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第一章 暴虐皇子のやり直し開始
30話 金と銀の月夜語り
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夜のランニングをしていたリリスと偶然庭園で顔を合わせ気まずい雰囲気の中なんとか挨拶だけ交わし、送り出した・・・と、思っていたが、リリスは途中で立ち止まり俺の方へと引き返してくる
「アーサー様、お時間があるようでしたら少し、このリリスとお話して頂けませんか?」
どうしたのだろうか?リリスは口を強く結んだまま、俯いたまま俺と話がしたいと言って来た
「構わないが、時間はいいのか?ミョルニル侯爵嬢には毎日のルーティンがあるのだろ?」
「それは…もう良いのです、で、わたしにお時間は頂けますか?」
何か思い詰めた雰囲気に気圧され
「あ、あぁ、俺は構わないが」
「では、お隣失礼します」
そう言うと、リリスは俺のとなりへとゆっくり腰を下ろした
「・・・・・」
「・・・・・」
満月を見上げながら、隣のリリスに時折視線を向けるが、ずっと俯いたままだ
遊歩道沿いの時計を確認すると、ここに来てもうじき30分が経とうとしている
「なぁ」「あの!」
沈黙に耐え切れず俺が声を掛けようとするのと同時に、リリスも重い口を開いた
「あ、いや、何でもない、ミョルニル侯爵嬢から喋っていいぞ」
「それです!」
リリスは急に大きな声をあげ、俺に鋭い視線を向けて来た
「そ、それ、とは?」
「私の呼び方です、アーサー様は初めて顔を合わせた時から、私の事は「リリス」と名前でお呼び下さっていました!なのに、急にミョルニル侯爵嬢とお呼びになるのは、私、納得出来ません!」
あぁ、確かに…俺としても気まずい気持ちもあって、呼び方には気をつけていたつもりだったんだが、彼女にとっては逆効果だったらしい
「そ、それは失礼した、その、なんだ…婚約を解消した男女間でファーストネームを呼び合うのは、いかがかと思ってな…その気に障ったなら申し訳ない」
「―――では、今後も以前と同じく「リリス」とお呼び頂けると?」
「あぁ、それは勿論だ」
俺の返事に少しだけ表情を緩めたリリスだが、すぐに真剣な表情になり俺に向け頭を下げる
「!?急にどうした?リリス」
「アーサー様にどうしても謝罪しなければならない事が…」
「―――聞こうか」
リリスは顔を上げると先ほど俺が見上げていた満月へと視線を向ける…その銀の瞳はどこか悲しそうで泣いてる様にも見えた
「―――私は、アーサー様の妃となるべく生まれた時より、そうあるべき者としての教育を受けて来ました。」
「これが私の生き方、いずれこの国を治めるアーサー様を支える存在、そしていずれは国母として次の帝国を担う御子を―――、そう信じ教養、所作、武術…芸術に至るまで、必要と思う事は全て身につけて参りました」
(あぁ、そうだそれこそが、リリスの呪縛…)
「そんな私は理想の皇后としての自分を追い求める一方で、アーサー様に対しても理想の皇帝象を投影し、殿下もそう在るべきだと…それがこの国の為、アーサー様の為と」
「あぁ、そうだ、リリスが俺に対し言ってくれていた事は、全て正しかった。」
だが俺の言葉に首を横に振るリリス
「違う!、違うのです、国の為、アーサー様の為と言いながら、本当は自分の為に自分の理想をアーサー様に押し付けていた事に気付いたのです!」
「リリス‥‥」
「自分がそうだったから、アーサー様も当然だ…ろ、でも、それは私の傲慢な思い上がり。」
「―――アーサー様が以前、仰った通り私は心が貧しい救いようのない「悪役令嬢」なのです。」
ワァ――!と両手で顔を覆いそのまま泣き崩れるリリス…
俺はそっとリリスの背に自分の手を添える
「なぁリリス、俺さ昨日、独りで市街地に行ったんだ・・・そこで、大勢の友達が遊ぶ中、貧しさゆえ病を治す薬も満足に買えず皆と一緒に遊べない女の子に出会ったんだ」
リリスは俺の話に答える事無く肩を震わしたまま泣きじゃくる
