お義兄さまの頭の中には悪魔と淫魔が住んでいる

柴田

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13.ただの男 ※

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 それから二日経つ頃には、マクシミリアンはすっかり元気を取り戻した。
 しかし三日も意識不明の状態だったのだから、医者はもうしばらく安静にしているべきだと言う。
 そんな医者の言葉を無視して、少し目を離すとマクシミリアンは「身体がなまるから」と運動しようとする。そのため、レニャは彼が目を覚ましてからずっとつきっきりで目を光らせていた。
 もちろん眠るときも、である。
 マクシミリアンが言ったのだ。「ひとりでは眠れない」と。だからいっしょに寝てあげているだけであって、決してレニャが彼とともに眠りたいというわけではない。

 ただ、レニャもマクシミリアンが隣にいるとよく眠れた。
 夜中に目を覚ますたびに彼がすうすうと寝息を立てているのを確認すると、ほっとするのだ。
 狩猟大会でのことに限らず、暗殺者の襲撃を隠していたことなどからも推測できるとおり、マクシミリアンはレニャの知らないところでいろいろと危ない橋を渡っている。だから、目の届くところにいてくれるほうが安心できる。

 しかし三日目の夜になると、突然マクシミリアンが自分の部屋へ戻るように促してきた。
 黙って屋敷を抜け出してどこかへ行くつもりだろうか、とレニャは勘ぐる。まだ医者から完治したとは言われていない。
 レニャは無理やりマクシミリアンをベッドに寝かせて隣にもぐり込むと、彼の眼帯を外した。眼帯なしでは外出できまい。

「はあ……」
「わたしを部屋から追い出してこっそり出かけようっていったって、そうはいきません。まだ安静にしてないとだめですよ」
「そんなつもりはないし、もうじゅうぶん元気だ」
「だめったらだめです」
「はあ……」

 何度もため息をついていたが、マクシミリアンもやがて諦めたようだ。ちらりと窺うと、こちらに背中を向けていた。いつも抱き締めてくるくせに、レニャが頑ななせいで怒ったのかもしれない。マクシミリアンに早く治ってほしくて、ずっと監視するように見張っていたから窮屈だっただろう。反省の気持ちがむくむくと込み上げてくる。
 その背に触れようとそっと手を伸ばすと、唐突に名前を呼ばれた。
 慌ててマクシミリアンに背中を向ける。

「婚約式はどうなった?」

 狩猟大会での件で皇家に非難が集中しているいま、婚約式などを執り行っている場合ではない。しかしエリアスからは中止するというような報せは来ていなかった。
 狩猟大会から六日経っているから、婚約式は四日後だ。

「エリアスはそのまま婚約式を執り行うつもりのようです」
「レニャは」
「……?」
「レニャは、どうするんだ?」

 硬い声には、マクシミリアンの不安や焦燥が滲んでいるようだった。
 そのとき、目の前にひさしぶりに選択肢のバーが現れた。
『マクシミリアンに告白する』
『マクシミリアンに告白しない』
 淫魔が悪魔と涙目で抱き合っている姿は、レニャの答えを恐れるマクシミリアンの不安な気持ちが影響しているのだろうか。そんな状態でも、淫魔は『お前からいけ! 男だろ!』と鼓舞するように囁いている。
 レニャの気持ちはもう決まっている。

「エリアスのことは友だちにしか見られません。だから婚約は白紙になるでしょう」
「……そうか」

 ほっとした声音からは、マクシミリアンの表情が想像できなかった。
 もぞもぞと寝がえりをうって彼のほうを向くが、背中しか見えない。いつもより距離があるように思えて、レニャはシーツの上を移動して広い背中にぴったりと密着した。
 ビクッとマクシミリアンの身体が跳ね、動揺が伝わってくる。

「レニャ」
「こっち、向いちゃだめですよ」
「…………」
「……わたしも、お兄様のことが好きです」
「…………。兄として?」
「男性として、好きです」

 マクシミリアンがくるりと振り返る。
 顔が真っ赤になっている自覚があるレニャは、慌てて離れようとした。

「こっち向いちゃだめって……!」

 強引に唇が重なる。何度か角度を変えて啄まれたあと、舌を絡めとられた。優しくも濃厚なキスに抵抗する力を奪われていく。
 ちゅぷ、と舌が引き抜かれたかと思うと、また唇が重なった。

