「借り物だ。 依頼主からな」
そう言ってイシバシは腰をかがめ、手早くセッティングする。
フロートボードは、上下にしか動かないが空中を移動出来る簡易な乗り物である。
イシバシが取り出したそれは直径3.5mほどの二人乗り用の物であった。
ボードは、こう言った落とし穴を上り下りする際や、高い場所を確保する際に使用する。
が、このフロートボードは高い。 一枚、500万クレジットはするだろう。
15階も上り下り出来るとなるともっとだろうか?
そんなボードが二枚である。
軍の備品の可能性はあるが、非正規の探索者に大盤振る舞いではある。
イシバシがスイッチを入れるとフワリと浮き上がる。
そのままグイと穴に向かって押し出すと、抵抗なくその穴の上で浮かんだまま待機する。
そのボードを何度か上から押してみたりして問題ない事を確認すると、振り返りメンバーを呼ぶ。
「よし、まずは俺と小娘が先に降りる。 その後がジェットとアル。 最後にヤンだ」
「あいよ」
「はいっ!」
ジェットとアルが返事を、ヤンが頷きイスナは軽く手を挙げるに留めた。
早速とばかりにイスナがボードに飛び乗るとイシバシがそれを見て苦笑するが、何も言わず続けて乗り込む。
「軽く腰は落としておけ」
イシバシはそう言うと、コードに繋がれたリモコンを操作し出す。
「準備はいいな?」
「ほいほい」
どこまでも軽い口調のイスナだが、油断をしている訳ではないのは長い付き合いで分かっている為何も言う事はない。
まあアルはそんなイスナの態度になにか言いたげではあったが、ジェットに宥められている。
イシバシは頷きで返すとリモコンを操作してゆっくりとボードを下降させていく。
言われた通り腰を落としたイスナは、油断なく愛銃を構えた状態で下を見ている。
ボードは一部が透明になっており下の視認が可能な造りとなっていた。
そろそろ30階…… という少し前に一旦止まる。
イスナはそれを疑問には思わない。
なぜなら、その真下で一体の魔獣が見えたからだ。
「マンティ…… じゃないね。 あれはホーンウルフ?」
真下でうろうろしていたのは頭に一本の角をもつ狼に見える魔獣であった。
ただしサイズは3mほどあるが。
「いけるか?」
「まーねー。 あ、もうちょっと下げてくんない?」
イシバシはイスナに言われた通り、少しボードを下げる。
そして。
「あらよっと!」
そのままボードから飛び降りた。
イシバシの義眼の情報によれば、床まで10mほど。
普通であれば大けがや最悪死ぬ可能性も否めないが、イスナのような魔導機械化している者ならばなんという事もない高さである。
事実、ホーンウルフに真上から飛び蹴りをかましたイスナは見事に着地する。
『ギャウウウンンン!?』
人の匂いを感じて辺りを探していたホーンウルフは、突然の痛みに思わず声を上げた。
「こんちには! そしておやすみなさい」
イスナはホーンウルフにそう言うと、腕を一振りする。
すると、ホーンウルフの体が左右に分かれていく。
ホーンウルフは小生意気な獲物に飛びかかろうとした体勢のまま絶命した。
「ほい、クリア」
イスナは何事もなかったかのような口調でイシバシに伝える。
それを受けイシバシはボードを降下させる。
30階層に下りると、素早くボードを穴の下から除くと、上のジェットに連絡する。
それを受けて、ジェット、アル。 その後にヤンが降りてくる。
手早くフォーメイションを組みなおすと、マンティコアを見つけた場所を地図で確認する。
イシバシは左手首にあるホロモニターを起動させると、地図を表示させ皆に指し示す。
「俺たちが見たのはココだ」
「ボス部屋の手前だねぇ」
イスナが言うようにマンティコアがいたのは、ボス部屋の手前にある大部屋だった。
本来ならボスに挑む前に最終調整や休憩をする探索者が居るのだが、マンティコアが居座ってボスに挑戦出来ないと苦情が入ったことによりミズ・モンローに仕事が入ったのだった。
「よし、準備出来たら向かうぞ?」
そう言うイシバシの言葉に全員無言で頷くのだった。
広場には露店が立ち並び、準備不足な初心者探索者を当て込んだちょっと割高な店や、痒い所に手が届くような商品を取り扱っている店などが今がかき入れ時と声を張り上げる。
イシバシ達はそれを横目に、少し離れた所にある委員会管理の無料駐車場に車を止め、階段まで向かう。
イスナもだるそうにしながらその後を付いていく。
広場自体も分厚い壁で覆われているが、その階段前はもっと分厚い壁やその壁の上には重火器などがその銃口を階段に向けて並んでいる。 もちろんそれを扱う兵士もだ。
今日の持ち回り企業は五龍社の企業軍のようだ。
揃いの軍服に統一された装備は、そこらの探索者とはまるで違って見える。
階段に向かって進む探索者や、出てくる探索者を厳しい目で睥睨している。
探索者となった者達は(委員会未登録であっても)一般人よりも優遇されるが、罪を犯せば一転とても重い罰となる。
現場判断で殺すことが認められるほどに。
これは主に一般地区で犯罪を犯した場合ではあるが。
さて、今イスナ達はその探索者や企業軍の兵士達の視線を集めていた。
いかつい中年の男性数人にの中に一人の少女。 視線を集めない訳がなかった。
が、イスナやイシバシは気にせず進む。
というかアルぐらいであろうか? 視線を気にしているのは。
