解き放つ ~光と影のあいだで~

青空 蒼空

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 「柴田ありがとう 渉は全てをやり切った感じだったよ・・・ 
 俺には経験させてあげられなかった・・・
 柴田はいつも・・・本当にすごいな」

 清水は俺の隣に来て フェンスに手を掛け空を見上げる
 
 「はぁ? 何言ってんの?」
 俺のこと いつもすごいって・・・
 何言っているんだ? こいつ?

 「周りに流されずに 自分軸をしっかり持っているだろ? 
 渉が柴田のこと かっこいいって言っていた気持ちがわかるよ」

 空を見上げたまま静かに話す
 
 爽やかな そよ風が 清水の少し長めの前髪を揺らす
 男から見ても その かっこいい姿が癪に障る
 
 「何言ってんの? お前の方がすごいだろ 
 何でもできて 周りからの信頼も厚いし 
 欠点なんてないじゃないか」
 
 「へー 柴田は俺のこと そんな風に思っているんだ」
 俺にチラッと視線を向ける
 
 何 嬉しそうな顔しているんだ!
 ムカついて清水を睨む

 「心配するなよ 俺の事 嫌いなのは分かっているから」
 涼しい笑顔で視線を空に戻して 清水は言う

 この余裕なところが また腹が立つ
 
 「それは どうも」
 つっけんどんに 俺は答える
 
 「俺は 周りの目ばかり気にして生きているから 
 自分の意志をしっかり貫く 柴田に憧れるよ」
 「はぁ? 何 言ってんの? 嫌味か? 周りはみんな お前の味方だろ!」
 
 「みんな ただ流されているだけさ だから信用してない」
 「お前! それ みんな聞いたら泣くぜ」
 
 「だって そんなもんだろ 
 今は俺に追い風が吹いているから味方になっているけど 
 一度崩れたら すぐ そっぽを向くさ」

 まぁ確かに・・・
 その考えは 一理あるけど・・・

 「清水って 意外に冷めてんだな」
 「その点 柴田はブレることがない そうだろ? しかも熱い」
 「お前が 涼しすぎんだよ!」

 清水は俺のこと そんな風に思っていたのか・・・少し気分がいい
 と思っていると フェンスから手を離し 俺がいる方向に体ごと向ける

 「だけど そんな柴田でも 死にたいと思うんだな」
 
 マジマジと俺の顔を凝視する

 「はぁ⁉ おまえ! 手紙読んだの⁉ 勝手に⁉」
 「封もしてないのに 普通 読むでしょ」
 「読まねえよ!」

 「柴田は神経質だな」
 と清水が笑う

 「何言ってやがる!!」
 なんだよ こいつ! やっぱりムカつく!

 「まぁ そんなに怒るなって」

 爽やかに笑いながら 清水が答える
 どこまでもムカつく!
 
 「渉の両親が 柴田にお世話になったからお礼を言いたいってさ 
 だから 今から渉に会いに行こう」

 俺は ため息を吐いて頷いた
 清水のいうことを聞くのは嫌だが 渉とは最後のお別れをしたい

 俺と清水は 渉が眠る葬儀場へと向かうべく足を運ぶ

 「家族みんな 驚いているんだ」
 真っ直ぐ前を向き 歩きながら たんたんと清水が俺に話しかける

 「何が?」
 ぶっきらぼうに俺は答える

 「渉が 手紙を残したこと」
 「何で?」
 
 「俺には 少し打ち解けていたけど 
 あいつは そういうタイプじゃないからさ 
 何も話さないし 自分の思いを言わない 
 だから手紙を読んで はじめて みんな渉の気持ちを理解したんだ」
 
 「うそだろ? よく喋ってたぜ」
 「それは 柴田だからだよ」

 清水は 寂しそうに語る

 信じられない あの渉が・・・ 
 人には 色んな顔があるんだな・・・

 ん⁉ ちょっと待て?
 手紙を読んで?
 みんな・・・⁉

 俺は その場に立ち止まる

 「どうした?」
 清水は 数歩 歩いて 俺を見るために振り返る

 「手紙って?」
 「家族みんな 柴田宛の手紙 読んで涙していたよ」
 
 と清水は 何事もなく 当たり前のように答える

 マジか‼

 「だから 渉の字が 所々滲んでいたのかよ! 
 てっきり渉が 泣きながら書いたのかと思っていたのに!」
 
 「あー あいつは サッパリしたもんだったぜ 
 思い残すことないってね」

 清水は へらへら笑い 自分の涙も付いていると ぬかしやがる! 
 ムカつく!

 「なんで! 俺宛の手紙を読むのが 俺が最後なんだよ! 
 お前ら親族は 常識ってもんがないのか⁉」
 
 俺は 沸々と怒りが湧く

 「柴田は 神経質だな・・・・・・やべっ!」
 
 さすがにまずいと思ったのか 清水は走り出し 非常階段へと続く扉を抜ける

 「待てよ!!」

 俺は 清水を追いかけた
 あいつは サッカー部のエースだ
 足が速い
 
 病院の非常階段を ドンドン駆け降りる
 俺は追いかけるが 追いつくどころか ドンドン離される

 2人の駆け降りる音が 響き渡る
 病院関係者に見つかったら 説教もんだな

 息が切れる・・・ 
 畜生!

 階段を下りながら いろんなことが頭をよぎる

 もう いいや!
 
 ダメな今の自分を受け入れよ
 意地を張るのが馬鹿らしくなってきた
 
 そして 一から やり直そう・・・
 
 大学も考えようか 
 今からでも遅くない
 人に何かを教える職業も悪くないな
 
 チョット運動もしなきゃな
 たまには 母校の中学で サッカー部の後輩に教えに行くか

 俺の心の霧が晴れていく
 だんだんやる気が湧いてきた

 やっと1階に着いた!
 全身汗だくだ
 
 しかし 帰宅部の俺が全速力で転ばずに ここまで来たのは上出来だ!

 呼吸が乱れまくりの俺は それでも 非常扉を勢いよく・・・ 

 解き放つ!!
 
 外の日差しの眩しさに 一瞬 目を閉じる
 そっと目を開けると 清水が呼吸一つ乱れずに暇そうに待っていた
 
 ほんっとに どこまでも癪に障る

 『俺は 周りの目ばかり気にして生きているから』

 ふと 屋上での清水の言葉を思い出す
 こいつも 色々思うことが あるんだな
 しかし 天下の清水の言う台詞か?

 そう思いあいつを見ると 俺は 何故だか無性に笑いが込み上げてきた
 清水は怪訝な顔をしたが 俺の笑いは止まらない

 「大丈夫か?」と清水は戸惑っていたが それでも俺は笑い続ける 
 すると 俺につられて清水も笑い出した

 2人で暫く笑い転げた

 なぁ 渉!
 渉が やりたかったことって・・・
 
 これだよな!


fin
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