「好きだ」
「ん、んう……っ」
「好きだレニャ、好き」

 キスの合間に吐息混じりに囁かれて、胸がいっぱいになってしまう。レニャからも舌を絡めると、さらに口づけは深まっていった。

「はあ、……レニャ」

 解放される頃には、頭の中がとろとろにとろけてしまっていた。身体にうまく力が入らない。下腹部に熱が溜まっていて、全身が火照ったように熱かった。脚の付け根の間が潤み、ひどく疼いている。
 まるでマクシミリアンに身体を触られたときのように。
 マクシミリアンとのキスはとても気持ちよかった。あのときしたキスよりも、ずっと。好きと伝え合ってからするキスは、心も満たしてくれるみたいだ。マクシミリアンの濡れた唇を見ているだけで、胸がどくんどくんと激しい鼓動を刻む。
 もっとキスがしたい。
 柔らかな唇を触れ合わせて、口内の熱さを感じて、もっとくっつきたい。

「――今日は、自分の部屋に帰りなさい」

 身体を離され、レニャは切なげな声を上げる。まるで突き放されたような気分だ。レニャばかりがそばにいたいと思っているようで悲しくなった。
 せっかく両想いになったのに、マクシミリアンの気持ちが遠く感じる。
 もしかして気持ちを伝えるのが遅すぎたのだろうか、と不安になった。

「ど……して? もっと、キスしてください」
「……っ、レニャ、だめだ」
「お兄様……」

 マクシミリアンの胸にすり寄ると、躊躇うような間があった。それから腰をぐっと抱き寄せられる。おなかのあたりに、ゴリ、と硬いものが当たる感触がして、レニャは小さく悲鳴を上げた。

「お兄様は、最初からお前に部屋に戻るよう言っていたのに」
「ぁ……っ、あ、これ」
「わかるか? レニャのせいでこんなに硬くなってるのが」

 ぐり、ぐり、と押しつけられる、熱くて、硬いもの。これがマクシミリアンの男性器だということは、さすがのレニャにもわかった。子宮のあたりを圧迫され、レニャは腰を震わせた。
 レニャに興奮して大きくなっているのだと思うと、たまらない気持ちになる。おなかの奥からとろりとしたものが溢れた。

「お、おにい、さまっ」
「怖いだろう? 男の浅ましい欲だ。お兄様も男なんだよ、レニャ」

 レニャが昼も夜もべったりと張りついていたせいで、溜まったものを吐き出す暇もなかった。好きな女性がそばにいれば欲望は膨らんでいく一方だ。だから今日こそは夜にひとりになりたかったのに、全部、ぜんぶ、レニャのせいだった。
 添い寝をしてほしいと頼んだあの日は、本当にレニャの温もりが恋しいだけだったのだ。
 あのたった一度でよかった。それで満足できたのに、レニャはそれから毎晩ベッドにもぐり込んでくる。無防備に、薄っぺらいナイトドレス一枚を着ただけの姿で。信頼してくれているのはうれしいけれど、男として見られていないようでがっかりする気持ちもあった。

 マクシミリアンはレニャが思うほど理想の〝お兄様〟ではない。
 レニャの前では、ただの男だ。
 ずっとずっとぎりぎりのところで我慢していたのだ。この三日間のことだけではない。もう何年もだ。レニャがアカデミーに行ってしまい離れていた間だって。
 だからといってレニャに「好き」と言われても紳士的に対応できるほど、マクシミリアンは我慢強くはなかった。
 陰茎が痛いほど張りつめている。
 レニャを抱きたくてたまらない。
 誰にもとられないように、早く自分のものにしてしまえと本能が叫んでいるのだ。

 レニャのおしりを揉みしだきながら腰を寄せ、彼女の片足を自分の腿に絡ませる。さらに身体を寄せれば、下半身が布越しに重なった。ナイトドレスの下は下着しか身に着けていない。昂りを秘所に強く押しつけると、ぐちゅん、と卑猥な音がしてレニャの腰が大きく跳ねた。