「その子は、父親が戦死しててさ・・・俺、戦没者見舞金があるだろ?って聞いちゃったんだ」
「そしたら、その子の母親の手元には金貨二枚しか届かなかったって・・・有り得ないだろ?最低でも金貨十枚だぜ?まして一家の大黒柱の戦死だ、二十枚、いや三十枚でも足りないくらいだ」
「なぁ、リリス・・・答えてくれ、お前が俺に統治させたかったのは、こんな国なのか?」
背中にそえた手に、リリスがビクッと反応したのを感じた・・・
「俺たちは、皇族であり高位貴族の子息だ、今リリスが話してくれた内容も俺達にとっては大事な悩みだと、俺も思う・・・だけど、さっきリリスが口にした「この国の為」って言葉さ・・・その子に胸を張って言えるか?」
「・・・アーサー様、アーサー様はその子の為に・・・いったい何を・・・」
「いやさ、今日陛下の所に乗り込んで「この国の軍は腐っている―――」って啖呵きっちゃったんだけど」
「よくよく考えれば、結局俺、陛下の威光に縋っただけで、自分では何も変えれていないんだよね・・・それがさ、情けなくて悔しくて・・・」
「さっき、リリスが皇后になる為に色々学んで来たって言ってたけどさ、まぁ、俺も不真面目ながら皇帝として如何に在るべきかとかまぁ教わったつもりだったけど、本当に大事な物って、この国で足掻いてる多くの民なんじゃないかな?って、そう思ったんだよね―――」
「わ、私は・・・・」
「俺はこれから時間が許す限り、民とふれあってみようと思う・・・「何かしてあげよう」とかじゃくて、自分が正しい選択が出来る様に、色々な視点から物事を見てみようと思うんだ」
「そ、それ・・・私もご一緒しても宜しいでしょうか・・・」
リリスの表情に何か兆しが見えたのか、生気が戻ったかの様にみえる
「あぁ、それは構わないが・・・」
リリスの鼻先に人差し指を突き付ける
「リリスが校則、門限破りの不良になる覚悟があるならな!」
「ふ、不良くらい!っ・・・」
「プッ、なんだその膨れ面は―――アハハハハ」
「も―――っプッ、フフフフ」
満月の夜の静かな庭園に、月の光を照らし輝く金髪と銀髪の男女二人の笑い声がこだまする・・・
時刻は、当初予定していた1時間をとうに過ぎていた事に気付かなかった。
「アーサー様、お時間があるようでしたら少し、このリリスとお話して頂けませんか?」
どうしたのだろうか?リリスは口を強く結んだまま、俯いたまま俺と話がしたいと言って来た
「構わないが、時間はいいのか?ミョルニル侯爵嬢には毎日のルーティンがあるのだろ?」
「それは…もう良いのです、で、わたしにお時間は頂けますか?」
何か思い詰めた雰囲気に気圧され
「あ、あぁ、俺は構わないが」
「では、お隣失礼します」
そう言うと、リリスは俺のとなりへとゆっくり腰を下ろした
「・・・・・」
「・・・・・」
満月を見上げながら、隣のリリスに時折視線を向けるが、ずっと俯いたままだ
遊歩道沿いの時計を確認すると、ここに来てもうじき30分が経とうとしている
「なぁ」「あの!」
沈黙に耐え切れず俺が声を掛けようとするのと同時に、リリスも重い口を開いた
「あ、いや、何でもない、ミョルニル侯爵嬢から喋っていいぞ」
「それです!」
リリスは急に大きな声をあげ、俺に鋭い視線を向けて来た
「そ、それ、とは?」
「私の呼び方です、アーサー様は初めて顔を合わせた時から、私の事は「リリス」と名前でお呼び下さっていました!なのに、急にミョルニル侯爵嬢とお呼びになるのは、私、納得出来ません!」
あぁ、確かに…俺としても気まずい気持ちもあって、呼び方には気をつけていたつもりだったんだが、彼女にとっては逆効果だったらしい
「そ、それは失礼した、その、なんだ…婚約を解消した男女間でファーストネームを呼び合うのは、いかがかと思ってな…その気に障ったなら申し訳ない」
「―――では、今後も以前と同じく「リリス」とお呼び頂けると?」
「あぁ、それは勿論だ」
俺の返事に少しだけ表情を緩めたリリスだが、すぐに真剣な表情になり俺に向け頭を下げる
「!?急にどうした?リリス」