出入りは迷宮都市管理委員会の下部組織である探索者管理組織、通称ギルドの職員が行っている。
ミズ・モンローなどは、このギルドから仕事を回してもらっている訳である。
特に問題を起こすこともなく、一行は2階層目に足を踏み入れた。
まだここは、ダンジョンハックの影響で魔獣がポップしてくることはないセーフエリアとなっており、ここで皆最終チェックをすることが多い。
2階層から10階層まではダンジョン内でも明かりが照らしており、照明などは必要ないが11階層から真っ暗闇となる。
しかし、昔と違い今は照明器具などではなく各自暗視装置や暗視可能な義眼などで探索をする。
これは偏に明かりが魔獣を呼び寄せるためでもあるが、照明装置はやはりある程度の光量を維持するような強力な機器は最低でも片手が塞がるということもある。
イシバシ達のチームも同様で、皆何かしかの暗視手段を持っている。
当然イスナもだった。
この二階層には奥にエレベーターが設置されており、これはどこのダンジョンでも存在する物で、それを使って各階層、正確には2階、11階、21階といった具合に10階ごとの移動になる。
エレベーターを使用する為には10階層の階層ボスを倒し許可証を手に入れる必要があるが、イシバシ達はもちろんイスナも所有している為素早くそこまで移動し、問題の15階層まで手早く下りていく事になる。
「15階に依頼主が寄越した部隊が現場を確保している。 その現場の落とし穴を使って30階まで一気に降りる予定だ」
エレベーターに乗り込むとイシバシがイスナに話しかける。
依頼主というのは、ラウコス社のとある重役なのだとイシバシは言う。
つまり15階にいるのはラウコスの企業軍か、とイスナは考える。
多分のその重役とやらが令嬢の父親なのだろうと単純に考えるが、しかし令嬢が《聖域》持ちという事を考えるとそう単純ではないかもしれない。 やっぱり面倒くさそうだとイスナはため息を吐く。
《聖域》は簡単に言えば特殊な力場で魔獣、に限らずあらゆるものを寄せ付けないという力である。
特に魔獣を寄せ付けない、というのは人々にとって奇跡の力として映るだろう。
幼い頃に力が発現した子供がすぐさま親元から引き離されるくらいには貴重でもある。
魔法使いも貴重ではあるが、ある程度の自由意志は尊重される。
ただし魔法使いは全員委員会に登録されるのだが。
エレベーターはすぐに11階に到着し、扉が開いた瞬間全員壁に寄って入り口に注視する。
偶に魔獣がエレベーター前に陣取っていることがある為油断はしない。
「クリア」
アルがそう言って構えていた盾を軽く振ると、ジェットが外に出て行き更に回りを確保するとイシバシ達もエレベーターから降りる。
「よし最短距離で降りるぞ」
イシバシは、義眼にオーバーレイさせた迷宮の地図を表示させると先導していく。
11層からは光もなく真っ暗であるが、各自問題なく暗視装置を起動させて歩き出す。
隊列はアルとイシバシが先頭でイスナ、ヤンが真ん中、ジェットが殿である。
11層に登場する魔獣はゴブリンにコボルトである。
イシバシ達は探索者ランクでいえばランク3に当たる。
これはギルドで定めている物で、成り立てでランク1、11階層に到着した者がランク2といった具合に到着階層で判断される。
ただし、イシバシ達は非正規な探索者であるから正確にはランクなしではあったが。
なお、イスナにもランクはない。 ただ委員会公認の称号である”オーバード”というランクに代わる物があり、それはギルドの権限を越えて存在する。
そのイシバシ達に掛かればこの階層の魔獣は脅威ではない。 魔法タイプが出なければ…… ではあるが。
その為にイスナを連れている訳でもあるが。
道すがら出てくる魔獣を退けながら進み続け、2時間もせずに問題の15階の部屋に到着した。
その扉の前には、ライコス社の社章が入った軍服に身を包んだ男が武器を構えて5人ほど立っていた。
イシバシ達を確認すると、そのうちの一人が話しかけて来た。
「お待ちしていました」
「すまん。 少し遅れたか?」
イシバシはそう言ってその男に返事をする。
「いえ、どうぞ中へ」
男はそう言うと扉をノックすると中から確認の声がした後、扉が開かれる。
中は4畳半ほどの広さの部屋で、狂信者とやらはすでに居らず中には4人の軍人がいた。
その中央やや奥にパックリと開いた落とし穴が見て取れる。
器具によって固定されたその穴は四角く開いており、4人くらいならそのまま落ちていけそうであった。
イシバシはその穴に近づくと、背嚢から円盤状のボードのような物を二枚取り出した。
とても背嚢に入るようなサイズではないが、イシバシがインベントリ式の装備を持っている事は不思議でも何でもない事ではあるのでイスナはそれについては何も言わない。 ただし。
「フロートボード? よくそんな金あるね?」
イスナは珍しそうにそのフロートボードをのぞき込む。
「借り物だ。 依頼主からな」
そう言ってイシバシは腰をかがめ、手早くセッティングする。
フロートボードは、上下にしか動かないが空中を移動出来る簡易な乗り物である。
イシバシが取り出したそれは直径3.5mほどの二人乗り用の物であった。
ボードは、こう言った落とし穴を上り下りする際や、高い場所を確保する際に使用する。
が、このフロートボードは高い。 一枚、500万クレジットはするだろう。
15階も上り下り出来るとなるともっとだろうか?