「ひっ、……ッあ、あぁ」
「……熱いな。お兄様の服にまで染みてくる」
「あ、あ、言わないで……っ」
「レニャもお兄様と同じ気持ちなのか……?」

 ぐいぐいと押しつけられる陰茎は硬さを増していく。薄い布など突き破ってしまいそうな勢いのマクシミリアンに、怖気づきそうだった。
 ここでレニャが怯える様子を少しでも見せようものなら、マクシミリアンはもう二度と触れてくれなくなるような気がする。それは嫌だ。レニャも彼と同じ気持ちだけれど、経験がないから怖いだけ。そうわかってもらうべく、レニャは自分からマクシミリアンに口づける。
 手のやり場に困りマクシミリアンの肩に両手をかけると、息を詰める気配がした。
 レニャはハッとして身体を起こす。マクシミリアンの夜着の隙間から包帯が覗いていた。

「やっ、やっぱりこんなことだめです……! お兄様のけがだって治っていないし、まだわたしたちは結婚もしていないしっ」
「……けがが治ったら続きをしていいのか? レニャは私と結婚してくれるつもりがあるんだな?」

 揚げ足をとられ、逃げ場がない。レニャは散々迷ったあと、うつむいて小さく頷いた。
 ベッドに座るレニャを、マクシミリアンが仰向けになって見つめている。下から見上げられているため、どれだけうつむいても真っ赤な顔が隠せない。
 ひとたび目が合うとうれしそうに破顔するマクシミリアンのせいで、こちらは心臓が止まってしまいそうだった。なんてかわいい顔で笑うんだ。

「あぁ夢みたいだ。……夢じゃないって、キスをしてわからせてくれないか」

 マクシミリアンの顔の横に手をついて、髪が彼にかからないように手で押さえながらキスをする。顔を離すと、マクシミリアンの吐いた息が唇を熱くした。無意識のうちに自分の唇を舌でなぞる。もうそこにはマクシミリアンの温もりは残っていなかった。

 ――「むりだ」と呟く声が聞こえたと思ったときには、腰を掴まれてベッドに転がされていた。
 添い寝をするときのように後ろから抱きすくめられる。しかしそういった意図でこの体勢にされたわけではないというのは、すぐにわかった。
 ナイトドレスをふくらはぎからなぞるようにまくり上げられ、下着がずり下ろされる。
 それから、熱いものが太腿の間に挟み入れられた。
 こわごわと下を見ようとすると、あごを掴まれて阻止される。

「最後まではしない。……治まりそうにないんだ」

 太腿の間にあるのは剥き出しの陰茎だ。思いのほかすべすべとした肌触りをしていて、体温よりも熱くて生々しい。

「レニャは見ないほうがいい。お兄様のはちょっと……人より大きいから」

 太腿の間にあるものは太くて、とても長いような気がした。
 思わず手を伸ばすと、丸くつるりとしたものに指が当たる。ビクン、と跳ねる感触が太腿に直接伝わってきた。そこだけが動くなんて、まるで別の生き物のようだ。

「……レニャ」

 陰茎なんて触ったことがない。好奇心に突き動かされてすりすりと撫でていると、窪んだ場所があることに気がつく。穴、のような。
 そのまま撫で続けていると、ぬるりとした感触が指先にまとわりついた。

「……レニャ、ストップ」

 息を荒くしたマクシミリアンに、手首を掴まれた。
 陰茎を撫で回すだなんて、とんでもなくはしたないことをしてしまったことに今さら羞恥を覚える。マクシミリアンの太腿に手をついて離れようとすると、腰を軽くおしりに打ちつけられた。
 太腿に挟まれた棹が、ぬるんっとすべって秘所を擦っていく。その潤滑剤の役割を果たしている液体が自分の身体の奥から溢れ出したものだというのを自覚した。マクシミリアンの陰茎の先端から滴ったのと、きっと同じ。気持ちよくなると溢れてくる。
 マクシミリアンが陰茎で秘所を擦るたびに、内腿がしとどに濡れていった。

