だから人間が好き

韋虹姫 響華

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おまけ

みんな知ってるよ

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 ご主人が遠征に出てから数日、退屈に時は過ぎていく。
 ここ数日の間に、奇術屋は大忙しになった。所長さんはもちろん、誰も彼も入れ替わり立ち替わりで事務所に来ては、また外へ出て行っての繰り返しだ。
 ナントカって組織が、例の怪しい結晶を本格的に世間に流し込んでいるからとかって、所長さんが言っていたな。

「ただいまーーって、俺だけか。みんな忙しいし、綻火ほころびともバディだっていうのに最近じゃあ別行動ばっかりだしな」
「……にゃあ」
「おっ?ファシィじゃないか。ご飯は貰ったか?」

 もう貰っている。さっき澄羅綺すめらぎが、依頼で出ていく前にくれた。
 それにしても、ここに来てからというもの前よりも、人間との距離感が近くなった気がしている。物理的にじゃなく、精神的にだ。こんなこと普通の猫でも、思い至ることなのだろうか。
 そして何故この男、水祓みずはら 黎創りそうは吾輩の隣に座るのだ。

「ダメか?そんな嫌な顔しなくてもいいだろ?」

 顔に出ていたのか。
 思えば、いつも黎創は吾輩の顔色から思っていることを読み取っていたが、今こうして話していることも聞こえていたりするのかね?

「まぁ、少しだけなら分かるよ。お前のこと」

 ん?まただ。
 吾輩の言っていることが聞こえていないと、この反応にはならないだろうに。

「多分だけど、怜美鵺れびや暁咲あきさならお前が喋っているって思っているんじゃないか?俺や綻火、寄凪さんに所長でもお前の機嫌なら分かっている。そのうえで、みんなお前を家族のように扱っている」

 本当に?吾輩、これまでやって来たこれはみんなと会話出来ている?それに事務所ここの人達は全員、吾輩がお喋りだってこと知ってるのか。

「みんな知ってるよ、お前が俺達みたいにわがまま言ってる猫だってことくらい。というか、それをこの物語の主人公である俺に言わせるかね普通」

 いや、この物語の主人公ではない。この「だから人間が好き」は、吾輩とご主人が主役の物語だ。
 黎創が主人公なのは、奇術師としてのお話だろうが。ここでは、そういうバトルものやホラー要素を詰め込んだ話はノーサンキューなんだよ。

「冷たいなぁファシィは。これはおまけエピソード、つまりは何でもありさ。そんなことよりも、俺はいつになったら本編でこいつを使うことになるのか。今日は語り尽くさないか?」

 だから、それはしまってくれ。この話はライト文芸なの。ホラーじゃなくてもSF要素入っちゃったら、この作品のジャンルが歪んじゃうから。
 分かったらそのをしまってくれ、頼むからさ。

「自分から世界観壊すようなこと言うんじゃないよ。まったく、ファシィらしいな。この話には俺の出番そこまでなかったけど、怜美鵺の人間好きな理由が詰まったいいエピソードだったんじゃないか?」

 それを決めるのは、これを見てくれている読者だ。
 最後の最後で雰囲気ぶち壊しだ、吾輩の視点で描いたこの物語は作者は相当に手を焼いただろうに。え?そうでもないって?なんで作者が手を焼いた訳でもないのに、こんなに更新に時間がかかったんだよ?
 今なんて、本編の奇術師はもちろん他の連載だって止まっているんだぞ。明らかにこの慣れない一人称視点のせいに決まっているだろう。


──《タスマニアデビル》ッ!!


 …………。
 なるほど、そういうことね。


 ────────────────


 ◆◇ あとがき ◇◆

 初めてのライト文芸‪‪✕‬一人称視点の作品、「だから人間が好き」を最後まで読んでいただきありがとうございます。
 いやいや、この作品よりも先に同時連載したライト文芸対象参加作品があるじゃないかと、思った方もいるかと思います。
 ですが、こっちが先に書き終えていた作品であるため、正確な順番はこっちが処女作になります。話数もそこまで変わらないのに、何故こうなったのか。勘のいい読者なら、もう分かるかと思います。
 そうです。この作品のおまけであるこの話で、何としても結晶奇術師に繋がる要素を入れたかったからです。

 最後の最後に、拾われた猫ファシィと怜美鵺達が何故会話しているような描写が、度々あったのかを伏線回収するために最初は、暁咲が猫の言葉が分かる装置を発明したというオチにしていました。
 でもそれだと、連載止めて話を繋げるように考案している意味なくね?となりまして、考えに考えた結果ファシィも傀魔クリスタルを持っていることにしました。
 問題は猫で且つ、悪魔を題材にしたクリスタルを持つ怜美鵺の拾われ猫なんだから、悪魔に纏わる猫の方が良いなと思い、最後の《〇〇〇〇》の部分だけ空白にして色々調べていました。
 《バステト》がいいのでは?いやでも♂にしたし、バステトは他の作品で登場予定なので却下。なら、他に猫は居ないかなで数日が経過し、

【猫】と【悪魔】───。

 キャットとデビル。確か、ネコ科の動物にデビルって名の付いた生き物居たよな。それも割と好きな漫画で、出てきていたはずだ。ああ、タスマニアデビルか!

 こんな感じで長い後日談になりましたが、奇術師の今後の展開をお楽しみいただいている方のために、どうしても記載しておこうと思いました。
 大賞の結果はどうあれ、これからも小説は書いていきますので気に入っていただいた方、ファンで応援していますよって方はこれかれも韋虹姫 響華をよろしくお願いします。
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