「アーサー様にどうしても謝罪しなければならない事が…」
「―――聞こうか」
リリスは顔を上げると先ほど俺が見上げていた満月へと視線を向ける…その銀の瞳はどこか悲しそうで泣いてる様にも見えた
「―――私は、アーサー様の妃となるべく生まれた時より、そうあるべき者としての教育を受けて来ました。」
「これが私の生き方、いずれこの国を治めるアーサー様を支える存在、そしていずれは国母として次の帝国を担う御子を―――、そう信じ教養、所作、武術…芸術に至るまで、必要と思う事は全て身につけて参りました」
(あぁ、そうだそれこそが、リリスの呪縛…)
「そんな私は理想の皇后としての自分を追い求める一方で、アーサー様に対しても理想の皇帝象を投影し、殿下もそう在るべきだと…それがこの国の為、アーサー様の為と」
「あぁ、そうだ、リリスが俺に対し言ってくれていた事は、全て正しかった。」
だが俺の言葉に首を横に振るリリス
「違う!、違うのです、国の為、アーサー様の為と言いながら、本当は自分の為に自分の理想をアーサー様に押し付けていた事に気付いたのです!」
「リリス‥‥」
「自分がそうだったから、アーサー様も当然だ…ろ、でも、それは私の傲慢な思い上がり。」
「―――アーサー様が以前、仰った通り私は心が貧しい救いようのない「悪役令嬢」なのです。」
ワァ――!と両手で顔を覆いそのまま泣き崩れるリリス…
俺はそっとリリスの背に自分の手を添える
「なぁリリス、俺さ昨日、独りで市街地に行ったんだ・・・そこで、大勢の友達が遊ぶ中、貧しさゆえ病を治す薬も満足に買えず皆と一緒に遊べない女の子に出会ったんだ」
リリスは俺の話に答える事無く肩を震わしたまま泣きじゃくる
「その子は、父親が戦死しててさ・・・俺、戦没者見舞金があるだろ?って聞いちゃったんだ」
「そしたら、その子の母親の手元には金貨二枚しか届かなかったって・・・有り得ないだろ?最低でも金貨十枚だぜ?まして一家の大黒柱の戦死だ、二十枚、いや三十枚でも足りないくらいだ」
「なぁ、リリス・・・答えてくれ、お前が俺に統治させたかったのは、こんな国なのか?」
背中にそえた手に、リリスがビクッと反応したのを感じた・・・
「俺たちは、皇族であり高位貴族の子息だ、今リリスが話してくれた内容も俺達にとっては大事な悩みだと、俺も思う・・・だけど、さっきリリスが口にした「この国の為」って言葉さ・・・その子に胸を張って言えるか?」
「・・・アーサー様、アーサー様はその子の為に・・・いったい何を・・・」
「いやさ、今日陛下の所に乗り込んで「この国の軍は腐っている―――」って啖呵きっちゃったんだけど」
「よくよく考えれば、結局俺、陛下の威光に縋っただけで、自分では何も変えれていないんだよね・・・それがさ、情けなくて悔しくて・・・」
「さっき、リリスが皇后になる為に色々学んで来たって言ってたけどさ、まぁ、俺も不真面目ながら皇帝として如何に在るべきかとかまぁ教わったつもりだったけど、本当に大事な物って、この国で足掻いてる多くの民なんじゃないかな?って、そう思ったんだよね―――」
「わ、私は・・・・」
「俺はこれから時間が許す限り、民とふれあってみようと思う・・・「何かしてあげよう」とかじゃくて、自分が正しい選択が出来る様に、色々な視点から物事を見てみようと思うんだ」
「そ、それ・・・私もご一緒しても宜しいでしょうか・・・」
リリスの表情に何か兆しが見えたのか、生気が戻ったかの様にみえる
「あぁ、それは構わないが・・・」
リリスの鼻先に人差し指を突き付ける
「リリスが校則、門限破りの不良になる覚悟があるならな!」
「ふ、不良くらい!っ・・・」
「プッ、なんだその膨れ面は―――アハハハハ」
「も―――っプッ、フフフフ」
満月の夜の静かな庭園に、月の光を照らし輝く金髪と銀髪の男女二人の笑い声がこだまする・・・
時刻は、当初予定していた1時間をとうに過ぎていた事に気付かなかった。
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