「お兄様をレニャの太腿でかわいがってくれないか」

 太腿を閉じるように促され、意図してぎゅっと力を入れる。そうすると陰茎の存在をはっきりと感じてどきどきした。挿入していないだけで、ほとんど性行為と変わらないようなことをしてしまっている。二人を隔てるものは何もない。残っているのはほんの少しの理性だけ。
 マクシミリアンの両手が優しく撫でるように身体中を這う。胸を揉みしだかれ、硬くなった乳首をかりかりと指先でくすぐられた。胸を触られているのに下腹部に快感が集中していく。じんじんと疼く子宮をおなかの上から手のひらがさすっていき、陰核を、きゅ、とつままれた。

「……っあ、そこ、触ったら……気持ちよくなっちゃう」
「レニャも気持ちよくなってくれ」

 ぱちゅっ、ぱちゅっ、と湿った擦過音と肌を打つ音が響く。
 陰核をこりこりといじめられると腰が逃げるようにうねった。そうするとレニャからもおしりを押しつけることになってしまう。マクシミリアンが吐いた熱い息がうなじをくすぐる刺激にも背筋が震え、まるで全身が性感帯になってしまったかのようだった。
 ときどき先端がくぷりと中に沈みかける。すると背後で軋む音が鳴るほど歯を食いしばったマクシミリアンが腰を引き、角度を調節しては、また太腿の間をすり上げた。

「あっ、あぁっ……! 手、とめ、て……きちゃうッ」
「イって」
「んんっ、イく、イくっ、ひ、あ……!」

 下腹部に溜まっていた快感が一気に弾ける。びくんびくんと跳ねる身体を押さえつけ、マクシミリアンのものがひくつく秘裂を擦っていった。どっと溢れた愛液が棹にたっぷりと絡まって、さらに抽挿が激しくなる。
 マクシミリアンは自分の快楽を追うよりも、レニャが気持ちよくなっていることに興奮するようだ。もっとレニャを乱そうと、果てたばかりの敏感な陰核をにゅりにゅりと指の腹で撫でてくる。

「あ、あッ、待って、またイクッ」
「……はあ、かわいい」
「イッ――! ひう、ぁ、やあ……っ、うう、も、出してぇ」
「いいね、それ……最高に興奮する」

 脚をクロスするようにして陰茎を挟み込む。マクシミリアンの不埒な手を止めたくて、五指を絡めた。ずりゅんっ、と太腿を擦っていくものの熱さに驚いて思わず視線を下げると、自分の股の間から丸い先端を覗かせる赤黒いものが見えた。マクシミリアンが腰を引くと太腿の向こうに消えていって、腰を押しつけられるとまた顔を出す。
 愛液にまみれてぬらぬらと光るそれはひどくなまめかしい。こんなものが、マクシミリアンの美しい顔についていることが信じられなかった。後ろから突いているというのに、先端だけではなく棹まで見えることから、彼のものがとても長いのがわかる。
 ――挿入されたら、一体どこまで入ってしまうのだろう。

 以前マクシミリアンに指で中を弄られたとき、とてつもない快感だったことを思い出した。指でもあんなに気持ちよかったのだ、もっと長くて、もっと太いもので貫かれたら、どうなってしまうのだろうか。
 そんなことを想像して、子宮がきゅんきゅんと甘く痺れた。
 パンパンと肌を打つ音がするたびに、中を突かれているような気持ちにさせられる。くぷ、と先端が膣口にひっかかるたびに中がうねるのが自分でもわかった。
 身体がマクシミリアンを欲しがっている。