そんなボードが二枚である。
軍の備品の可能性はあるが、非正規の探索者に大盤振る舞いではある。
イシバシがスイッチを入れるとフワリと浮き上がる。
そのままグイと穴に向かって押し出すと、抵抗なくその穴の上で浮かんだまま待機する。
そのボードを何度か上から押してみたりして問題ない事を確認すると、振り返りメンバーを呼ぶ。
「よし、まずは俺と小娘が先に降りる。 その後がジェットとアル。 最後にヤンだ」
「あいよ」
「はいっ!」
ジェットとアルが返事を、ヤンが頷きイスナは軽く手を挙げるに留めた。
早速とばかりにイスナがボードに飛び乗るとイシバシがそれを見て苦笑するが、何も言わず続けて乗り込む。
「軽く腰は落としておけ」
イシバシはそう言うと、コードに繋がれたリモコンを操作し出す。
「準備はいいな?」
「ほいほい」
どこまでも軽い口調のイスナだが、油断をしている訳ではないのは長い付き合いで分かっている為何も言う事はない。
まあアルはそんなイスナの態度になにか言いたげではあったが、ジェットに宥められている。
イシバシは頷きで返すとリモコンを操作してゆっくりとボードを下降させていく。
言われた通り腰を落としたイスナは、油断なく愛銃を構えた状態で下を見ている。
ボードは一部が透明になっており下の視認が可能な造りとなっていた。
そろそろ30階…… という少し前に一旦止まる。
イスナはそれを疑問には思わない。
なぜなら、その真下で一体の魔獣が見えたからだ。
「マンティ…… じゃないね。 あれはホーンウルフ?」
真下でうろうろしていたのは頭に一本の角をもつ狼に見える魔獣であった。
ただしサイズは3mほどあるが。
「いけるか?」
「まーねー。 あ、もうちょっと下げてくんない?」
イシバシはイスナに言われた通り、少しボードを下げる。
そして。
「あらよっと!」
そのままボードから飛び降りた。
イシバシの義眼の情報によれば、床まで10mほど。
普通であれば大けがや最悪死ぬ可能性も否めないが、イスナのような魔導機械化している者ならばなんという事もない高さである。
事実、ホーンウルフに真上から飛び蹴りをかましたイスナは見事に着地する。
『ギャウウウンンン!?』
人の匂いを感じて辺りを探していたホーンウルフは、突然の痛みに思わず声を上げた。
「こんちには! そしておやすみなさい」
イスナはホーンウルフにそう言うと、腕を一振りする。
すると、ホーンウルフの体が左右に分かれていく。
ホーンウルフは小生意気な獲物に飛びかかろうとした体勢のまま絶命した。
「ほい、クリア」
イスナは何事もなかったかのような口調でイシバシに伝える。
それを受けイシバシはボードを降下させる。
30階層に下りると、素早くボードを穴の下から除くと、上のジェットに連絡する。
それを受けて、ジェット、アル。 その後にヤンが降りてくる。
手早くフォーメイションを組みなおすと、マンティコアを見つけた場所を地図で確認する。
イシバシは左手首にあるホロモニターを起動させると、地図を表示させ皆に指し示す。
「俺たちが見たのはココだ」
「ボス部屋の手前だねぇ」
イスナが言うようにマンティコアがいたのは、ボス部屋の手前にある大部屋だった。
本来ならボスに挑む前に最終調整や休憩をする探索者が居るのだが、マンティコアが居座ってボスに挑戦出来ないと苦情が入ったことによりミズ・モンローに仕事が入ったのだった。
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