「お、にい、さまぁ……っ」
「うん? またイきそうか? ……っはあ、お兄様もそろそろ、っく」
「……ッ、あ、激し……!」
「ふ、レニャ……っ、出る」

 ずんずんと太腿の間を突いていたかと思うと、いきなり引き抜かれる。それからおしりに熱いものがかけられた。
 快感を与えてこようとするマクシミリアンの手の自由をレニャの意思で奪ったくせに、これで終わりだと思うとおなかの奥がひどく疼いた。
 ――もっと気持ちよくなりたい。
 欲望の前では、羞恥心も捨ててしまえた。
 抱き締めてくる腕の中から抜け出す。マクシミリアンをそっと押し倒すと、レニャは彼の腰の上に跨った。果てたばかりでまだ硬さを保っている陰茎の上にぺたりと座り込む。狼狽えているマクシミリアンの胸に手をついて、陰茎の裏側に陰核を擦りつけるように腰をスライドさせた。

「あッ、あ……! きもち、い」
「レ、レニャ……?」

 目をまんまるにして驚いているが、満更でもないはずだ。レニャには淫魔の囁きによってマクシミリアンの本音が見えている。『もう犯してしまってもいいんじゃないか?』と囁いているということは、彼はもっとしたいのを我慢しているに違いなかった。
 淫魔と悪魔が視界に入ると気が散るため、マクシミリアンの顔に集中する。
 眉を寄せて、奥歯をぐっと噛み締めた赤い顔。今までこんな顔で感じていたのだとわかると、胸がきゅうんと弾んだ。

「射精したばかりは……っやめてくれ」

 言葉とは裏腹に陰茎はすぐに硬くそそり勃つ。硬い陰茎に陰核をにゅるにゅると擦りつけるのは、腰が震えるほど気持ちが良かった。
 けれどおなかの奥が疼くのは満たされない。
 マクシミリアンの手を下腹部に誘導すると、心得たとばかりに子宮を外から揺さぶられる。
 レニャは一心不乱に陰核を擦りつけた。ビリビリと痺れるような快感が背筋を走り抜けていく。

「あー……っ、イ、っちゃう」
「またでる、……出るっ」
「あ、あ、いくっ、んん――っ」
「……っぐ、ぅ」

 マクシミリアンのものの先端から、びゅーっと精液が飛ぶ。彼の肌や服が白く汚れていくのがひどく卑猥な光景に見えた。
 絶頂に至った余韻で震えていたレニャは、やがてへなへなと崩れ落ちて胸板に倒れ込んだ。
 だんだんと冷静さを取り戻してくると、自分の行動が恥ずかしくてたまらなくなってくる。羞恥心は捨てていいものじゃない。

「……お兄様のすけべ」
「今の流れでどうしてお兄様が悪態を吐かれるんだ?」
「お兄様のせいでわたしがすけべになっちゃったからです……こんなこと、知らなかったのに」
「お兄様の前でならいくらでもすけべになってくれてかまわない」

 ちゅ、と甘やかすように口づけられても何の慰めにもならない。マクシミリアンがこんなふうに際限なく甘やかすから、ついついいろいろとさらけ出してしまうのだ。

「すごくかわいかった」

 絶対に、そんなことない。だらしない顔をしていただろうし、はしたなかった。声だって、自分のじゃないみたいで変だった。もう二度としない。レニャがそうこぼすと、マクシミリアンは「かわいいよ」とひたすらひとつひとつ訂正しながらキスをしてくる。
 あんなに恥ずかしかったのに、だんだんと、マクシミリアンがそう言うなら大丈夫だったのかも? という気持ちになってくるから不思議だ。

「レニャ、レニャ、かわいい」
「も、もういいですっ」
「なだめてるわけじゃない。お兄様がそう言いたいだけだ。恥ずかしがってるレニャも、すけべなレニャも、私で気持ちよくなってるレニャも、全部かわいい。あぁ……両の目で見たかった」
「……このくらい近づいたら、少しは見えますか?」

 左目を隠す前髪をさらりとよけて、顔をぐっと近づける。

「ぼやけていても、レニャがかわいいのはわかるよ」

 どうせなら、もっと早くに前世を思い出すことができていたならよかったのに。そうしたら、マクシミリアンがひどい目に遭うことも阻止できたかもしれない、なんて、後悔したってどうにもならないことを考えてしまう。
 できないことを嘆いても仕方がない。つらい過去を忘れられるくらい、これからマクシミリアンを幸せにしてあげればいいのだ。

 その前に、レニャにもケリをつけなければならないことがある。


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